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「でも、仙道さんは伊織ちゃんのこと好きなんでしょ?」
もごもごという伊織に、まりあがきゃるんとした調子で言葉を挟む。
それに伊織がげっそりと肩を落とした。
「うん……。いや、断ってるんだけど! わたしはもう友達ですって言ってるし、もう好きじゃないって言ってるのに全然諦めてくれなくて……」
「「もう?」」
その言葉に、信長とまりあがぴくりと反応を示す。
「え、もうってどういうこと!? やっぱり伊織ちゃん仙道さんと付き合ってたの!?」
「お前、ただの中学の先輩と後輩だなんて言っといてやっぱり……!」
「わああ、違う違う! 本当に付き合ってないって。ただ……」
言いにくそうに言葉を濁す伊織に、信長とまりあが詰め寄る。
「「ただ?」」
「……昔、好きだったの。彰さんのこと。彰さんも、その……わたしのこと好いてくれてて……」
伊織が複雑な表情でそう漏らす。
信長は衝撃に顔をゆがめ、まりあは喜びに顔を輝かせた。
その両者両様の反応に、伊織はウッと一瞬たじろいで、すぐに気を取り直すように咳払いをする。
「だけど、今はもうなんとも思ってないから! 彰さんにもそれははっきりきっぱり言ってあるし! 交友関係復活するのは友人としてだって言うのもちゃあんと言ってありますから!」
「つーかなんとも思ってないのはお前だけだろ! 向こうはまだお前のこと好きなんだから、こういうのははっきり縁を切るのが一番いいんだよ、いますぐそうしろよ」
「えー、まりあはそんなことする必要ないと思うな! もう一回仙道さんに恋に落ちちゃうってこともあるかもしれないし」
「いや、それはないよ」
嬉しそうに言うまりあの言葉を、伊織はばっさり切り捨てる。
まりあはそれに不満げに伊織をにらみつけた。
「なんでよ」
「なんでって……」
もともと、仙道と伊織は、全中大会で三連覇できなければ終わりにするという約束だったのだ。
いや、それでももし。三連覇を達成できないだけだったら、伊織はなんらかの形で仙道と連絡を取って、もう一度仙道の隣りに立てるようがんばらせて欲しいと伝えていたかもしれない。
たとえば仙道は前に進み始めていたとしても、勝手に追いかける権利を請いに行っていたはずだ。
それほどまでに、伊織は仙道が好きだったから。
でも、そのテニスすらもなくなってしまって、それ以外になにも持たない自分を愕然と思い知って。
とても、仙道の隣りに自分は並べないと思った。
かっこよくて、優しくて、人望があって、男にも女にも人気の仙道。
そんな仙道とのたったひとつの大切な約束を果たせないどころか、全てを失って抜け殻のような自分が、いったいどんな顔して仙道に会えばいいというのだろう。
どんな顔をして、まだ好きでいることを許して欲しいといえばいいのだろうか。
きっともう、仙道は幻滅しているに違いない。
仙道は、テニスという存在意義を手にして自信に溢れていた鈴村伊織を好きになってくれたのだ。
自信も生きる意味も全て見失ったこんな変わり果てた自分には、愛想を尽かせているに決まっている。
そんなことを考えて、結局はいつも、自分はもう仙道と会う資格はないという結論に至る。
だからこそ、伊織は仙道への気持ちを死に物狂いで忘れたのだ。
仙道にとって自分の存在はもう邪魔になるだけだ。
きっと仙道ももうとっくに自分のことなんか忘れてる。
ああ、あの約束ダメだったかって前に進み始めてる。
だから、わたしが邪魔しちゃいけない。仙道の輝く未来を、わたしが汚すようなことをしたらいけないんだ。
(そう思って、必死に忘れたんだもの……)
だから。
「わたしがもう一度彰さんのこと好きになるなんて、ありえないことなの。それに、彰さんを避けてもやっぱりなんにも解決にならない。だって、今まで彰さんは気持ちを忘れずにいてくれてたんだもん。……うやむやにしてちゃいけないのよ」
