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「はい!」
高頭に元気よく返事を返すと、伊織はスコアブックを抱えて宗一郎たちのもとへと駆け寄った。
雑誌記者という単語に一瞬ひっかかりを覚えたが、バスケ専門雑誌の専属記者なら大丈夫だろう。
専門スポーツ以外はみんな意外に疎いのだと、中学のときに親しかった記者から聞いたことがある。
「すみません、お待たせしました」
「おお、悪いな鈴村」
「いえ」
「あなた、海南の新しいマネージャー? はじめまして、わたしは週刊バスケットボール記者の相田弥生です。こっちは部下の中村」
あいださ~んそんな言い方ないっすよ~と中村が情けない声を出した。
それをうるさい! と一喝しながら弥生は伊織に名刺を差し出す。
伊織は恐縮しながらそれを受け取った。
「わわ、これはご丁寧に……。はじめまして、一年マネージャーの鈴村伊織です。よろしくお願いします」
「ん、鈴村伊織?」
拗ねたようにぶつぶつ言ってた中村が、突然ぐいと身を乗り出した。
伊織はそれにぎょっと身を引く。
「わ、なんですか?」
「あ、いや……なんでも」
それでもまだ身を乗り出したままの中村に、弥生が思いっきりその後頭部を殴りつけた。
「お前はヘンタイか! かわいそうにこの子怯えちゃってるじゃないの!」
「いった! 違いますよ、相田さん! でも、今の衝撃で思い出した!」
言って中村は、伊織の手をがしっと掴む。
「わあ、なんですか!」
「君、鈴村伊織ちゃんって、あの鈴村伊織ちゃんだよね!?」
「――え?」
その言い回しに、伊織がハッと表情を止める。
どくんと心臓が嫌な音を立てた。
まさか。
なんとかごまかそうと、伊織は必死で口を動かす。
「え、と……。あの、と言われましても」
「やだなあ、しらばっくれちゃって! 君、テニスプレーヤーの鈴村伊織ちゃんでしょ!?」
そのとき、伊織は全ての音が遠のいた気がした。
宗一郎は中村の言葉に驚いて目を見開いた。
テニスプレーヤー? 伊織が?
中村は周囲の驚きにも構わず、ひとり興奮した様子で話を続ける。
「わー、本物初めて見た~! 髪切ったんだねー、最初全然わかんなかったよー! え、なんで神奈川にいるの? あ、ほら、相田さん。俺、ここに配属になる前はジュニア・中学テニス担当だったじゃないですか。彼女、そのときの超有名選手だったんですよ! ジュニア大会でも優勝多数、全国中学大会ではシングルス脅威の二連覇! さらに三連覇目前の決勝戦でケガしちゃってそれでも準優勝! テニス界期待の新星で! あ、でもそういえばあのときのケガは大丈夫!? 伊織ちゃん、去年の全中のときの肩のケガ、けっこうマズかったんだよね? それが選手生命にどうのこうのって……」
「中村くん!」
弥生は中村が何を言おうとしているのか気付いて、悲鳴のような声をあげた。
その剣幕に、中村がびくりと言葉を止める。
体育館中の視線がなにごとかとこちらに集中した。小百合やまりあも、不思議そうな顔でこちらを見ている。
宗一郎も、たった今中村が言った言葉に衝撃を受けた。
なんと言った? いま、中村はなんと言った?
高頭に元気よく返事を返すと、伊織はスコアブックを抱えて宗一郎たちのもとへと駆け寄った。
雑誌記者という単語に一瞬ひっかかりを覚えたが、バスケ専門雑誌の専属記者なら大丈夫だろう。
専門スポーツ以外はみんな意外に疎いのだと、中学のときに親しかった記者から聞いたことがある。
「すみません、お待たせしました」
「おお、悪いな鈴村」
「いえ」
「あなた、海南の新しいマネージャー? はじめまして、わたしは週刊バスケットボール記者の相田弥生です。こっちは部下の中村」
あいださ~んそんな言い方ないっすよ~と中村が情けない声を出した。
それをうるさい! と一喝しながら弥生は伊織に名刺を差し出す。
伊織は恐縮しながらそれを受け取った。
「わわ、これはご丁寧に……。はじめまして、一年マネージャーの鈴村伊織です。よろしくお願いします」
「ん、鈴村伊織?」
拗ねたようにぶつぶつ言ってた中村が、突然ぐいと身を乗り出した。
伊織はそれにぎょっと身を引く。
「わ、なんですか?」
「あ、いや……なんでも」
それでもまだ身を乗り出したままの中村に、弥生が思いっきりその後頭部を殴りつけた。
「お前はヘンタイか! かわいそうにこの子怯えちゃってるじゃないの!」
「いった! 違いますよ、相田さん! でも、今の衝撃で思い出した!」
言って中村は、伊織の手をがしっと掴む。
「わあ、なんですか!」
「君、鈴村伊織ちゃんって、あの鈴村伊織ちゃんだよね!?」
「――え?」
その言い回しに、伊織がハッと表情を止める。
どくんと心臓が嫌な音を立てた。
まさか。
なんとかごまかそうと、伊織は必死で口を動かす。
「え、と……。あの、と言われましても」
「やだなあ、しらばっくれちゃって! 君、テニスプレーヤーの鈴村伊織ちゃんでしょ!?」
そのとき、伊織は全ての音が遠のいた気がした。
宗一郎は中村の言葉に驚いて目を見開いた。
テニスプレーヤー? 伊織が?
中村は周囲の驚きにも構わず、ひとり興奮した様子で話を続ける。
「わー、本物初めて見た~! 髪切ったんだねー、最初全然わかんなかったよー! え、なんで神奈川にいるの? あ、ほら、相田さん。俺、ここに配属になる前はジュニア・中学テニス担当だったじゃないですか。彼女、そのときの超有名選手だったんですよ! ジュニア大会でも優勝多数、全国中学大会ではシングルス脅威の二連覇! さらに三連覇目前の決勝戦でケガしちゃってそれでも準優勝! テニス界期待の新星で! あ、でもそういえばあのときのケガは大丈夫!? 伊織ちゃん、去年の全中のときの肩のケガ、けっこうマズかったんだよね? それが選手生命にどうのこうのって……」
「中村くん!」
弥生は中村が何を言おうとしているのか気付いて、悲鳴のような声をあげた。
その剣幕に、中村がびくりと言葉を止める。
体育館中の視線がなにごとかとこちらに集中した。小百合やまりあも、不思議そうな顔でこちらを見ている。
宗一郎も、たった今中村が言った言葉に衝撃を受けた。
なんと言った? いま、中村はなんと言った?