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夢小説設定
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「あー、いえ、そういう問題ではなくてですね……」
伊織はどうしたものかと頭を悩ませた。
手が無意識に昔ケガを負った右肩を押さえる。
この肩のケガは、テニスの選手生命を奪っただけではなく、他のスポーツでも選手として競技することを不可能にしていた。
球技大会のように短期間であったり、趣味の範囲で競技することは可能だが、当然バレー部に入部などできるわけがない。
(でも、この肩のケガのことは言いたくないし……)
ぎゅっと肩を掴む手に力が入る。
「ねえ、それだったら夏の大会まででもいいわ。それまでバスケ部から助っ人ってことで、そのままバスケ部のマネージャーを続けててもいいから! ねえ、いいわよね、牧くん?」
「まあ、うちは構わないが、こういうのは本人が首を縦に振らないことにはな……。なあ、どうだ鈴村? ここまで言ってくれてるんだ、夏までの間バレー部でがんばってみないか?」
牧の言葉に伊織が弾かれたように顔を上げた。
それまで黙って見守っているだけだった小百合も驚いたように牧を見る。
まさか牧がつかさに助け舟を出すとは思わなかった。
伊織は小さく唇を噛んで下を向く。
「…………」
ショックだった。
もしかして、自分はマネージャーとして必要とされてないんじゃないだろうか。
(たしかにうちの部には小百合先輩もまりあちゃんもいるし、他にもしっかりしたマネージャーさんいるものね……)
海南大附属高校には、一年から三年まで合計六人のマネージャーがいた。
自分ひとり欠けたからと言って、きっとどうってことないだろう。
ましてや、この中でバスケを未経験なのは伊織だけだ。
他の人たちはみんな中学時代に選手、もしくはマネージャーとしてバスケに関わった人ばかりだった。
(やっぱりわたしは、ただのお荷物なのかも……)
選手としても機能できず、マネージャーとしても役に立たない。
なんて不要な存在。
目に見えて元気をなくした伊織の頭に、ぽんと温かくて大きな手が置かれた。
視線を上げると、牧が優しい笑顔で伊織の頭を撫でていた。
「安心しろ、鈴村。お前ももう俺たちの大切なマネージャーだ。辞めてもらったら困る。むしろ、うちにもちゃんと顔を出すというのが条件で助っ人として送り出すつもりなんだが……どうだ?」
提案としては悪くない。
きっと、伊織だってケガさえなければ、一も二もなく快諾していたはずだ。
でも……。
伊織は泣くのを堪えるような表情で俯いた。
(どうしよう。何て言えばいいんだろう……。わたしも協力できるものなら、力になりたいのに)
「あのね紳一、伊織ちゃんはね……」
「小百合先輩!」
たまりかねて口を開いた小百合を、伊織は慌てて制した。
小百合は、バスケ部で唯一伊織の事情を知る存在だった。
当然、伊織が断るのはケガが原因だということも気付いている。
伊織に止められると、小百合は戸惑うように伊織を見た。
「伊織ちゃん、でも……」
伊織は黙って首を振る。
そうしてつかさに向き直ると、伊織は勢いよく体を半分に折り曲げた。
「ごめんなさい! わたし、なんと言われても協力することはできません。本当にごめんなさい……!」
しばらくその場を沈黙が包んだ。
伊織はどうしたものかと頭を悩ませた。
手が無意識に昔ケガを負った右肩を押さえる。
この肩のケガは、テニスの選手生命を奪っただけではなく、他のスポーツでも選手として競技することを不可能にしていた。
球技大会のように短期間であったり、趣味の範囲で競技することは可能だが、当然バレー部に入部などできるわけがない。
(でも、この肩のケガのことは言いたくないし……)
ぎゅっと肩を掴む手に力が入る。
「ねえ、それだったら夏の大会まででもいいわ。それまでバスケ部から助っ人ってことで、そのままバスケ部のマネージャーを続けててもいいから! ねえ、いいわよね、牧くん?」
「まあ、うちは構わないが、こういうのは本人が首を縦に振らないことにはな……。なあ、どうだ鈴村? ここまで言ってくれてるんだ、夏までの間バレー部でがんばってみないか?」
牧の言葉に伊織が弾かれたように顔を上げた。
それまで黙って見守っているだけだった小百合も驚いたように牧を見る。
まさか牧がつかさに助け舟を出すとは思わなかった。
伊織は小さく唇を噛んで下を向く。
「…………」
ショックだった。
もしかして、自分はマネージャーとして必要とされてないんじゃないだろうか。
(たしかにうちの部には小百合先輩もまりあちゃんもいるし、他にもしっかりしたマネージャーさんいるものね……)
海南大附属高校には、一年から三年まで合計六人のマネージャーがいた。
自分ひとり欠けたからと言って、きっとどうってことないだろう。
ましてや、この中でバスケを未経験なのは伊織だけだ。
他の人たちはみんな中学時代に選手、もしくはマネージャーとしてバスケに関わった人ばかりだった。
(やっぱりわたしは、ただのお荷物なのかも……)
選手としても機能できず、マネージャーとしても役に立たない。
なんて不要な存在。
目に見えて元気をなくした伊織の頭に、ぽんと温かくて大きな手が置かれた。
視線を上げると、牧が優しい笑顔で伊織の頭を撫でていた。
「安心しろ、鈴村。お前ももう俺たちの大切なマネージャーだ。辞めてもらったら困る。むしろ、うちにもちゃんと顔を出すというのが条件で助っ人として送り出すつもりなんだが……どうだ?」
提案としては悪くない。
きっと、伊織だってケガさえなければ、一も二もなく快諾していたはずだ。
でも……。
伊織は泣くのを堪えるような表情で俯いた。
(どうしよう。何て言えばいいんだろう……。わたしも協力できるものなら、力になりたいのに)
「あのね紳一、伊織ちゃんはね……」
「小百合先輩!」
たまりかねて口を開いた小百合を、伊織は慌てて制した。
小百合は、バスケ部で唯一伊織の事情を知る存在だった。
当然、伊織が断るのはケガが原因だということも気付いている。
伊織に止められると、小百合は戸惑うように伊織を見た。
「伊織ちゃん、でも……」
伊織は黙って首を振る。
そうしてつかさに向き直ると、伊織は勢いよく体を半分に折り曲げた。
「ごめんなさい! わたし、なんと言われても協力することはできません。本当にごめんなさい……!」
しばらくその場を沈黙が包んだ。