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夢小説設定
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集合時間までまだ少し時間があった。
月は時計を確認すると、黙々とウォーミングアップをしている宗一郎の元へと向かった。
「神先輩。すみません、ちょっといいですか?」
声をかけると、宗一郎は一瞬きょとんとした表情を見せた。
が、すぐに笑顔で答えてくれる。
「いいよ。どうしたの?」
「……ちょっとここでは」
月はちらりと遠くで準備している伊織を見て言う。
宗一郎はそれを察すると、小さく頷いた。
「じゃあ、外で話そうか」
宗一郎の案内で、月は体育館脇の外水道へと出た。
「話って伊織ちゃんのこと?」
「はい」
「どうしたの?」
「姉、昨日早退して帰ってきたみたいなんですけど、学校でなにかあったんですか? 姉は聞いてもなにもないの一点張りで……」
「ああ。……伊織ちゃん、昨日ね、バレー部に勧誘されたんだよ」
「バレー部に?」
なぜ? と疑問を浮かべる月に、宗一郎が事情を説明する。
「おとといの球技大会で伊織ちゃんすごい活躍して、それで」
「ああ、なるほど……」
月が苦い顔をする。
「それで、入部を断る姉に、そのバレー部の人が逆ギレでもしたんですか」
「すごい、よくわかるね。そうだよ。それがきっかけかわからないけど、伊織ちゃん、その後体調崩しちゃって……」
「そうだったんですか」
月がさらに渋面を作って黙り込んだ。
そんな月に、今度は宗一郎が口を開く。
「ねえ、月くん。伊織ちゃん、さっきは大丈夫なんて言ってたけど、少し顔色悪いような気がするんだ。昨日、家に帰ってからは大丈夫そうだった?」
「正直よくわかりません。姉は、心配されるのをすごく怖がるんです。それが姉にとって深刻であればあるほど……。そういうときの姉は、兄弟の俺たちにも無理をしているのかそうでないのか、見抜くのが難しいんです」
「そうか……」
宗一郎が心配そうに息を吐き出した。
月がそれを見て、しかし嬉しそうに微笑む。
「でも、姉は幸せ者ですね」
「え?」
「神先輩が、姉のこと大切に思ってくれてるのが伝わってきます。牧先輩も清田先輩も、姉のこと気にかけてくれてるみたいだし……。俺、最近姉が元気に笑ってくれるのが、嬉しいんです」
月がそう言ってほんとうに嬉しそうに微笑んだ。
宗一郎はそれを見て、下を向いてどこか切なそうに微笑む。
「はは。でも俺、ちゃんと伊織ちゃんを守れなくて情けないけどね。月くんと、伊織ちゃんに無理はさせないって約束したのにさ」
「……姉は、神先輩のことすごく頼りにしてますよ。多分、神先輩が思ってるよりずっとずっと……」
「そうかな。そうだとしたらすごく嬉しいけど……」
宗一郎は小さく嘆息した。
「でも、俺じゃ駄目なんだ。まだ、伊織ちゃんのこと全然知らなすぎて、ちっとも守ってあげられない。――ほんとうに、情けないよ」
月はしばらく黙って宗一郎を眺めていたが、やがてゆっくり口を開いた。
「姉の負う傷は深すぎて……だから、多分もう少し、口にするのは時間がかかるんだと思います。でも、どうか見捨てないでやってください。姉は、今も戦ってるんです」
月は時計を確認すると、黙々とウォーミングアップをしている宗一郎の元へと向かった。
「神先輩。すみません、ちょっといいですか?」
声をかけると、宗一郎は一瞬きょとんとした表情を見せた。
が、すぐに笑顔で答えてくれる。
「いいよ。どうしたの?」
「……ちょっとここでは」
月はちらりと遠くで準備している伊織を見て言う。
宗一郎はそれを察すると、小さく頷いた。
「じゃあ、外で話そうか」
宗一郎の案内で、月は体育館脇の外水道へと出た。
「話って伊織ちゃんのこと?」
「はい」
「どうしたの?」
「姉、昨日早退して帰ってきたみたいなんですけど、学校でなにかあったんですか? 姉は聞いてもなにもないの一点張りで……」
「ああ。……伊織ちゃん、昨日ね、バレー部に勧誘されたんだよ」
「バレー部に?」
なぜ? と疑問を浮かべる月に、宗一郎が事情を説明する。
「おとといの球技大会で伊織ちゃんすごい活躍して、それで」
「ああ、なるほど……」
月が苦い顔をする。
「それで、入部を断る姉に、そのバレー部の人が逆ギレでもしたんですか」
「すごい、よくわかるね。そうだよ。それがきっかけかわからないけど、伊織ちゃん、その後体調崩しちゃって……」
「そうだったんですか」
月がさらに渋面を作って黙り込んだ。
そんな月に、今度は宗一郎が口を開く。
「ねえ、月くん。伊織ちゃん、さっきは大丈夫なんて言ってたけど、少し顔色悪いような気がするんだ。昨日、家に帰ってからは大丈夫そうだった?」
「正直よくわかりません。姉は、心配されるのをすごく怖がるんです。それが姉にとって深刻であればあるほど……。そういうときの姉は、兄弟の俺たちにも無理をしているのかそうでないのか、見抜くのが難しいんです」
「そうか……」
宗一郎が心配そうに息を吐き出した。
月がそれを見て、しかし嬉しそうに微笑む。
「でも、姉は幸せ者ですね」
「え?」
「神先輩が、姉のこと大切に思ってくれてるのが伝わってきます。牧先輩も清田先輩も、姉のこと気にかけてくれてるみたいだし……。俺、最近姉が元気に笑ってくれるのが、嬉しいんです」
月がそう言ってほんとうに嬉しそうに微笑んだ。
宗一郎はそれを見て、下を向いてどこか切なそうに微笑む。
「はは。でも俺、ちゃんと伊織ちゃんを守れなくて情けないけどね。月くんと、伊織ちゃんに無理はさせないって約束したのにさ」
「……姉は、神先輩のことすごく頼りにしてますよ。多分、神先輩が思ってるよりずっとずっと……」
「そうかな。そうだとしたらすごく嬉しいけど……」
宗一郎は小さく嘆息した。
「でも、俺じゃ駄目なんだ。まだ、伊織ちゃんのこと全然知らなすぎて、ちっとも守ってあげられない。――ほんとうに、情けないよ」
月はしばらく黙って宗一郎を眺めていたが、やがてゆっくり口を開いた。
「姉の負う傷は深すぎて……だから、多分もう少し、口にするのは時間がかかるんだと思います。でも、どうか見捨てないでやってください。姉は、今も戦ってるんです」