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試合は結局34組が勝った。
コート内では34組の面々が集まってサッカーチームに賞賛の声を浴びせている。
小百合もその中へと混じっていった。
それを横目で見ながら、試合を終えた宗一郎がのんびりこちらへと歩いてきた。
周囲の女子はそれを熱心に目で追いかけている。
まりあは宗一郎に駆け寄ると、ぴょんとその胸に抱きついた。
ふたたび巻き起こる悲鳴。
「宗ちゃん、お疲れさまっ! すっごくすっごくかっこよかったよ!」
「ありがとまりあ。でも牧さんに負けちゃったけどね」
言いながら、宗一郎はまりあを自分の体から離す。
「いや、でもほんとカッコよかったっスよ、神さん! とくにあのシュート! うおお~、今思い出してもシビれるぜっ!」
「ははっ。ほんとうは勝ちたかったけどね」
「でも、宗先輩すごく活躍してて……ほんとうにとても、かっこよかったです」
手の届かない存在なんだって実感して、切なくなるほどに。
淋しげに笑う伊織に、宗一郎が不思議そうに首をかしげる。
「伊織ちゃん?」
とそのとき。
「伊織~! まりあちゃ~ん!」
同じ女子バレーチームの中原舞子の声が聞こえた。
伊織は声のしたほうに振り返る。
「舞ちゃん?」
「こ、ここにいたか……! 探し回っちゃったわよもう! もうすぐ集合時間だよ、早く体育館に移動して! ほら、まりあちゃんも……ってうわあ、神先輩!」
肩で息をしながら言っていた舞子が、宗一郎に気付いて顔を赤くして飛び退いた。
それをおかしそうに笑いながら、宗一郎が口を開く。
「はは、はじめまして。まりあと伊織ちゃんの友達? これから試合なの?」
「あ、そそそうなんです! わたし、中原舞子っていいます。これから女子バレーの決勝戦で、わたしたち勝ちあがってて……よ、よかったら神先輩も見に来てください! あの、わたしすごくがんばりますんで!」
きらきらと顔を輝かせて言う舞子に、宗一郎が優しく笑う。
「はは、元気良いね」
それだけがとりえですから、と舞子が宗一郎に力こぶを作って見せる。
それを見て宗一郎がまた楽しそうに笑った。
まりあがそんな宗一郎と舞子の間に怒って割って入っている。
伊織はそれをぼんやり眺めながら、自分の胸が痛く締め付けられたようになるのを感じた。
ほら、やっぱり。
頭のどこかで声がする。
(宗先輩が優しいのは、わたしだからじゃない。宗先輩は、みんなに優しいんだ……)
みんなに向けられる、宗一郎の優しい笑顔。声。ぬくもり。
わたしだけが、特別じゃない。
(そんなの……いや……)
だけど、自分にはそれを言う権利もない。
だって、自分はただのマネージャーだから。
胸がぎゅっと縮まる。苦しい。息が吸えない。
そんな優しい瞳で、他の人に微笑まないで。
他の人を見つめないで。
「――あ、じゃあわたし、先に行ってるね」
(こんな醜いことを考えているの、知られたくない……)
コート内では34組の面々が集まってサッカーチームに賞賛の声を浴びせている。
小百合もその中へと混じっていった。
それを横目で見ながら、試合を終えた宗一郎がのんびりこちらへと歩いてきた。
周囲の女子はそれを熱心に目で追いかけている。
まりあは宗一郎に駆け寄ると、ぴょんとその胸に抱きついた。
ふたたび巻き起こる悲鳴。
「宗ちゃん、お疲れさまっ! すっごくすっごくかっこよかったよ!」
「ありがとまりあ。でも牧さんに負けちゃったけどね」
言いながら、宗一郎はまりあを自分の体から離す。
「いや、でもほんとカッコよかったっスよ、神さん! とくにあのシュート! うおお~、今思い出してもシビれるぜっ!」
「ははっ。ほんとうは勝ちたかったけどね」
「でも、宗先輩すごく活躍してて……ほんとうにとても、かっこよかったです」
手の届かない存在なんだって実感して、切なくなるほどに。
淋しげに笑う伊織に、宗一郎が不思議そうに首をかしげる。
「伊織ちゃん?」
とそのとき。
「伊織~! まりあちゃ~ん!」
同じ女子バレーチームの中原舞子の声が聞こえた。
伊織は声のしたほうに振り返る。
「舞ちゃん?」
「こ、ここにいたか……! 探し回っちゃったわよもう! もうすぐ集合時間だよ、早く体育館に移動して! ほら、まりあちゃんも……ってうわあ、神先輩!」
肩で息をしながら言っていた舞子が、宗一郎に気付いて顔を赤くして飛び退いた。
それをおかしそうに笑いながら、宗一郎が口を開く。
「はは、はじめまして。まりあと伊織ちゃんの友達? これから試合なの?」
「あ、そそそうなんです! わたし、中原舞子っていいます。これから女子バレーの決勝戦で、わたしたち勝ちあがってて……よ、よかったら神先輩も見に来てください! あの、わたしすごくがんばりますんで!」
きらきらと顔を輝かせて言う舞子に、宗一郎が優しく笑う。
「はは、元気良いね」
それだけがとりえですから、と舞子が宗一郎に力こぶを作って見せる。
それを見て宗一郎がまた楽しそうに笑った。
まりあがそんな宗一郎と舞子の間に怒って割って入っている。
伊織はそれをぼんやり眺めながら、自分の胸が痛く締め付けられたようになるのを感じた。
ほら、やっぱり。
頭のどこかで声がする。
(宗先輩が優しいのは、わたしだからじゃない。宗先輩は、みんなに優しいんだ……)
みんなに向けられる、宗一郎の優しい笑顔。声。ぬくもり。
わたしだけが、特別じゃない。
(そんなの……いや……)
だけど、自分にはそれを言う権利もない。
だって、自分はただのマネージャーだから。
胸がぎゅっと縮まる。苦しい。息が吸えない。
そんな優しい瞳で、他の人に微笑まないで。
他の人を見つめないで。
「――あ、じゃあわたし、先に行ってるね」
(こんな醜いことを考えているの、知られたくない……)