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鈴村家のリビングで月は絶望的な気分で頭を抱えていた。
伊織があんなことになってから、もう五日も経過している。
いや、まだ五日というべきなのか。
あの日から一日一日が長く感じてしまって、日付の感覚がわからなくなってしまった。
こちらが静かにしてくれと頼み込んでもうるさかった星も、あの日以来ひとが変わったように沈みこんでいる。
笑顔の溢れていた鈴村家は、まるで闇に包まれたようにひっそりとして静かになってしまった。
つくづく、この家は伊織を中心にまわっていたのだと思い知る。
いつも他人のことばかり優先して、自分たちの幸せを心から願ってくれる伊織。
みんながそんな伊織のことが大好きで、その幸せをこそ望んでいるのに……。
月は黙って一階の天井を見上げた。
その上には、伊織の部屋がある。
今は中に信長がいた。
「…………」
月は小さく嘆息する。
あれからバスケ部はかわるがわる伊織の様子を見に来てくれていた。
中でも信長と仙道は、毎日毎日伊織の元を訪れてくれている。
(だけど違うんだ……)
月は苦しげに眉根を寄せる。
(今、ほんとうに必要なのは……)
思って月はきつく目をつぶった。
いつだってそうだった。
伊織にとって本当に必要な人は、いつだって肝心なときには姿を見せてはくれなかった。
半年前は仙道だった。
あのとき伊織に必要なのは仙道だった。
でも仙道は、家の前までは来るくせにそのドアを開けて中に入ろうとは決してしなかった。
そして今度は宗一郎だ。
今の伊織に必要なのは宗一郎なのに、その宗一郎もやはりあれ以来姿を見せてはくれなかった。
どうして。
多分伊織は宗一郎の前でないと泣けない。
あのまま心を閉ざしているだけでは、いつかほんとうに伊織は壊れてしまうのに……。
(どうして……どうして来てくれないんです、神先輩!)
伊織を頼むって言った自分に笑顔で答えてくれたのに。
やるせない気持ちをぶつけるように、月はテーブルを叩いた。
そのとき、ふと窓の外が視界に飛び込んできた。
月は弾かれたようにそちらを振り向き、その奥に目を凝らした。
「……!」
そこには宗一郎の姿があった。
「神先輩!」
宗一郎が伊織の家の前に自転車をとめ、チャイムを押そうとそれに指を伸ばしたとき、突然玄関から転がり出るようにして月が飛び出てきた。
「月くん?」
宗一郎は驚いて月を見つめた。
月も宗一郎の姿を大きく見開いた目でしばらく見つめ返すと、ホッとしたように表情をほころばせた。
「よかった……。来てくれたんですね」
「……遅くなってごめん」
「ほんとですよ」
月が目尻の涙を拭いながら微笑む。
伊織があんなことになってから、もう五日も経過している。
いや、まだ五日というべきなのか。
あの日から一日一日が長く感じてしまって、日付の感覚がわからなくなってしまった。
こちらが静かにしてくれと頼み込んでもうるさかった星も、あの日以来ひとが変わったように沈みこんでいる。
笑顔の溢れていた鈴村家は、まるで闇に包まれたようにひっそりとして静かになってしまった。
つくづく、この家は伊織を中心にまわっていたのだと思い知る。
いつも他人のことばかり優先して、自分たちの幸せを心から願ってくれる伊織。
みんながそんな伊織のことが大好きで、その幸せをこそ望んでいるのに……。
月は黙って一階の天井を見上げた。
その上には、伊織の部屋がある。
今は中に信長がいた。
「…………」
月は小さく嘆息する。
あれからバスケ部はかわるがわる伊織の様子を見に来てくれていた。
中でも信長と仙道は、毎日毎日伊織の元を訪れてくれている。
(だけど違うんだ……)
月は苦しげに眉根を寄せる。
(今、ほんとうに必要なのは……)
思って月はきつく目をつぶった。
いつだってそうだった。
伊織にとって本当に必要な人は、いつだって肝心なときには姿を見せてはくれなかった。
半年前は仙道だった。
あのとき伊織に必要なのは仙道だった。
でも仙道は、家の前までは来るくせにそのドアを開けて中に入ろうとは決してしなかった。
そして今度は宗一郎だ。
今の伊織に必要なのは宗一郎なのに、その宗一郎もやはりあれ以来姿を見せてはくれなかった。
どうして。
多分伊織は宗一郎の前でないと泣けない。
あのまま心を閉ざしているだけでは、いつかほんとうに伊織は壊れてしまうのに……。
(どうして……どうして来てくれないんです、神先輩!)
伊織を頼むって言った自分に笑顔で答えてくれたのに。
やるせない気持ちをぶつけるように、月はテーブルを叩いた。
そのとき、ふと窓の外が視界に飛び込んできた。
月は弾かれたようにそちらを振り向き、その奥に目を凝らした。
「……!」
そこには宗一郎の姿があった。
「神先輩!」
宗一郎が伊織の家の前に自転車をとめ、チャイムを押そうとそれに指を伸ばしたとき、突然玄関から転がり出るようにして月が飛び出てきた。
「月くん?」
宗一郎は驚いて月を見つめた。
月も宗一郎の姿を大きく見開いた目でしばらく見つめ返すと、ホッとしたように表情をほころばせた。
「よかった……。来てくれたんですね」
「……遅くなってごめん」
「ほんとですよ」
月が目尻の涙を拭いながら微笑む。