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その言葉に、宗一郎が驚いて伊織を見た。
伊織は宗一郎を見ることができなくて、目の前に広がる海をまっすぐに見ながら言葉を続ける。
「宗先輩は優しくてかっこよくて、みんなの憧れの的で……。わたしなんかただマネージャーやってたから話せてるだけで、本当はすっごい宗先輩との距離は遠いんだなぁって、実感しちゃいました……」
「…………」
ふいに右手が温かいぬくもりで包まれた。
驚いて振りむくと、宗一郎が伊織の右手を両手で包み込んでいた。
「そそ、宗先輩!?」
「伊織ちゃん、俺のこと感じる?」
「え?」
宗一郎の触れている部分から、どんどんと熱が全身に広がっていく。
心臓がバクバクと音を立てる。
顔が熱い。
「俺の体温とか、声とか、込める力とか」
言って宗一郎は伊織の手を包む力を少しだけ強める。
「感じる?」
「はは、はい」
「これじゃあだめかな」
「え?」
「伊織ちゃんの感じてるその距離って心理的なものだから……言葉でどう埋めてあげたらいいかわからないけど……。でも、伊織ちゃんが今感じたことが真実だから。俺は、伊織ちゃんが俺を感じれるくらいすぐそばにいる」
「……宗先輩」
「だから、俺が遠いなんて思わないで。俺はいつでも伊織ちゃんのすぐそばいる。体だけじゃなくて、気持ちもいつもそばにいるから。だからわからなくなったらすぐに呼んで。何度だって俺が近くにいるってことわからせてあげるから。……それに、ほんというと俺も同じなんだ」
「同じ……?」
宗一郎は伊織の手から自分の手を離すと、その顔をじっと見つめた。
宗一郎の黒曜石の瞳に見つめられて、伊織のからだが金縛りにあったように動けなくなる。
「うん。――俺も、体育館で全校生徒の声援を一身に浴びてる伊織ちゃんを見て、伊織ちゃんをすごく遠くに感じたんだ」
「え」
「それに、伊織ちゃんがあんなに運動神経良いのも知らなかったし、伊織ちゃんとの距離を思い知らされた」
淋しそうにそう言う宗一郎に、今度は伊織が離れていった宗一郎の手をきゅっと掴んだ。
宗一郎の瞳が、小さく見開く。
「宗先輩にとっても、これが真実です。わたしがそばにいること、感じますか?」
言って、伊織はぎゅっと宗一郎の大きな手を、自分の両手で包み込む。
宗一郎の手は大きくて、伊織の手じゃ完全には覆いきれないけれど、すこしでもたしかなぬくもりが伝えられるように、伊織はぎゅっと力を込める。
「はは、うん。感じる……」
宗一郎が目を閉じてそう言ったとき、突然後ろのほうからにぎやかな声が聞こえてきた。
「あー、神さん! こんなところで何やってんすか! あっ、伊織まで!! ずっりーぞ伊織、神さんひとり占めしてたなんて!」
「宗ちゃん、伊織ちゃん! えええ二人きりでなにやってるの~!?」
「いつも元気だねノブ、まりあ。うちのクラスも海で打ち上げやっててね。ふらふら散歩してたらここにいる伊織ちゃんを偶然見かけたんだ」
言って、宗一郎はさりげなく伊織から手を離すと、二人のもとへと歩いていった。
伊織はひとり、たった今まで宗一郎と触れていた手をじっと眺めた。
まだすこし、宗一郎のぬくもりが残っている。
どうしよう。
胸が焼け付くように熱い。
伊織は心臓のあたりをぎゅっと掴んだ。
(好き。宗先輩、好き)
いつのまにか宗一郎を好きな気持ちが積って。
こんなにも溢れてしまっている。
その姿を見るだけで、その声を聞くだけで、その手に触れるだけで、心臓が大きく脈打つ。
体中の細胞ひとつひとつが、宗一郎が好きだって叫びだす。
でも、まだその気持ちは伝えられない。
(今は、まだ言えないけど……)
いつか。
いつか仙道とのことがはっきりとしたら。
この気持ちを伝えることができるだろうか……。
伊織はその場にじっと佇んで、はしゃぐ信長とまりあを保護者のように優しく見守る宗一郎を見つめた。
その宗一郎が振り返って、まだぼーっと突っ立ったままの伊織に笑いながら手を差し出す。
「ほら、何やってるの伊織ちゃん。おいで」
「はいっ!」
