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(宗ちゃん……)
実際、まりあも伊織のことが気がかりでしょうがなかった。
伊織はいままでの誰よりも怖い恋敵だった。
世界で一番大嫌いな恋敵。
でも、それ以前に世界で一番大好きな友達だった。
(……はじめてだったのよ)
まりあは胸中でポツリと呟く。
そう。伊織が初めてだった。
自分でもはっきり自覚している。
どうしようもなく自分本位な性格。
この恵まれた容姿で男子を利用していじめられることだけはなかったけど、まりあはいつだって同性からは嫌われ続けてきた。
それなのに……。
(バカみたいにへらへら笑って、まりあちゃんまりあちゃんって……。自分だって宗ちゃんが好きなくせに、まりあのこと考えて……バッカみたい)
まりあの瞳から涙が零れ落ちる。
許せなかった。
こんな風に伊織がドロップアウトするなんて許せない。
だってまだ聞いてない。
自分は伊織から、本当の気持ちを聞いてない。
(宗ちゃんのことが好きだって、伊織ちゃんの素直な気持ち、まだ聞いてないよ……)
まりあは膝を抱えてそこに顔をうずめた。
声を殺して涙を流す。
罵倒してやろうと思ってたのに。
伊織が気持ちを打ち明けてきたら。
そんなの叶うわけないじゃんわたしと張り合うなんて脳みそおかしいんじゃないの鏡見て出直してきなさいよって、罵倒してやろうと思ってたのに。
(もし本当に人形みたいになっちゃったら、そんなことも言えなくなっちゃうじゃないのよ……! そんなの、そんなのまりあ絶対に許さないんだから……!)
まりあは抱えた膝の下で流れる涙を拭うと、きっと顔を上げた。
更衣室のロッカーで部誌をつけながら、小百合はふうと息を吐き出した。
ペンを走らす手をとめて、それをじっと見つめる。
(伊織ちゃん、大丈夫かしら……)
その思考を読み取ったように、牧から声がかかる。
「鈴村が心配だな」
「――紳一」
小百合は、そうねと眉を下げて同意する。
牧はそんな小百合に、探るように視線を向けた。
「小百合。お前鈴村のこと知ってたんじゃないか」
「……! 気付いてたの?」
「気付いてたわけじゃないが……ときどき気遣うように鈴村を見てたからな。鈴村はたまに抜けてはいたが、基本はしっかりしている。仕事を覚えるのも早いし、空気を読むのもうまい。お前が気にかけるのはなんでだろうとずっと気になっていたんだが……こういうことだったのか」
「でもまさか、あんな家庭の事情まで知らなかったわ。妹がテニス部で、伊織ちゃんのファンだったの。だからわたしが知ってたのは彼女がテニスで有名な選手だったってとこまで」
「……バレー部の勧誘をあんなに頑なに断ったのも、肩のケガってやつか」
「ええ。もう、肩を使うどんな競技でも選手にはなれないそうだって、妹が言ってたわ」
「そうか……」