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今日は、海南大附属高校春の球技大会の日。
各学年全8クラス、計24クラス対抗で、それぞれの種目ごとに優勝クラスを決める、いわば全校対抗の学校行事である。
春の球技大会の種目は、サッカー、卓球、バレーの三つである。
それぞれ各男女別に1チームずつに分かれて、トーナメント形式で進んでいく。
なので、一種目男女合計48チーム。三種目だと計144チームにもなる。
伊織とまりあはバレー、信長はサッカーにエントリーしていた。
すでにジャージにも着替え終わり、このときのためにクラスで買い揃えた学年カラーの青色の鉢巻を伊織は二の腕に巻いた。
これで準備オッケーだ。
「おーい準備できたかー、お前ら!」
ちょうどそのとき、担任の松本が教室へ入ってきた。
いつものスーツ姿ではなく、今日は珍しくジャージに身を包んでいる。
それに、生徒からおおっと歓声が上がる。
「先生、ジャージ着てる~!」
「はは、もちろんだ。俺は勝負事が好きだ。そして勝つのが好きだ。なぜなら気持ちがいいから! というわけで、お前ら。絶対勝て。どの種目でもいい、1チームでも優勝したらクラス全員に缶ジュースをおごってやる」
独特の論理をふりかざす松本にクラスのみんなは呆れたようにはやしたてつつも、松本のご褒美宣言に歓声が一層沸いた。
「うおー、マジで!? でもセンセー、ジュースじゃなくて焼肉とかがいいっスよー!」
信長のその言葉に、松本が眉をしかめる。
「バカ言え。清田、お前焼肉なんて行ってみろ、ひとり約五千円だとして全四十人で計二十万だ! 俺は破産する。不満があるならお前ら全員で俺に焼肉おごれ」
「あはは、先生それじゃあ意味わかんないっすよ」
「だろ? だから、ジュースで我慢しろ。……まあ、こんなことで必死になれるのなんて今だけだぞ? 大人になったらやりたくてもできなくなっちまうんだから、できるときにくだらないと言ってバカにせず全力で取り組め。そして優勝して俺にいい思いさせろ」
最後のその言葉で、途中まで真剣に聞き入っていた生徒たちががっくりとうなだれた。
なんだよせんせー、結局それかよーという信長に、松本は大真面目な顔で当たり前だ、と返している。
伊織はそれを見て笑い声をあげた。
結構傍若無人なことを言っているようで、松本は一番大事なものをちゃんと教えてくれている気がする。
松本は一見興味ない風を装いながらも、ちゃんと生徒のことを一番に考えてくれている。
こんなむちゃくちゃで、でも頼れる先生はきっと他にいないだろう。
(担任が松本先生でよかったな)
伊織は信長とぎゃあぎゃあ言い合う松本を見て心からそう思った。
そのとき、伊織の手元で携帯が震えた。
誰からだろうと折りたたみ式の携帯電話を開けて、メールを開く。
差出人に、仙道彰の名前。
「あ、彰さんからメールだ」
その呟きに、信長とまりあが寄ってきた。
「なに、センドーから!?」
「うん。なんだろー?」
伊織は返事をしながらメールを開く。
『伊織ちゃん、おはよう! 今日は確か球技大会だよね。伊織ちゃんはなんの種目に参加するの? あー、伊織ちゃんが華麗にプレーする姿見たかったな。応援に行けないのがすごく残念だけど、優勝目指してがんばってね!』
文面に目を通し、伊織がやさしく微笑む。
「あはは、球技大会がんばってだって。よし、返信しよう。ありがとうございます……っと」
鼻歌まじりにメールを作成する伊織を見て、信長が不機嫌そうに眉根を寄せる。
「なんだよ、すっかりセンドーと仲良しだな伊織。あんなにイヤがってたクセに……」
「うーん、まあ、もともとわたしたちって仲良かったから。……それに、わたしが彰さんを避けてたのも、彰さんには全然原因ないし、むしろこっちの都合でかなりひどいことしてたっていうか……」
