15
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
生気の感じられないその姿。
いつも元気で明るい伊織からは全く想像することができない姿だった。
胸が潰れそうだ。
見ていられなくて思わず目を逸らしかけた自分を、宗一郎は心の中で強く叱咤した。
(ダメだ。目を逸らしてはいけない。これが、伊織ちゃんの苦しみ……)
宗一郎はきつくこぶしを握り締めると、布団の上に置かれた伊織の手にそっと自身のそれを伸ばした。
ひんやりと冷たい伊織の手。
それを優しく包み込んで、呼びかける。
「伊織ちゃん……」
ゆっくりと、伊織が振り向く。
宗一郎は伊織の手を握る力を少しだけ強くして、もう一度呼びかける。
「伊織ちゃん」
伊織の虚ろな瞳が、宗一郎を捉えた。
その瞬間わずかに揺らめく伊織の瞳。
「伊織ちゃん、わかる? 神宗一郎だよ」
「じ……ん……?」
伊織の固く閉じられていた唇から、掠れた囁きがもれた。
しばらく自分の発した音を咀嚼するように黙り込んで。
それから伊織の瞳が徐々に見開かれていった。
その瞳にだんだんと光が宿っていく。
「そ……う、せん……ぱい?」
「うん……! そうだよ、伊織ちゃん」
自分の手の中にある伊織の小さな手。
返事を返しながら、宗一郎はそれをぎゅっと握りこむ。
その途端に、伊織の体がハッと揺らいだのがわかった。
いつもの伊織の瞳が宗一郎を見てくる。
「そ、宗先輩!」
叫んで自分の胸に飛び込んでくる伊織を、宗一郎は力強く受け止めた。
ドアの外。
二人の様子を探っていた月と信長は、伊織の声を聞いて顔を見合わせた。
二人の表情が喜びに溢れる。
「月……!」
「清田先輩!」
二人はドアの前でひしっと抱き合った。
ちょうどそのとき、伊織の部屋の隣りのドアが勢いよく開いた。
中で塞ぎこんでいた星が、もつれるようにして外へ転がり出てくる。
驚きで顔中をいっぱいにした星は、伊織の部屋の前にいる月と信長を目にして、震える声で言った。
「い、いま、ねーちゃんの声が……!」
「ああ! 神さんが来てくれて……!」
言いながら駆け寄る月。
呆然と目を見開く星を抱きしめる。
「星! もう大丈夫だ。姉ちゃん、もう大丈夫だよ、星!」
「……月!」
うわあああんと、星が声をあげて泣き出した。
そんな星を、ガキか! といって殴りとばしている月の目尻にも、じんわり涙が浮かんでいる。
信長はそんな二人を見て、自身も涙を滲ませながら笑った。
よかった。
ほんとうによかった。
いつも元気で明るい伊織からは全く想像することができない姿だった。
胸が潰れそうだ。
見ていられなくて思わず目を逸らしかけた自分を、宗一郎は心の中で強く叱咤した。
(ダメだ。目を逸らしてはいけない。これが、伊織ちゃんの苦しみ……)
宗一郎はきつくこぶしを握り締めると、布団の上に置かれた伊織の手にそっと自身のそれを伸ばした。
ひんやりと冷たい伊織の手。
それを優しく包み込んで、呼びかける。
「伊織ちゃん……」
ゆっくりと、伊織が振り向く。
宗一郎は伊織の手を握る力を少しだけ強くして、もう一度呼びかける。
「伊織ちゃん」
伊織の虚ろな瞳が、宗一郎を捉えた。
その瞬間わずかに揺らめく伊織の瞳。
「伊織ちゃん、わかる? 神宗一郎だよ」
「じ……ん……?」
伊織の固く閉じられていた唇から、掠れた囁きがもれた。
しばらく自分の発した音を咀嚼するように黙り込んで。
それから伊織の瞳が徐々に見開かれていった。
その瞳にだんだんと光が宿っていく。
「そ……う、せん……ぱい?」
「うん……! そうだよ、伊織ちゃん」
自分の手の中にある伊織の小さな手。
返事を返しながら、宗一郎はそれをぎゅっと握りこむ。
その途端に、伊織の体がハッと揺らいだのがわかった。
いつもの伊織の瞳が宗一郎を見てくる。
「そ、宗先輩!」
叫んで自分の胸に飛び込んでくる伊織を、宗一郎は力強く受け止めた。
ドアの外。
二人の様子を探っていた月と信長は、伊織の声を聞いて顔を見合わせた。
二人の表情が喜びに溢れる。
「月……!」
「清田先輩!」
二人はドアの前でひしっと抱き合った。
ちょうどそのとき、伊織の部屋の隣りのドアが勢いよく開いた。
中で塞ぎこんでいた星が、もつれるようにして外へ転がり出てくる。
驚きで顔中をいっぱいにした星は、伊織の部屋の前にいる月と信長を目にして、震える声で言った。
「い、いま、ねーちゃんの声が……!」
「ああ! 神さんが来てくれて……!」
言いながら駆け寄る月。
呆然と目を見開く星を抱きしめる。
「星! もう大丈夫だ。姉ちゃん、もう大丈夫だよ、星!」
「……月!」
うわあああんと、星が声をあげて泣き出した。
そんな星を、ガキか! といって殴りとばしている月の目尻にも、じんわり涙が浮かんでいる。
信長はそんな二人を見て、自身も涙を滲ませながら笑った。
よかった。
ほんとうによかった。