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小百合が眉根を寄せて、軽く右のこめかみを押さえた。
「わたしのせいね。うちのバスケ部で伊織ちゃんの事情を知ってたのはわたしだけだったのに、ちゃんと守ってあげられなかった。わたしが取材陣にもうちょっと早く気づいていれば……!」
「小百合のせいじゃないさ」
言って牧は小百合の頭にぽんと大きな手を置いた。
小百合は小さく首を振る。
「そんなことないわ。わたしがもっとちゃんと伊織ちゃんを見ていてあげれたら」
「それを言うなら、俺だってお前に鈴村のことを聞かなかったのも同罪だな」
「それは……!」
小百合は弾かれたように顔を上げた。
それを見て牧が目を細める。
「鈴村の弟も言ってただろ? 過ぎたことよりこれからだ。違うか?」
「そうよね……。ごめんなさい」
「めずらしく素直だな」
「……うるさいわね、取り消すわよ」
「はは、こわいこわい。……小百合、明日、鈴村の家に行ってみるか。住所わかるか?」
「あ、ええ。わかるわ」
言いながら小百合はバスケ部住所録を取り出した。
願いはひとつだった。
大好きなひとたちにずっと笑顔でいてもらうこと。
たったそれだけだったのに……。
『もうテニスはできません』
淡々とそう告げる医者。
なにを言ってるのかわからなかった。
脳が麻痺してしまったみたいで、うまく言葉が飲み込めない。
(いま、なんて?)
コーチの息を呑む音が聞こえた。
呆然とする頭でコーチに視線を向ける。
愕然とした。
泣いている。
あの。いつだって毅然として。とても強いコーチが。
泣いている。
そのとき、スッと医者の言ったことが伊織の胸に落ちてきた。
『もうテニスはできません』
ああ。
だからコーチは泣いているのか。
伊織は呆然と手の平を見つめた。
どうしてだろう。涙が出てこない。
さっきまで確かにあった伊織の約束された未来は、たった今無惨にも消え去ったというのに、心が麻痺してしまったようで、ちっとも涙が出てこなかった。
脳裏に仙道の顔がよぎる。
ああ、もう会えないんだなぁなんてぼんやりと思う。
約束、守れなかった。
コーチがすすり泣く声が、医者と伊織とコーチと、三人だけの診察室に響き渡る。
連絡を受けて急いで駆けつけてきた家族が、そこに飛び込んできた。
呆然とする伊織と、すすり泣くコーチを見て、家族は状況を理解した。
膝を着いて泣き崩れる母。それを支え、自分も涙を堪える父。
伊織にすがりついて涙を流す弟たち。
伊織以外のみんなが泣いている。
「わたしのせいね。うちのバスケ部で伊織ちゃんの事情を知ってたのはわたしだけだったのに、ちゃんと守ってあげられなかった。わたしが取材陣にもうちょっと早く気づいていれば……!」
「小百合のせいじゃないさ」
言って牧は小百合の頭にぽんと大きな手を置いた。
小百合は小さく首を振る。
「そんなことないわ。わたしがもっとちゃんと伊織ちゃんを見ていてあげれたら」
「それを言うなら、俺だってお前に鈴村のことを聞かなかったのも同罪だな」
「それは……!」
小百合は弾かれたように顔を上げた。
それを見て牧が目を細める。
「鈴村の弟も言ってただろ? 過ぎたことよりこれからだ。違うか?」
「そうよね……。ごめんなさい」
「めずらしく素直だな」
「……うるさいわね、取り消すわよ」
「はは、こわいこわい。……小百合、明日、鈴村の家に行ってみるか。住所わかるか?」
「あ、ええ。わかるわ」
言いながら小百合はバスケ部住所録を取り出した。
願いはひとつだった。
大好きなひとたちにずっと笑顔でいてもらうこと。
たったそれだけだったのに……。
『もうテニスはできません』
淡々とそう告げる医者。
なにを言ってるのかわからなかった。
脳が麻痺してしまったみたいで、うまく言葉が飲み込めない。
(いま、なんて?)
コーチの息を呑む音が聞こえた。
呆然とする頭でコーチに視線を向ける。
愕然とした。
泣いている。
あの。いつだって毅然として。とても強いコーチが。
泣いている。
そのとき、スッと医者の言ったことが伊織の胸に落ちてきた。
『もうテニスはできません』
ああ。
だからコーチは泣いているのか。
伊織は呆然と手の平を見つめた。
どうしてだろう。涙が出てこない。
さっきまで確かにあった伊織の約束された未来は、たった今無惨にも消え去ったというのに、心が麻痺してしまったようで、ちっとも涙が出てこなかった。
脳裏に仙道の顔がよぎる。
ああ、もう会えないんだなぁなんてぼんやりと思う。
約束、守れなかった。
コーチがすすり泣く声が、医者と伊織とコーチと、三人だけの診察室に響き渡る。
連絡を受けて急いで駆けつけてきた家族が、そこに飛び込んできた。
呆然とする伊織と、すすり泣くコーチを見て、家族は状況を理解した。
膝を着いて泣き崩れる母。それを支え、自分も涙を堪える父。
伊織にすがりついて涙を流す弟たち。
伊織以外のみんなが泣いている。