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中途半端に終わってしまうことの怖さを、知ってるから。
だから……。
「伊織ちゃん。オレ、頑張るから。オレ、まだ諦めないよ。もう一度いちから……ううん、ぜろから振り向いてもらえるように、頑張るから」
だから。どうかチャンスを奪わないで。
祈る気持ちで仙道が伊織をじっと見つめていると、ふいに伊織の瞳が細められた。
仙道は驚いたようにそれを見つめる。
伊織は涙の浮かんだ瞳をそのままに、にこりと微笑んだ。
「ほんとうに、あきらめが悪いですね。彰さんは……」
小さく笑いながらそういう伊織に、仙道も泣きたいような笑いたいような気持ちになって頬をゆるめた。
ダメだ。涙がこぼれそうだ。
でも、伊織にそんなとこ見せたくない。
思って仙道はもう一度気合を入れなおし、微笑んでみせた。
「はは。オレがあきらめが悪いのは、伊織ちゃんにだけだよ」
「…………でも、わたしは友人として付き合いますからね。恋愛感情はないですからね。一切全く微塵もですよ!」
「はは、きびしいなあ。……でもオレ、負けないよ」
強い決意をのせて言うと、伊織が驚いて目を瞠って、疲れたように視線をそらす。
「あんまり頑張らないでください……」
「ははは!」
げっそりとそういう伊織に、仙道は声をだして笑った。
伊織は優しいウソをついたりなんかしない。
少しでも期待を持たせたりしたほうが、よっぽどあとでツライ思いをさせるんだってことをきちんと理解しているから。
それでもよかった。一度見捨てた自分に、伊織は笑ってチャンスをくれた。
「ありがとう、伊織ちゃん。大好きだよ」
「わたしも、友人として大好きです」
「えー、真ん中の言葉消してよ」
「やですよ!」
「えー、いいじゃん伊織ちゃん! 一回だけ!」
お願い! としつこく食い下がる仙道に、伊織が意地悪く笑う。
「友情復活宣言、撤回しましょうか」
「わーうそうそ! ごめん! いいよ、友達としてでもいいですごめんなさい!」
「反省したなら許してあげます」
「うん、海より高く山より深く反省した」
「……つまり、全然反省してないってことですか」
眉根を寄せて言う伊織に、仙道は慌てて訂正する。
「違う違う間違えた! 海より深く山より高く反省してます!」
「……なら、いいですけど」
まだ難しい顔で言う伊織に、仙道は表情をあらためてその顔をまっすぐ見つめた。
伊織も、真剣にその瞳を見つめ返す。
「……伊織ちゃん、辛いこと思い出させてごめんね」
伊織が優しく微笑んでふるふると首を振る。
「わたしのほうこそ、逃げて彰さんを傷つけてごめんなさい」
しばらくの間ふたりは黙って見つめあうと、どちらからともなく笑みを零した。
「はは、仲直りだ」
「はい」
「さー、これからだなー。どうやって伊織ちゃんを振り向かせよっかな~」
「だから! さっきも言ったけど、頑張らないでくださいってば」
「いーじゃん好きなんだもん。オレ、絶対諦めないからね」
「あーもー、そうですか……」
伊織はがっくりしたようにうなだれた。
仙道は楽しい気分になってそれを見て、さっき倒してしまった伊織の自転車を起こした。
そのことを伊織に謝って、再び自転車を押して二人並んで歩き出す。
「伊織ちゃん、今度二人で映画行こっか」
「行きません」
「忍者活劇なんだけど、オレ前売り特典のマキビシ付きチケット持ってるんだよね」
「!! マ、マキビシ……!? じ、じゃあみんなで……」
「ダーメ。二人じゃないなら、マキビシはあげないよ」
「!!! うう、ち、ちょっと数日考えさせてください……」
「あはは! いいよ、またメールするね」
うう、マキビシ……マキビシ……とぶつぶつ言う伊織に笑みを零しながら、仙道は空を見上げた。
