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「鈴村、お前にお客さんだぞ」
球技大会翌日。
平常どおりの授業を終えて、いつものように体育館でマネージャー業に励んでいた伊織は、突然牧にそう呼ばれた。
その声に、宗一郎や信長、まりあも何事かとそちらへ視線を向ける。
「え、わたしにですか?」
「そう、お前にだ」
「あ、彰さんですか?」
「いや、違う。まあ、いいから来い」
「?」
伊織は小首を傾げながら牧のもとへと向かった。
その隣りには困ったように微笑む小百合もいる。
自分にお客さんなんて誰だろう。
(教室になにか忘れ物でもしたかな?)
もしかしたらクラスメートがそれを届けにきてくれたのかもしれない。
思って伊織は小走りに牧のもとへと駆け寄り、お客さんの前に立った。
そこで、さらに困惑の色を深める。
(えっと……ほんとうに誰だろう)
肩口でまっすぐ切りそろえられたボブの黒髪に、大きな黒い瞳が印象的な美人だった。
でも、伊織はこんな人知らない。
伊織は上履きにちらりと視線をやった。
赤色だ。
三年生の学年カラーだった。
余計に伊織は眉間のしわを深くする。
三年生の知り合いなんて、男子バスケ部以外にはいない。
相手も伊織を見て、緊張したように直立している。
「えっと……」
どうすればいいんだろう。
何も言わない相手に、助けを求めるように伊織は牧を見た。
牧は伊織に苦笑してみせ、小百合がそのお客さんに口を開く。
「ほら、つかさ。伊織ちゃん来たわよ」
「あ、ああ、うん! そうね」
「あ、えと……はじめまして。鈴村伊織です」
伊織はどうしていいかわからずにとりあえず自己紹介した。
自分を訪ねて来た人に自己紹介するなんて奇妙極まりなかったけど、なにも話すことがなかったのだから仕方ない。
相手もそれを受けて、緊張が解けたようににこりと微笑む。
「わたし、34組の前橋つかさ。今日は、鈴村さんに折り入ってお願いがあってきたの」
「はあ、なんでしょうか……?」
「あのね、実は……あなたに、女子バレー部に入部して欲しいの!」
「――え。ええ!?」
驚いて伊織は後ずさった。
様子を窺っていた宗一郎や信長も、目を見開いてこちらを見ている。
すげー、本当に勧誘が来た……とぽつりと呟く信長の声が遠くで聞こえる。
つかさはたじろぐ伊織にぐいと身を乗り出してきた。
「昨日の決勝戦見て、もうあなたしかいないって思ったの! 今はまだ五月だし、いまから特訓していけばあなただったらうちのエース間違いなしよ!」
「あ、いや……でも、わたし、バスケ部辞めるつもりないんで……」
「そんなこと言わずにお願い! うちの部、毎年夏の大会で惜しいとこまで行くんだけど、後一歩で全国に手が届かなかったのよ! でも今年はいいコーチもついたし、そこにあなたが入部してくれれば、全国間違いなしだわ! ねえ、お願い伊織ちゃん! 全国大会出場は部員全員の夢なのよ!」
つかさがぎゅっと伊織の手を握った。
伊織はそれに困ったように眉根を下げる。
「あの、ほんとうに困ります。わたし、選手として運動部に所属するつもりないんです」
「どうして? だってあんなに上手いじゃない」
球技大会翌日。
平常どおりの授業を終えて、いつものように体育館でマネージャー業に励んでいた伊織は、突然牧にそう呼ばれた。
その声に、宗一郎や信長、まりあも何事かとそちらへ視線を向ける。
「え、わたしにですか?」
「そう、お前にだ」
「あ、彰さんですか?」
「いや、違う。まあ、いいから来い」
「?」
伊織は小首を傾げながら牧のもとへと向かった。
その隣りには困ったように微笑む小百合もいる。
自分にお客さんなんて誰だろう。
(教室になにか忘れ物でもしたかな?)
もしかしたらクラスメートがそれを届けにきてくれたのかもしれない。
思って伊織は小走りに牧のもとへと駆け寄り、お客さんの前に立った。
そこで、さらに困惑の色を深める。
(えっと……ほんとうに誰だろう)
肩口でまっすぐ切りそろえられたボブの黒髪に、大きな黒い瞳が印象的な美人だった。
でも、伊織はこんな人知らない。
伊織は上履きにちらりと視線をやった。
赤色だ。
三年生の学年カラーだった。
余計に伊織は眉間のしわを深くする。
三年生の知り合いなんて、男子バスケ部以外にはいない。
相手も伊織を見て、緊張したように直立している。
「えっと……」
どうすればいいんだろう。
何も言わない相手に、助けを求めるように伊織は牧を見た。
牧は伊織に苦笑してみせ、小百合がそのお客さんに口を開く。
「ほら、つかさ。伊織ちゃん来たわよ」
「あ、ああ、うん! そうね」
「あ、えと……はじめまして。鈴村伊織です」
伊織はどうしていいかわからずにとりあえず自己紹介した。
自分を訪ねて来た人に自己紹介するなんて奇妙極まりなかったけど、なにも話すことがなかったのだから仕方ない。
相手もそれを受けて、緊張が解けたようににこりと微笑む。
「わたし、34組の前橋つかさ。今日は、鈴村さんに折り入ってお願いがあってきたの」
「はあ、なんでしょうか……?」
「あのね、実は……あなたに、女子バレー部に入部して欲しいの!」
「――え。ええ!?」
驚いて伊織は後ずさった。
様子を窺っていた宗一郎や信長も、目を見開いてこちらを見ている。
すげー、本当に勧誘が来た……とぽつりと呟く信長の声が遠くで聞こえる。
つかさはたじろぐ伊織にぐいと身を乗り出してきた。
「昨日の決勝戦見て、もうあなたしかいないって思ったの! 今はまだ五月だし、いまから特訓していけばあなただったらうちのエース間違いなしよ!」
「あ、いや……でも、わたし、バスケ部辞めるつもりないんで……」
「そんなこと言わずにお願い! うちの部、毎年夏の大会で惜しいとこまで行くんだけど、後一歩で全国に手が届かなかったのよ! でも今年はいいコーチもついたし、そこにあなたが入部してくれれば、全国間違いなしだわ! ねえ、お願い伊織ちゃん! 全国大会出場は部員全員の夢なのよ!」
つかさがぎゅっと伊織の手を握った。
伊織はそれに困ったように眉根を下げる。
「あの、ほんとうに困ります。わたし、選手として運動部に所属するつもりないんです」
「どうして? だってあんなに上手いじゃない」