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夢小説設定
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答えながら宗一郎は考えた。
今日ということは、自分と別れてすぐか。
……信長はなにを言いに陵南まで行ったんだろう。
「なあ、神。ノブナガくんに聞いたんだけど……。会いに行ってないんだってな、伊織ちゃんに」
「…………」
その言葉に宗一郎の頬がぴくりと動く。
ずきずき痛む胸を抑えて、宗一郎は声を押しだした。
「……お前がいれば、俺は必要ないだろ?」
「へえ。ずいぶん弱気な発言だな。伊織ちゃんのことあきらめないって豪語してたやつとは思えない」
言われて宗一郎は自嘲した。
俯き、片手で顔を半分隠すようにして押さえる。
「自分でもそう思うよ。でも俺だって本当はあきらめたいわけじゃない。できることなら、今すぐ飛んでいって伊織ちゃんを支えてやりたい。……でも違うだろ? 俺じゃダメなんだ、俺じゃない。あの時、伊織ちゃんに誰って聞かれて思い知ったんだ。伊織ちゃんに本当に必要なのは俺じゃない。……仙道だ。俺は伊織ちゃんを守れないだけじゃなくて……必要ともされてないんだ……」
「…………」
胸が痛い。
伊織の笑顔が宗一郎の頭に浮かぶ。
だけどすぐにそれは怯えた表情に変わって宗一郎から遠ざかる。
そして、最後に仙道の胸に飛び込んでいく。
伊織が倒れたあの日から、宗一郎の頭の中で気付けばこの映像がくりかえしくりかえし現れては消えていった。
「伊織ちゃん……」
やるせない思いが宗一郎の胸を満たし、宗一郎は両手で顔を覆った。
仙道はその切ない響きの呟きを聞いて、瞳を細める。
苦しげに顔を覆う宗一郎と過去の自分の姿とが自然にリンクして、仙道は思わず自嘲した。
「はは、なるほどな」
「仙道……?」
急に笑いだした仙道に、宗一郎が顔をあげて怪訝そうに見つめてくる。
仙道はそれにも構わずくつくつと喉の奥で笑い声をもらした。
「ほんと、ノブナガくんの言うとおりだな」
「ノブ?」
「ああ。ノブナガくんに言われたよ。オレもお前も、伊織ちゃんのことを大切に思う以上に、自分自身が大切なんだ、ってな」
「――!!」
宗一郎が胸をつかれたように大きく目を瞠った。
仙道はそんな宗一郎に、まいったように眉を下げてみせる。
「オレは伊織ちゃんを神に取られたくなくて、神はこれ以上傷つきたくなくて……。ほんと、そうだよな。オレたちが守ってるのは自分自身だ……」
仙道は静かに目を伏せる。
ほんとうは伊織のことを一番大切に思っているのは信長なのかもしれない。
(いや、違うか……)
伊織のことを大切に思う気持ちは同じでも、自分の立ち位置を正確に把握できていたのは信長だけだった。
(あれは野生のカンが鋭そうだもんな)
呑気にもそんな事を考えて、仙道は小さく笑みを漏らす。