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夢小説設定
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額が重なり合ったまま、伊織は小さく首を振る。
「そんな、だって……泣くなんてできない。わたしが原因なのに。みんな、わたしのせいで傷ついて……」
「違う、伊織ちゃん。伊織ちゃんだって傷ついてる。伊織ちゃんだって泣いていいんだよ」
その言葉に、伊織はハッと目を見開いた。
泣いていい? わたしが? わたしのせいなのに……?
「でも、だって……」
「事故だよ、伊織ちゃん。どうして、それなのに伊織ちゃんがこんな風に苦しまなければいけない? その不幸な事故の全てを自分のせいだって抱え込んで。……こんな小さな体で、こんな傷ついた心で、だれよりも苦しいのは伊織ちゃんなのに」
「ち、違う……。だって、だって……」
伊織の体は宗一郎に抱きすくめられた。
その今までとは違う折れてしまいそうなほどの強い力に、伊織は苦しくて身じろぎする。
それでも宗一郎は腕をゆるめずに、伊織の肩口に頭を寄せて、伊織に必死に伝えようと言葉を続ける。
「伊織ちゃん、泣いていいんだよ。みんなと一緒に泣いていいんだ。伊織ちゃんは悪くない。なにも悪くないんだよ。ケガして悔しいって泣いて、コーチと夢を果たせない苦しみを分かち合って泣いて、不当な言いがかりに泣いて、家族を非難される苦しみに泣いていいんだ」
「そんな……。だって……」
だってそんなこと許されない。
みんなと一緒にだなんて。
原因のわたしが、みんなのまえでのうのうと泣いて苦しむだなんて。
そんなこと。
許されてはならないのに……!
宗一郎の腕の力が少し弱まった。
荒々しかった力が、優しく包み込むものに変わる。
「俺がいるよ、伊織ちゃん」
「!」
「伊織ちゃん、俺がいるよ。みんなの前で泣けないなら、俺がいる。俺の前で泣いていいよ」
宗一郎の言葉が、伊織の心にじんわりと染み渡っていく。
ぎゅっと伊織は宗一郎の服の裾を掴んだ。
その胸にすがりつく。
「宗先輩……!」
「大丈夫……大丈夫だから。伊織ちゃんのせいなんかじゃない。だから、伊織ちゃん。そんなに自分を責めないで。伊織ちゃんは何も悪くないんだ。あれは事故だったんだ。だから、そんなに自分を追い詰めないで。もう自分を許してあげて。俺が、伊織ちゃんを守るから」
「!!」
その言葉に伊織は瞠目した。
張り詰めていた感情の糸が切れたように瞳から涙が溢れる。
そうだ。
伊織は自分を許せなかった。
すべてを台無しにした自分を許せなかった。
だけど。
本当は、苦しかった。
許されたかった。
かわいそうにって優しく手を差し伸べてもらって、頭を撫でてもらって、誰かの胸に甘えて泣き叫びたかった。
失ったもの、果たせなかった約束、家族の受けた苦しみ。
そのすべてを嘆いて、涙が枯れ果てるまで泣き叫びたかった。
(許される……。許してくれる……)
宗一郎の腕の中でならわたしは許される。
宗一郎が守ってくれる。
泣いてもいい。
この涙で、だれも苦しめることはない。
「う、うわぁあああぁあ!」
「伊織ちゃん……!」
「そんな、だって……泣くなんてできない。わたしが原因なのに。みんな、わたしのせいで傷ついて……」
「違う、伊織ちゃん。伊織ちゃんだって傷ついてる。伊織ちゃんだって泣いていいんだよ」
その言葉に、伊織はハッと目を見開いた。
泣いていい? わたしが? わたしのせいなのに……?
「でも、だって……」
「事故だよ、伊織ちゃん。どうして、それなのに伊織ちゃんがこんな風に苦しまなければいけない? その不幸な事故の全てを自分のせいだって抱え込んで。……こんな小さな体で、こんな傷ついた心で、だれよりも苦しいのは伊織ちゃんなのに」
「ち、違う……。だって、だって……」
伊織の体は宗一郎に抱きすくめられた。
その今までとは違う折れてしまいそうなほどの強い力に、伊織は苦しくて身じろぎする。
それでも宗一郎は腕をゆるめずに、伊織の肩口に頭を寄せて、伊織に必死に伝えようと言葉を続ける。
「伊織ちゃん、泣いていいんだよ。みんなと一緒に泣いていいんだ。伊織ちゃんは悪くない。なにも悪くないんだよ。ケガして悔しいって泣いて、コーチと夢を果たせない苦しみを分かち合って泣いて、不当な言いがかりに泣いて、家族を非難される苦しみに泣いていいんだ」
「そんな……。だって……」
だってそんなこと許されない。
みんなと一緒にだなんて。
原因のわたしが、みんなのまえでのうのうと泣いて苦しむだなんて。
そんなこと。
許されてはならないのに……!
宗一郎の腕の力が少し弱まった。
荒々しかった力が、優しく包み込むものに変わる。
「俺がいるよ、伊織ちゃん」
「!」
「伊織ちゃん、俺がいるよ。みんなの前で泣けないなら、俺がいる。俺の前で泣いていいよ」
宗一郎の言葉が、伊織の心にじんわりと染み渡っていく。
ぎゅっと伊織は宗一郎の服の裾を掴んだ。
その胸にすがりつく。
「宗先輩……!」
「大丈夫……大丈夫だから。伊織ちゃんのせいなんかじゃない。だから、伊織ちゃん。そんなに自分を責めないで。伊織ちゃんは何も悪くないんだ。あれは事故だったんだ。だから、そんなに自分を追い詰めないで。もう自分を許してあげて。俺が、伊織ちゃんを守るから」
「!!」
その言葉に伊織は瞠目した。
張り詰めていた感情の糸が切れたように瞳から涙が溢れる。
そうだ。
伊織は自分を許せなかった。
すべてを台無しにした自分を許せなかった。
だけど。
本当は、苦しかった。
許されたかった。
かわいそうにって優しく手を差し伸べてもらって、頭を撫でてもらって、誰かの胸に甘えて泣き叫びたかった。
失ったもの、果たせなかった約束、家族の受けた苦しみ。
そのすべてを嘆いて、涙が枯れ果てるまで泣き叫びたかった。
(許される……。許してくれる……)
宗一郎の腕の中でならわたしは許される。
宗一郎が守ってくれる。
泣いてもいい。
この涙で、だれも苦しめることはない。
「う、うわぁあああぁあ!」
「伊織ちゃん……!」