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夢小説設定
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信長が首をめぐらせて怪訝そうにこちらを一度見た。
伊織はその視線から逃げるようにそっぽを向く。
「だって、彰さんのことがまだだし、宗先輩それが終わるまで返事は待ってくれるって……」
「はあ!? じゃあお前、まだ好きとも言ってないのか?」
「……そう」
信長の背中から呆れたようなため息が漏れる。
「ばっかじゃねえ!? お前、付き合ってもいないセンドーに義理立てしてどうすんだよ。お前は知らないかもしんねーけど、神さんかなり女子から人気あるんだぜ!? オレなんか神さんと仲いいからって何度女子にラブレター渡すよう頼まれたことか……」
「え、そうなの!?」
伊織は目を丸くした。
宗一郎が人気があるのは当然知っていたが、信長がラブレターの橋渡しを頼まれていたことは知らなかった。
驚きとともに、胸にもやもやとした嫌な感情が生まれていく。
「え、そのラブレターって……」
「もちろん渡してるよ。捨てるわけにはいかねーだろ!? まあ、神さんも困った顔で受け取ってるけどな」
「そっか……」
黒い嫌な感情が、密閉したはずの袋の中に少しずつ水が染み入ってくるみたいに、伊織の内側にじわじわと広がっていく。
わがままだけど、そんな権利なんてないのはわかってるけど、それでも宗一郎にそんなもの受け取って欲しくなかった。
(だけど、その子たちが宗先輩に向ける想いも、わたしと同じなわけで……)
伊織は肺の底から深く息を吐き出した。
恋愛は複雑だ。
想う者と想われる者。
結ばれるのがたった一組じゃなくて、あらかじめ決まった相手にしか恋をしないようなメカニズムになっていれば、誰も泣くことなんてなかったのに。
そう思うと、なんだか中途半端な対応をしてる自分が一番の悪者に思えてきた。
伊織の気分が暗く落ち込む。
「そんな顔するなら、神さんに今からでも返事すりゃあいいじゃん。もともと待つって言ってくれてんなら問題ないだろ?」
信長のその言葉に伊織は弾かれたように面を上げた。
脳裏にひらめく仙道の優しい笑顔。
「そんなことできないよ! あの時わたしが彰さんを置き去りにしてしまって、それからずっと彰さんはひとりで苦しんでたのに、また同じ思いをさせろっていうの!? できない、そんなこと。彰さんの中ではまだ終わってなかったのに、それに気付いていながら、それでもわたしだけが新しく踏み出すことなんてできない」
「終わってないのはセンドーだけの問題だろ? お前は関係ねーじゃん」
「そんなことないよ。約束を果たせなかったわたしは、自分のことだから踏ん切りがつくよ? あきらめがつくよ? でも彰さんは?」
伊織の眉間にしわが刻まれていく。
どんな気持ちだったろう。
仙道はしっかりと伊織との約束を果たして、高校一年生にしながら雑誌に載るほどの活躍をしてくれていた。
いつか伊織と会えることを信じて、ひたむきに頑張ってくれていた。
それなのに、伊織本人は約束を果たすことができず、あげくそのまま仙道の前から逃げるように姿を消してしまった。
謝ることさえしなかった。
たとえ伊織が約束を果たせなかったとしても、仙道なら受け入れてくれると、伊織は本当は心の奥底で気付いていたのに。
置いてきぼりにされた仙道の気持ち。反故にされた約束。
仙道が伊織をどれだけ大切に想ってくれているのか、痛いほどに知っていたのに。
「一方的に雑誌で事実だけを知って真実を突きつけられて、ハイそれで終わりさようならなんて言われても、普通なら納得なんてできるわけない。三連覇の約束もあったけど、それが叶わなかったからって彰さんの気持ちが消えてなくなるわけじゃなかったのに……」
今ならそれがわかる。
ケガをしたあのとき、伊織は仙道に会いに行くべきだったのだ。
伊織はその視線から逃げるようにそっぽを向く。
「だって、彰さんのことがまだだし、宗先輩それが終わるまで返事は待ってくれるって……」
「はあ!? じゃあお前、まだ好きとも言ってないのか?」
「……そう」
信長の背中から呆れたようなため息が漏れる。
「ばっかじゃねえ!? お前、付き合ってもいないセンドーに義理立てしてどうすんだよ。お前は知らないかもしんねーけど、神さんかなり女子から人気あるんだぜ!? オレなんか神さんと仲いいからって何度女子にラブレター渡すよう頼まれたことか……」
「え、そうなの!?」
伊織は目を丸くした。
宗一郎が人気があるのは当然知っていたが、信長がラブレターの橋渡しを頼まれていたことは知らなかった。
驚きとともに、胸にもやもやとした嫌な感情が生まれていく。
「え、そのラブレターって……」
「もちろん渡してるよ。捨てるわけにはいかねーだろ!? まあ、神さんも困った顔で受け取ってるけどな」
「そっか……」
黒い嫌な感情が、密閉したはずの袋の中に少しずつ水が染み入ってくるみたいに、伊織の内側にじわじわと広がっていく。
わがままだけど、そんな権利なんてないのはわかってるけど、それでも宗一郎にそんなもの受け取って欲しくなかった。
(だけど、その子たちが宗先輩に向ける想いも、わたしと同じなわけで……)
伊織は肺の底から深く息を吐き出した。
恋愛は複雑だ。
想う者と想われる者。
結ばれるのがたった一組じゃなくて、あらかじめ決まった相手にしか恋をしないようなメカニズムになっていれば、誰も泣くことなんてなかったのに。
そう思うと、なんだか中途半端な対応をしてる自分が一番の悪者に思えてきた。
伊織の気分が暗く落ち込む。
「そんな顔するなら、神さんに今からでも返事すりゃあいいじゃん。もともと待つって言ってくれてんなら問題ないだろ?」
信長のその言葉に伊織は弾かれたように面を上げた。
脳裏にひらめく仙道の優しい笑顔。
「そんなことできないよ! あの時わたしが彰さんを置き去りにしてしまって、それからずっと彰さんはひとりで苦しんでたのに、また同じ思いをさせろっていうの!? できない、そんなこと。彰さんの中ではまだ終わってなかったのに、それに気付いていながら、それでもわたしだけが新しく踏み出すことなんてできない」
「終わってないのはセンドーだけの問題だろ? お前は関係ねーじゃん」
「そんなことないよ。約束を果たせなかったわたしは、自分のことだから踏ん切りがつくよ? あきらめがつくよ? でも彰さんは?」
伊織の眉間にしわが刻まれていく。
どんな気持ちだったろう。
仙道はしっかりと伊織との約束を果たして、高校一年生にしながら雑誌に載るほどの活躍をしてくれていた。
いつか伊織と会えることを信じて、ひたむきに頑張ってくれていた。
それなのに、伊織本人は約束を果たすことができず、あげくそのまま仙道の前から逃げるように姿を消してしまった。
謝ることさえしなかった。
たとえ伊織が約束を果たせなかったとしても、仙道なら受け入れてくれると、伊織は本当は心の奥底で気付いていたのに。
置いてきぼりにされた仙道の気持ち。反故にされた約束。
仙道が伊織をどれだけ大切に想ってくれているのか、痛いほどに知っていたのに。
「一方的に雑誌で事実だけを知って真実を突きつけられて、ハイそれで終わりさようならなんて言われても、普通なら納得なんてできるわけない。三連覇の約束もあったけど、それが叶わなかったからって彰さんの気持ちが消えてなくなるわけじゃなかったのに……」
今ならそれがわかる。
ケガをしたあのとき、伊織は仙道に会いに行くべきだったのだ。