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夢小説設定
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ざわざわと、人のざわめきがどこか遠くで聞こえる。
伊織の力ない声が、鼓膜を打つ。
月は、目の前の光景を信じられない思いで見つめた。
どうしてこんなことに。
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
そのとき。
「伊織ちゃん!」
隣りにいた宗一郎がハッとなって叫んだ。
宗一郎は伊織に駆け寄ろうとして、途中で戸惑うように足を止めた。
そんな宗一郎のさらに奥で、仙道に抱きかかえられた伊織が気を失うのが見えた。
伊織は仙道の腕に、青白い顔でぐったりとその身を預けている。
「ねーちゃん!」
星が立ち止まっている宗一郎を追い越して伊織に駆け寄った。
「ねーちゃん! ねーちゃん!!」
取り乱したように叫ぶ星。
月はそれをみて、動揺する心を必死でなだめた。
自分まで星と同じく我を失っていてもどうにもならない。
ぐいと流れる涙を手の平で拭うと、きっと唇を引き結ぶ。
「星。姉ちゃんを連れて家へ帰って。帰ったらすぐに父さんと母さんに連絡して」
「わ、わかった。月は?」
おどおどとまだうろたえた様子で星が聞く。
「俺は、とりあえず事態を収束させなきゃ。そうしたらすぐに帰る」
「……わかった。月、いつもお前にツライ役目ばっかりおしつけてごめん」
「大丈夫。こういうのは適材適所だから。お前に難しい説明は無理だろ? とにかく星は姉ちゃんを頼む」
星は幾分落ち着きを取り戻した様子でこくりと頷いた。
「月くん」
仙道が伊織から視線を外して月を見た。
月は呼ばれてそちらへ目線を向ける。
「はい」
「オレも星くんと一緒に行っていいかな。伊織ちゃんについてたいんだ」
「――お願いします」
正直、その申し出はありがたかった。
どんなに落ち着こうと必死になっても、所詮自分たちはまだ中学生だ。
思考や行動には限界がある。
高校生とはいえ、仙道が力になってくれるのはとても心強かった。
仙道はその言葉に力強く頷くと、そのまま伊織を抱きかかえて立ち上がった。
「行こう、星くん」
「はい!」
二人の背中が見えなくなるまで見送ると、中村がおずおずと声をかけてきた。
「あの、月……くん? 本当にごめん。俺、調子に乗って取り返しのつかないこと……」
その言葉に、月は鋭い視線を中村に向ける。
切れそうなほどの強い眼差しに、中村がびくっとたじろいだ。
「取り返しがつかないなんていうのやめて下さい!」
「ご、ごめん……」
「姉なら……きっと大丈夫ですから」
月が目を伏せる。
「それに、これは必要なことだったんです。いつまでも逃げてはいられない。あれは、いずれ爆発する問題だった。……いつかは、直視しなきゃいけないことだったんですから」
だから気にしないでくださいと、月は続けた。
伊織の力ない声が、鼓膜を打つ。
月は、目の前の光景を信じられない思いで見つめた。
どうしてこんなことに。
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
そのとき。
「伊織ちゃん!」
隣りにいた宗一郎がハッとなって叫んだ。
宗一郎は伊織に駆け寄ろうとして、途中で戸惑うように足を止めた。
そんな宗一郎のさらに奥で、仙道に抱きかかえられた伊織が気を失うのが見えた。
伊織は仙道の腕に、青白い顔でぐったりとその身を預けている。
「ねーちゃん!」
星が立ち止まっている宗一郎を追い越して伊織に駆け寄った。
「ねーちゃん! ねーちゃん!!」
取り乱したように叫ぶ星。
月はそれをみて、動揺する心を必死でなだめた。
自分まで星と同じく我を失っていてもどうにもならない。
ぐいと流れる涙を手の平で拭うと、きっと唇を引き結ぶ。
「星。姉ちゃんを連れて家へ帰って。帰ったらすぐに父さんと母さんに連絡して」
「わ、わかった。月は?」
おどおどとまだうろたえた様子で星が聞く。
「俺は、とりあえず事態を収束させなきゃ。そうしたらすぐに帰る」
「……わかった。月、いつもお前にツライ役目ばっかりおしつけてごめん」
「大丈夫。こういうのは適材適所だから。お前に難しい説明は無理だろ? とにかく星は姉ちゃんを頼む」
星は幾分落ち着きを取り戻した様子でこくりと頷いた。
「月くん」
仙道が伊織から視線を外して月を見た。
月は呼ばれてそちらへ目線を向ける。
「はい」
「オレも星くんと一緒に行っていいかな。伊織ちゃんについてたいんだ」
「――お願いします」
正直、その申し出はありがたかった。
どんなに落ち着こうと必死になっても、所詮自分たちはまだ中学生だ。
思考や行動には限界がある。
高校生とはいえ、仙道が力になってくれるのはとても心強かった。
仙道はその言葉に力強く頷くと、そのまま伊織を抱きかかえて立ち上がった。
「行こう、星くん」
「はい!」
二人の背中が見えなくなるまで見送ると、中村がおずおずと声をかけてきた。
「あの、月……くん? 本当にごめん。俺、調子に乗って取り返しのつかないこと……」
その言葉に、月は鋭い視線を中村に向ける。
切れそうなほどの強い眼差しに、中村がびくっとたじろいだ。
「取り返しがつかないなんていうのやめて下さい!」
「ご、ごめん……」
「姉なら……きっと大丈夫ですから」
月が目を伏せる。
「それに、これは必要なことだったんです。いつまでも逃げてはいられない。あれは、いずれ爆発する問題だった。……いつかは、直視しなきゃいけないことだったんですから」
だから気にしないでくださいと、月は続けた。