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ごめん……と掠れる声で呟くと、信長は腕の中でなんの反応も返さない伊織の存在を確かめるように、力強く抱きしめた。
信長が去った後、仙道は急いで帰り支度を始めた。
信長の言うとおりだった。
宗一郎に伊織を渡したくないばっかりに、大事なことを見失っていた。
そして、自分も昔、大ケガを負った伊織を前に逃げ出していた過去を思い出した。
伊織を好きだと思えば思うほど、臆病になる気持ちも知っていたのに。
抜け出そうとしたところを魚住と越野に見つかって怒られたけど、明日フロアをひとりでモップがけをすることが条件で許してもらった。
正直フロアをひとりでモップがけなんて絶対イヤだけど、でも伊織のためだ。
背に腹はかえられない。
仙道は急いで電車に飛び乗ると、海南大学駅で降りた。
そこから海南大附属高校まで全力で走る。
自慢じゃないがスタミナには自信がある。
駆けながら仙道は腕時計に目をやった。
時刻はもう21時近くになっている。
まだ宗一郎は学校に残っているだろうか。
考えて、ふと足を止めた。
(……さすがに、もう学校閉まってる……よな?)
うっかりしていた。
特に管理の厳しい私立で、ただの平日にこんな夜遅くまで学校が開いているわけがない。
「うーん」
(さて、どうするかな)
この気持ちを抱えたまま伊織の家に行くのはなんだか気が引けた。
一気に手持ち無沙汰になってしまい、仙道は辺りを見まわした。
このあたりは、いつか宗一郎と話した公園の近くだった。
せっかくここまで来たのだしと、仙道は公園まで足を伸ばす。
そこで見知った人影を見つけて、仙道は思わず動きを止めた。
(おお、ラッキー……)
その人物は、ブランコのまわりの柵に座って空を眺めていた。
仙道はゆっくりとその人物に近づくと、静かに声をかけた。
「よお、神」
「――仙道」
宗一郎は思わぬ人物に声をかけられて驚いて目を瞠った。
仙道はにやりと笑うと、ゆっくりと宗一郎のもとへ歩いてきて、その隣りに腰をおろした。
「なにやってんだよ、こんなとこで」
「――お前こそ」
呑気に口角を持ち上げて聞いてくる仙道に、宗一郎はため息をつきながら答えた。
正直、今一番会いたくない相手だった。
それが顔に出ていたのか、仙道が宗一郎を見て苦笑する。
「はは、まあそんな顔するなよ、神。……お前を探してたんだ。ノブナガくんに叱られたんでね」
「ノブに?」
宗一郎は眉根を寄せた。
「今日うちの高校に来たぜ、ノブナガくん。結構根性あんのな、あいつ」
「そりゃあ、まあ。うちの唯一の一年生レギュラーだからね」