もごもごという伊織に、まりあがきゃるんとした調子で言葉を挟む。
それに伊織がげっそりと肩を落とした。
「うん……。いや、断ってるんだけど! わたしはもう友達ですって言ってるし、もう好きじゃないって言ってるのに全然諦めてくれなくて……」
「「もう?」」
その言葉に、信長とまりあがぴくりと反応を示す。
「え、もうってどういうこと!? やっぱり伊織ちゃん仙道さんと付き合ってたの!?」
「お前、ただの中学の先輩と後輩だなんて言っといてやっぱり……!」
「わああ、違う違う! 本当に付き合ってないって。ただ……」
言いにくそうに言葉を濁す伊織に、信長とまりあが詰め寄る。
「「ただ?」」
「……昔、好きだったの。彰さんのこと。彰さんも、その……わたしのこと好いてくれてて……」
伊織が複雑な表情でそう漏らす。
信長は衝撃に顔をゆがめ、まりあは喜びに顔を輝かせた。
その両者両様の反応に、伊織はウッと一瞬たじろいで、すぐに気を取り直すように咳払いをする。
「だけど、今はもうなんとも思ってないから! 彰さんにもそれははっきりきっぱり言ってあるし! 交友関係復活するのは友人としてだって言うのもちゃあんと言ってありますから!」
「つーかなんとも思ってないのはお前だけだろ! 向こうはまだお前のこと好きなんだから、こういうのははっきり縁を切るのが一番いいんだよ、いますぐそうしろよ」
「えー、まりあはそんなことする必要ないと思うな! もう一回仙道さんに恋に落ちちゃうってこともあるかもしれないし」
「いや、それはないよ」
嬉しそうに言うまりあの言葉を、伊織はばっさり切り捨てる。
まりあはそれに不満げに伊織をにらみつけた。
「なんでよ」
「なんでって……」
もともと、仙道と伊織は、全中大会で三連覇できなければ終わりにするという約束だったのだ。
いや、それでももし。三連覇を達成できないだけだったら、伊織はなんらかの形で仙道と連絡を取って、もう一度仙道の隣りに立てるようがんばらせて欲しいと伝えていたかもしれない。
たとえば仙道は前に進み始めていたとしても、勝手に追いかける権利を請いに行っていたはずだ。
それほどまでに、伊織は仙道が好きだったから。
でも、そのテニスすらもなくなってしまって、それ以外になにも持たない自分を愕然と思い知って。
とても、仙道の隣りに自分は並べないと思った。
かっこよくて、優しくて、人望があって、男にも女にも人気の仙道。
そんな仙道とのたったひとつの大切な約束を果たせないどころか、全てを失って抜け殻のような自分が、いったいどんな顔して仙道に会えばいいというのだろう。
どんな顔をして、まだ好きでいることを許して欲しいといえばいいのだろうか。
きっともう、仙道は幻滅しているに違いない。
仙道は、テニスという存在意義を手にして自信に溢れていた鈴村伊織を好きになってくれたのだ。
自信も生きる意味も全て見失ったこんな変わり果てた自分には、愛想を尽かせているに決まっている。
そんなことを考えて、結局はいつも、自分はもう仙道と会う資格はないという結論に至る。
だからこそ、伊織は仙道への気持ちを死に物狂いで忘れたのだ。
仙道にとって自分の存在はもう邪魔になるだけだ。
きっと仙道ももうとっくに自分のことなんか忘れてる。
ああ、あの約束ダメだったかって前に進み始めてる。
だから、わたしが邪魔しちゃいけない。仙道の輝く未来を、わたしが汚すようなことをしたらいけないんだ。
(そう思って、必死に忘れたんだもの……)
だから。
「わたしがもう一度彰さんのこと好きになるなんて、ありえないことなの。それに、彰さんを避けてもやっぱりなんにも解決にならない。だって、今まで彰さんは気持ちを忘れずにいてくれてたんだもん。……うやむやにしてちゃいけないのよ」