各学年全8クラス、計24クラス対抗で、それぞれの種目ごとに優勝クラスを決める、いわば全校対抗の学校行事である。
春の球技大会の種目は、サッカー、卓球、バレーの三つである。
それぞれ各男女別に1チームずつに分かれて、トーナメント形式で進んでいく。
なので、一種目男女合計48チーム。三種目だと計144チームにもなる。
伊織とまりあはバレー、信長はサッカーにエントリーしていた。
すでにジャージにも着替え終わり、このときのためにクラスで買い揃えた学年カラーの青色の鉢巻を伊織は二の腕に巻いた。
これで準備オッケーだ。
「おーい準備できたかー、お前ら!」
ちょうどそのとき、担任の松本が教室へ入ってきた。
いつものスーツ姿ではなく、今日は珍しくジャージに身を包んでいる。
それに、生徒からおおっと歓声が上がる。
「先生、ジャージ着てる~!」
「はは、もちろんだ。俺は勝負事が好きだ。そして勝つのが好きだ。なぜなら気持ちがいいから! というわけで、お前ら。絶対勝て。どの種目でもいい、1チームでも優勝したらクラス全員に缶ジュースをおごってやる」
独特の論理をふりかざす松本にクラスのみんなは呆れたようにはやしたてつつも、松本のご褒美宣言に歓声が一層沸いた。
「うおー、マジで!? でもセンセー、ジュースじゃなくて焼肉とかがいいっスよー!」
信長のその言葉に、松本が眉をしかめる。
「バカ言え。清田、お前焼肉なんて行ってみろ、ひとり約五千円だとして全四十人で計二十万だ! 俺は破産する。不満があるならお前ら全員で俺に焼肉おごれ」
「あはは、先生それじゃあ意味わかんないっすよ」
「だろ? だから、ジュースで我慢しろ。……まあ、こんなことで必死になれるのなんて今だけだぞ? 大人になったらやりたくてもできなくなっちまうんだから、できるときにくだらないと言ってバカにせず全力で取り組め。そして優勝して俺にいい思いさせろ」
最後のその言葉で、途中まで真剣に聞き入っていた生徒たちががっくりとうなだれた。
なんだよせんせー、結局それかよーという信長に、松本は大真面目な顔で当たり前だ、と返している。
伊織はそれを見て笑い声をあげた。
結構傍若無人なことを言っているようで、松本は一番大事なものをちゃんと教えてくれている気がする。
松本は一見興味ない風を装いながらも、ちゃんと生徒のことを一番に考えてくれている。
こんなむちゃくちゃで、でも頼れる先生はきっと他にいないだろう。
(担任が松本先生でよかったな)
伊織は信長とぎゃあぎゃあ言い合う松本を見て心からそう思った。
そのとき、伊織の手元で携帯が震えた。
誰からだろうと折りたたみ式の携帯電話を開けて、メールを開く。
差出人に、仙道彰の名前。
「あ、彰さんからメールだ」
その呟きに、信長とまりあが寄ってきた。
「なに、センドーから!?」
「うん。なんだろー?」
伊織は返事をしながらメールを開く。
『伊織ちゃん、おはよう! 今日は確か球技大会だよね。伊織ちゃんはなんの種目に参加するの? あー、伊織ちゃんが華麗にプレーする姿見たかったな。応援に行けないのがすごく残念だけど、優勝目指してがんばってね!』
文面に目を通し、伊織がやさしく微笑む。
「あはは、球技大会がんばってだって。よし、返信しよう。ありがとうございます……っと」
鼻歌まじりにメールを作成する伊織を見て、信長が不機嫌そうに眉根を寄せる。
「なんだよ、すっかりセンドーと仲良しだな伊織。あんなにイヤがってたクセに……」
「うーん、まあ、もともとわたしたちって仲良かったから。……それに、わたしが彰さんを避けてたのも、彰さんには全然原因ないし、むしろこっちの都合でかなりひどいことしてたっていうか……」