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伊織が気を失って倒れたあの日から5日目。
宗一郎は、ひとり体育館で居残ってシュート練習をしていた。
今日は自主練をするメンバーは宗一郎ひとりだけだった。
あの日の月と星の危惧は現実のものとなり、伊織は感情をなくした人形のようになっているらしい。
あの日から今日まで、伊織はずっと学校を休んでいた。
バスケ部の面々は伊織のお見舞いにかわるがわる行っている。
今日はまりあは伊織のお見舞いに行っていて、めずらしく宗一郎の隣りにはいなかった。
「…………」
宗一郎は沈んだ気分を振り払うように頭を大きく振った。
当の宗一郎は、まだ一度も伊織のお見舞いに行っていなかった。
何度も行こうとしたけれど、いつも途中で引き返してしまった。
忘れられない。脳裏に焼きついて離れない。
誰? と怯えた瞳で自分を見た伊織。
……仙道を好きだと、綺麗な顔で言った伊織。
自分は伊織には必要ないのだと、あの時はっきり悟ってしまった。
宗一郎は小さく息を吐いて軋むような胸の痛みをごまかすと、日課であるシュートを放った。
がつんとボールが弾かれる音が響く。
また外れた。
ここのところ成功率が著しく悪い。
ボールを拾う。
脳裏に浮かぶ伊織の顔。
振り払うようにシュートを放つ。
弾かれる。
ボールを拾う。
その繰り返し。
「神さん」
もう何度目になるかわからないシュートを放とうとしたとき、急に後ろから声をかけられた。
驚いてそちらに目を向けると、信長が眉根を寄せて宗一郎の少し後ろに立っていた。
「ノブ……。伊織ちゃんのところに行ったんじゃなかった?」
「……神さんは、行かないんスか」
いつもよりも低く抑えた声で、信長が問うてくる。
宗一郎は力なく首を振った。
「俺は行かないよ」
「なんでッスか!? 伊織のことが心配じゃないんスか!?」
「心配に決まってるだろ。でも俺が行ったって意味がないんだ」
「はぁ!? 何言ってるんスか、神さん!」
「どうしても、頭を離れないんだ」
「え?」
宗一郎が目を伏せて言う。
「あのときの伊織ちゃんの目。怯えきったまなざし……。よっぽど、俺が怖かったんだろうな」
「神さん……」
「それに伊織ちゃんには仙道がついてるだろ? 伊織ちゃんも仙道のこと好きみたいだし、俺の出る幕は……」
「それは違うッス!」
「え?」
信長の剣幕に宗一郎は目を丸くした。
信長が真剣な表情で宗一郎に訴えかけてくる。
「あのときの仙道も言ってたじゃないッスか! あれは一時的に記憶が混乱して中二のときにもどっちまってただけで、だから伊織は仙道のことなんか……」
「そんなことわからないだろ」
「神さん!」
「現に、俺はなんにも知らなくて伊織ちゃんのこと守れなかった。仙道が伊織ちゃんを支えてやってるのを、黙って見てるしかできなかったんだ」
「それは……そうっスけど……。でも、神さんあのとき奪うって言ってたじゃないっスか!」
「あのときと今じゃ状況が違うだろ? 伊織ちゃんは俺のこと忘れてるみたいだし、変に俺が行ってもまた怯えさせるだけだ」
「違うんスよ、神さん。もうそういうレベルじゃないんス! 伊織、本当に壊れた人形みたいで……。何を見てもずっと無表情で……無反応で……。あんなの、呼吸はしてても、生きてるっていえるのかどうか……!」
「……それでも。それでも俺は行けない」
宗一郎は、ひとり体育館で居残ってシュート練習をしていた。
今日は自主練をするメンバーは宗一郎ひとりだけだった。
あの日の月と星の危惧は現実のものとなり、伊織は感情をなくした人形のようになっているらしい。
あの日から今日まで、伊織はずっと学校を休んでいた。
バスケ部の面々は伊織のお見舞いにかわるがわる行っている。
今日はまりあは伊織のお見舞いに行っていて、めずらしく宗一郎の隣りにはいなかった。
「…………」
宗一郎は沈んだ気分を振り払うように頭を大きく振った。
当の宗一郎は、まだ一度も伊織のお見舞いに行っていなかった。
何度も行こうとしたけれど、いつも途中で引き返してしまった。
忘れられない。脳裏に焼きついて離れない。
誰? と怯えた瞳で自分を見た伊織。
……仙道を好きだと、綺麗な顔で言った伊織。
自分は伊織には必要ないのだと、あの時はっきり悟ってしまった。
宗一郎は小さく息を吐いて軋むような胸の痛みをごまかすと、日課であるシュートを放った。
がつんとボールが弾かれる音が響く。
また外れた。
ここのところ成功率が著しく悪い。
ボールを拾う。
脳裏に浮かぶ伊織の顔。
振り払うようにシュートを放つ。
弾かれる。
ボールを拾う。
その繰り返し。
「神さん」
もう何度目になるかわからないシュートを放とうとしたとき、急に後ろから声をかけられた。
驚いてそちらに目を向けると、信長が眉根を寄せて宗一郎の少し後ろに立っていた。
「ノブ……。伊織ちゃんのところに行ったんじゃなかった?」
「……神さんは、行かないんスか」
いつもよりも低く抑えた声で、信長が問うてくる。
宗一郎は力なく首を振った。
「俺は行かないよ」
「なんでッスか!? 伊織のことが心配じゃないんスか!?」
「心配に決まってるだろ。でも俺が行ったって意味がないんだ」
「はぁ!? 何言ってるんスか、神さん!」
「どうしても、頭を離れないんだ」
「え?」
宗一郎が目を伏せて言う。
「あのときの伊織ちゃんの目。怯えきったまなざし……。よっぽど、俺が怖かったんだろうな」
「神さん……」
「それに伊織ちゃんには仙道がついてるだろ? 伊織ちゃんも仙道のこと好きみたいだし、俺の出る幕は……」
「それは違うッス!」
「え?」
信長の剣幕に宗一郎は目を丸くした。
信長が真剣な表情で宗一郎に訴えかけてくる。
「あのときの仙道も言ってたじゃないッスか! あれは一時的に記憶が混乱して中二のときにもどっちまってただけで、だから伊織は仙道のことなんか……」
「そんなことわからないだろ」
「神さん!」
「現に、俺はなんにも知らなくて伊織ちゃんのこと守れなかった。仙道が伊織ちゃんを支えてやってるのを、黙って見てるしかできなかったんだ」
「それは……そうっスけど……。でも、神さんあのとき奪うって言ってたじゃないっスか!」
「あのときと今じゃ状況が違うだろ? 伊織ちゃんは俺のこと忘れてるみたいだし、変に俺が行ってもまた怯えさせるだけだ」
「違うんスよ、神さん。もうそういうレベルじゃないんス! 伊織、本当に壊れた人形みたいで……。何を見てもずっと無表情で……無反応で……。あんなの、呼吸はしてても、生きてるっていえるのかどうか……!」
「……それでも。それでも俺は行けない」