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そして、謝るべきだった。
約束を守れなかったこと。
そして、それと同時にテニスを失って、仙道への想いをあきらめてしまったこと。
きちんと話して、謝って、非難されるのであればそれもしっかり受け止めて、仙道にも区切りをつけさせてあげるべきだった。
そうしていれば、こんなに長い間仙道の気持ちを縛り付けて苦しめることなんてなかったのに。
伊織の信長の肩を掴む手に自然と力が入る。
「今度は逃げない。ちゃんと彰さんと向き合って、彰さんがちゃんと前に進めるようにしてあげなきゃ。それが、あの時彰さんを放りだしてひとりで逃げ出したわたしにできる、たったひとつのことだから」
包み込むような愛情で、振り返ればいつだってそこにいてくれた仙道。
もうその気持ちに応えることは出来ないけれど、ならばせめてそれに決着をつけさせてあげることが、伊織が仙道にできる最後のことだと思った。
仙道を思って胸が焦がれるように熱くなることも、不安に駆られて眠れぬ夜を過ごすことももうないけれど、それでも仙道を大切だと思う気持ちに変わりはなかった。
「仙道が大切なんだな」
「……うん。大切。彰さんはいつだってわたしのスーパーヒーローだったの。どんなときでもわたしのこと優しく見守ってくれてて、勇気をくれて。そんな彰さんが大好きだった。だからもう解放してあげなくちゃ。次はその愛情を新しい女の子に注いでもらわなくちゃ。それができるのはわたししかいないもの」
「なるほどな」
でもよ、と信長が続けた。
「お前のセンドーに対する気持ちはわかった。だけどその間に、神さんが心変わりしちゃったらどうするんだ?」
「う……っ。そ、れは、もちろん宗先輩の気持ちを優先します」
「お前はあきらめんのか?」
「だって、わたしが決めたことだから」
人の気持ちは不変じゃない。
自分の仙道への気持ちに終わりが来てしまったように、宗一郎の自分への気持ちに終わりが来てしまったとしても、それは仕方のないことだった。
もちろん受け入れるのは容易いことではないけれど、それでも今の状態を選んだのは伊織自身だ。
待つと言ってくれたことだけでも奇跡なのに、心変わりをしたからって責めることができようはずもなかった。
「まあ、もしそうなったらオレが伊織のこともらってやるよ」
「えー、ノブが?」
「そ。まあ、悪くないだろ? オレとお前」
「なに言ってんのよ、自分はまりあちゃんのことが好きなくせして」
「――はは。まあ、そうだよな」
「そうそう。……でも、ありがとね、ノブ」
伊織は風に煽られている親友の頭を見つめて言った。
いつだって一歩引いた場所から伊織を見守ってくれる信長の存在に、今までどれほど助けられたか知れない。
「ノブの恋がうまくいくように、わたしも協力するから」
「……おう」
信長が小さく鼻を啜った音は、風にかき消されて伊織の耳に届くことはなかった。
「それにしても、問題はそのまりあちゃんなのよね」
海南大附属高校。その駐輪場で自転車を止めている信長の姿を眺めながら、伊織があごに手を添えて呟いた。
その声に、信長が振り返る。
「ああ、そうだよな。……お前、まだまりあちゃんに何も話せてないんだろ?」
「うん……」
約束を守れなかったこと。
そして、それと同時にテニスを失って、仙道への想いをあきらめてしまったこと。
きちんと話して、謝って、非難されるのであればそれもしっかり受け止めて、仙道にも区切りをつけさせてあげるべきだった。
そうしていれば、こんなに長い間仙道の気持ちを縛り付けて苦しめることなんてなかったのに。
伊織の信長の肩を掴む手に自然と力が入る。
「今度は逃げない。ちゃんと彰さんと向き合って、彰さんがちゃんと前に進めるようにしてあげなきゃ。それが、あの時彰さんを放りだしてひとりで逃げ出したわたしにできる、たったひとつのことだから」
包み込むような愛情で、振り返ればいつだってそこにいてくれた仙道。
もうその気持ちに応えることは出来ないけれど、ならばせめてそれに決着をつけさせてあげることが、伊織が仙道にできる最後のことだと思った。
仙道を思って胸が焦がれるように熱くなることも、不安に駆られて眠れぬ夜を過ごすことももうないけれど、それでも仙道を大切だと思う気持ちに変わりはなかった。
「仙道が大切なんだな」
「……うん。大切。彰さんはいつだってわたしのスーパーヒーローだったの。どんなときでもわたしのこと優しく見守ってくれてて、勇気をくれて。そんな彰さんが大好きだった。だからもう解放してあげなくちゃ。次はその愛情を新しい女の子に注いでもらわなくちゃ。それができるのはわたししかいないもの」
「なるほどな」
でもよ、と信長が続けた。
「お前のセンドーに対する気持ちはわかった。だけどその間に、神さんが心変わりしちゃったらどうするんだ?」
「う……っ。そ、れは、もちろん宗先輩の気持ちを優先します」
「お前はあきらめんのか?」
「だって、わたしが決めたことだから」
人の気持ちは不変じゃない。
自分の仙道への気持ちに終わりが来てしまったように、宗一郎の自分への気持ちに終わりが来てしまったとしても、それは仕方のないことだった。
もちろん受け入れるのは容易いことではないけれど、それでも今の状態を選んだのは伊織自身だ。
待つと言ってくれたことだけでも奇跡なのに、心変わりをしたからって責めることができようはずもなかった。
「まあ、もしそうなったらオレが伊織のこともらってやるよ」
「えー、ノブが?」
「そ。まあ、悪くないだろ? オレとお前」
「なに言ってんのよ、自分はまりあちゃんのことが好きなくせして」
「――はは。まあ、そうだよな」
「そうそう。……でも、ありがとね、ノブ」
伊織は風に煽られている親友の頭を見つめて言った。
いつだって一歩引いた場所から伊織を見守ってくれる信長の存在に、今までどれほど助けられたか知れない。
「ノブの恋がうまくいくように、わたしも協力するから」
「……おう」
信長が小さく鼻を啜った音は、風にかき消されて伊織の耳に届くことはなかった。
「それにしても、問題はそのまりあちゃんなのよね」
海南大附属高校。その駐輪場で自転車を止めている信長の姿を眺めながら、伊織があごに手を添えて呟いた。
その声に、信長が振り返る。
「ああ、そうだよな。……お前、まだまりあちゃんに何も話せてないんだろ?」
「うん……」