伊織はそれに元気良く笑い返すと、そっとその手を取った。
To be continued…
伊織は宗一郎を見ることができなくて、目の前に広がる海をまっすぐに見ながら言葉を続ける。
「宗先輩は優しくてかっこよくて、みんなの憧れの的で……。わたしなんかただマネージャーやってたから話せてるだけで、本当はすっごい宗先輩との距離は遠いんだなぁって、実感しちゃいました……」
「…………」
ふいに右手が温かいぬくもりで包まれた。
驚いて振りむくと、宗一郎が伊織の右手を両手で包み込んでいた。
「そそ、宗先輩!?」
「伊織ちゃん、俺のこと感じる?」
「え?」
宗一郎の触れている部分から、どんどんと熱が全身に広がっていく。
心臓がバクバクと音を立てる。
顔が熱い。
「俺の体温とか、声とか、込める力とか」
言って宗一郎は伊織の手を包む力を少しだけ強める。
「感じる?」
「はは、はい」
「これじゃあだめかな」
「え?」
「伊織ちゃんの感じてるその距離って心理的なものだから……言葉でどう埋めてあげたらいいかわからないけど……。でも、伊織ちゃんが今感じたことが真実だから。俺は、伊織ちゃんが俺を感じれるくらいすぐそばにいる」
「……宗先輩」
「だから、俺が遠いなんて思わないで。俺はいつでも伊織ちゃんのすぐそばいる。体だけじゃなくて、気持ちもいつもそばにいるから。だからわからなくなったらすぐに呼んで。何度だって俺が近くにいるってことわからせてあげるから。……それに、ほんというと俺も同じなんだ」
「同じ……?」
宗一郎は伊織の手から自分の手を離すと、その顔をじっと見つめた。
宗一郎の黒曜石の瞳に見つめられて、伊織のからだが金縛りにあったように動けなくなる。
「うん。――俺も、体育館で全校生徒の声援を一身に浴びてる伊織ちゃんを見て、伊織ちゃんをすごく遠くに感じたんだ」
「え」
「それに、伊織ちゃんがあんなに運動神経良いのも知らなかったし、伊織ちゃんとの距離を思い知らされた」
淋しそうにそう言う宗一郎に、今度は伊織が離れていった宗一郎の手をきゅっと掴んだ。
宗一郎の瞳が、小さく見開く。
「宗先輩にとっても、これが真実です。わたしがそばにいること、感じますか?」
言って、伊織はぎゅっと宗一郎の大きな手を、自分の両手で包み込む。
宗一郎の手は大きくて、伊織の手じゃ完全には覆いきれないけれど、すこしでもたしかなぬくもりが伝えられるように、伊織はぎゅっと力を込める。
「はは、うん。感じる……」
宗一郎が目を閉じてそう言ったとき、突然後ろのほうからにぎやかな声が聞こえてきた。
「あー、神さん! こんなところで何やってんすか! あっ、伊織まで!! ずっりーぞ伊織、神さんひとり占めしてたなんて!」
「宗ちゃん、伊織ちゃん! えええ二人きりでなにやってるの~!?」
「いつも元気だねノブ、まりあ。うちのクラスも海で打ち上げやっててね。ふらふら散歩してたらここにいる伊織ちゃんを偶然見かけたんだ」
言って、宗一郎はさりげなく伊織から手を離すと、二人のもとへと歩いていった。
伊織はひとり、たった今まで宗一郎と触れていた手をじっと眺めた。
まだすこし、宗一郎のぬくもりが残っている。
どうしよう。
胸が焼け付くように熱い。
伊織は心臓のあたりをぎゅっと掴んだ。
(好き。宗先輩、好き)
いつのまにか宗一郎を好きな気持ちが積って。
こんなにも溢れてしまっている。
その姿を見るだけで、その声を聞くだけで、その手に触れるだけで、心臓が大きく脈打つ。
体中の細胞ひとつひとつが、宗一郎が好きだって叫びだす。
でも、まだその気持ちは伝えられない。
(今は、まだ言えないけど……)
いつか。
いつか仙道とのことがはっきりとしたら。
この気持ちを伝えることができるだろうか……。
伊織はその場にじっと佇んで、はしゃぐ信長とまりあを保護者のように優しく見守る宗一郎を見つめた。
その宗一郎が振り返って、まだぼーっと突っ立ったままの伊織に笑いながら手を差し出す。
「ほら、何やってるの伊織ちゃん。おいで」
「はいっ!」
伊織はそれに元気良く笑い返すと、そっとその手を取った。
To be continued…