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夢小説設定
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「姉はそのときも、今回のように意識を失ったんです。……次に目覚めたときは、もう別人のようだった。生きて、動いて、しゃべる。なのに、それ以上のことはなにもなかった。まるで……壊れた人形のようだった」
宗一郎は呆然としてそれを聞いた。
信じられなかった。
とても現実の話とは思えなかった。
ほんとうはドラマかなにかなんじゃないか。
自分はテレビの前でそれを見てるだけで。感情移入して現実と混同して。
ふと、信長の声が耳に届く。
「じ、じゃあ、今回も……」
「わかりません」
目を伏せて首を振る月。
その映像がゆっくりとスローモーションに宗一郎の感覚に届く。
ああ、夢じゃない。
はっきり自覚して胸をおさえた。
痛い。
呼吸のたんびにきりきりと締め付けられるようだ。
みんなが息を呑む気配がする。
月が懇願するように声を出した。
「でも、今回は前とは違う。みなさんがいます!」
バスケ部の面々が困惑したように月に視線を向けた。
月は全身に突き刺さるような視線にも負けじと、声を張り上げた。
必死に、祈るように言う。
「みなさんは、姉がテニスプレーヤーだったことを知らない。今の姉と友達や仲間でいてくれるのは姉自身が好きだからだって、きっとわかってくれると思うんです。……俺たちじゃダメなんだ。昔の姉を知っている俺たちの言葉では、姉はどうしたって引け目を感じてしまう。素直に俺たちの言葉を受け入れられない。でもみなさんなら……!」
月が体をがばりと半分に折り曲げた。
「勝手なお願いだってわかってます、みなさんにそんな義理なんかないことも、わかってる……! でも、姉のことをもし、もし、友達だと……仲間だと思ってくれるなら……お願いだから見捨てないでください……! お願いします……!!」
宗一郎は涙を滲ませて言う月を、ただ立ちつくしたまま見ていた。
「伊織ちゃん、大丈夫かな……」
部活後の自主練中、信長と宗一郎の練習を眺めながらまりあはぽつりと呟いた。
あの後月は帰って、バスケ部はそのまま予定通りに練習を決行した。
高頭のその決断に反発した部員も多かったけど、伊織を信じているなら普通に練習をして最強の海南のままで迎えてやらなければダメだと高頭は言った。
高頭の言いたいことはわかる気がする。でも、その通りに動くのはとても難しかった。
まりあはシューティングする宗一郎をじっと見つめた。
明らかに動揺をあらわにしている信長とは違って、宗一郎のその横顔からはなんの感情も読めなかった。
でも、まりあは気付いている。
宗一郎のシュート成功率がいつもより低い。
他の人が見たらきっとわからないレベルだろう。
でも、毎日毎日宗一郎だけを見続けていたまりあにはわかる。
綺麗なフォームがときどき乱れ、吸い込まれるようなシュートは嘘みたいにゴールに弾かれる。
この幼馴染みは他人に決して弱さを見せない。
それはまりあに対しても例外ではなかった。
苦しみや悲しみ、辛いことは、全て自分の内側で誰にも気付かれないように処理してしまう。
そんな宗一郎がここまで動揺を隠しきれない事実に、まりあは胸を痛めた。
宗一郎は呆然としてそれを聞いた。
信じられなかった。
とても現実の話とは思えなかった。
ほんとうはドラマかなにかなんじゃないか。
自分はテレビの前でそれを見てるだけで。感情移入して現実と混同して。
ふと、信長の声が耳に届く。
「じ、じゃあ、今回も……」
「わかりません」
目を伏せて首を振る月。
その映像がゆっくりとスローモーションに宗一郎の感覚に届く。
ああ、夢じゃない。
はっきり自覚して胸をおさえた。
痛い。
呼吸のたんびにきりきりと締め付けられるようだ。
みんなが息を呑む気配がする。
月が懇願するように声を出した。
「でも、今回は前とは違う。みなさんがいます!」
バスケ部の面々が困惑したように月に視線を向けた。
月は全身に突き刺さるような視線にも負けじと、声を張り上げた。
必死に、祈るように言う。
「みなさんは、姉がテニスプレーヤーだったことを知らない。今の姉と友達や仲間でいてくれるのは姉自身が好きだからだって、きっとわかってくれると思うんです。……俺たちじゃダメなんだ。昔の姉を知っている俺たちの言葉では、姉はどうしたって引け目を感じてしまう。素直に俺たちの言葉を受け入れられない。でもみなさんなら……!」
月が体をがばりと半分に折り曲げた。
「勝手なお願いだってわかってます、みなさんにそんな義理なんかないことも、わかってる……! でも、姉のことをもし、もし、友達だと……仲間だと思ってくれるなら……お願いだから見捨てないでください……! お願いします……!!」
宗一郎は涙を滲ませて言う月を、ただ立ちつくしたまま見ていた。
「伊織ちゃん、大丈夫かな……」
部活後の自主練中、信長と宗一郎の練習を眺めながらまりあはぽつりと呟いた。
あの後月は帰って、バスケ部はそのまま予定通りに練習を決行した。
高頭のその決断に反発した部員も多かったけど、伊織を信じているなら普通に練習をして最強の海南のままで迎えてやらなければダメだと高頭は言った。
高頭の言いたいことはわかる気がする。でも、その通りに動くのはとても難しかった。
まりあはシューティングする宗一郎をじっと見つめた。
明らかに動揺をあらわにしている信長とは違って、宗一郎のその横顔からはなんの感情も読めなかった。
でも、まりあは気付いている。
宗一郎のシュート成功率がいつもより低い。
他の人が見たらきっとわからないレベルだろう。
でも、毎日毎日宗一郎だけを見続けていたまりあにはわかる。
綺麗なフォームがときどき乱れ、吸い込まれるようなシュートは嘘みたいにゴールに弾かれる。
この幼馴染みは他人に決して弱さを見せない。
それはまりあに対しても例外ではなかった。
苦しみや悲しみ、辛いことは、全て自分の内側で誰にも気付かれないように処理してしまう。
そんな宗一郎がここまで動揺を隠しきれない事実に、まりあは胸を痛めた。