星が明るく輝いて、月が優しい光を放っている。
やっと、スタートラインに立つことができた。
勝負はこれからだ。
To be continued…
だから……。
「伊織ちゃん。オレ、頑張るから。オレ、まだ諦めないよ。もう一度いちから……ううん、ぜろから振り向いてもらえるように、頑張るから」
だから。どうかチャンスを奪わないで。
祈る気持ちで仙道が伊織をじっと見つめていると、ふいに伊織の瞳が細められた。
仙道は驚いたようにそれを見つめる。
伊織は涙の浮かんだ瞳をそのままに、にこりと微笑んだ。
「ほんとうに、あきらめが悪いですね。彰さんは……」
小さく笑いながらそういう伊織に、仙道も泣きたいような笑いたいような気持ちになって頬をゆるめた。
ダメだ。涙がこぼれそうだ。
でも、伊織にそんなとこ見せたくない。
思って仙道はもう一度気合を入れなおし、微笑んでみせた。
「はは。オレがあきらめが悪いのは、伊織ちゃんにだけだよ」
「…………でも、わたしは友人として付き合いますからね。恋愛感情はないですからね。一切全く微塵もですよ!」
「はは、きびしいなあ。……でもオレ、負けないよ」
強い決意をのせて言うと、伊織が驚いて目を瞠って、疲れたように視線をそらす。
「あんまり頑張らないでください……」
「ははは!」
げっそりとそういう伊織に、仙道は声をだして笑った。
伊織は優しいウソをついたりなんかしない。
少しでも期待を持たせたりしたほうが、よっぽどあとでツライ思いをさせるんだってことをきちんと理解しているから。
それでもよかった。一度見捨てた自分に、伊織は笑ってチャンスをくれた。
「ありがとう、伊織ちゃん。大好きだよ」
「わたしも、友人として大好きです」
「えー、真ん中の言葉消してよ」
「やですよ!」
「えー、いいじゃん伊織ちゃん! 一回だけ!」
お願い! としつこく食い下がる仙道に、伊織が意地悪く笑う。
「友情復活宣言、撤回しましょうか」
「わーうそうそ! ごめん! いいよ、友達としてでもいいですごめんなさい!」
「反省したなら許してあげます」
「うん、海より高く山より深く反省した」
「……つまり、全然反省してないってことですか」
眉根を寄せて言う伊織に、仙道は慌てて訂正する。
「違う違う間違えた! 海より深く山より高く反省してます!」
「……なら、いいですけど」
まだ難しい顔で言う伊織に、仙道は表情をあらためてその顔をまっすぐ見つめた。
伊織も、真剣にその瞳を見つめ返す。
「……伊織ちゃん、辛いこと思い出させてごめんね」
伊織が優しく微笑んでふるふると首を振る。
「わたしのほうこそ、逃げて彰さんを傷つけてごめんなさい」
しばらくの間ふたりは黙って見つめあうと、どちらからともなく笑みを零した。
「はは、仲直りだ」
「はい」
「さー、これからだなー。どうやって伊織ちゃんを振り向かせよっかな~」
「だから! さっきも言ったけど、頑張らないでくださいってば」
「いーじゃん好きなんだもん。オレ、絶対諦めないからね」
「あーもー、そうですか……」
伊織はがっくりしたようにうなだれた。
仙道は楽しい気分になってそれを見て、さっき倒してしまった伊織の自転車を起こした。
そのことを伊織に謝って、再び自転車を押して二人並んで歩き出す。
「伊織ちゃん、今度二人で映画行こっか」
「行きません」
「忍者活劇なんだけど、オレ前売り特典のマキビシ付きチケット持ってるんだよね」
「!! マ、マキビシ……!? じ、じゃあみんなで……」
「ダーメ。二人じゃないなら、マキビシはあげないよ」
「!!! うう、ち、ちょっと数日考えさせてください……」
「あはは! いいよ、またメールするね」
うう、マキビシ……マキビシ……とぶつぶつ言う伊織に笑みを零しながら、仙道は空を見上げた。
星が明るく輝いて、月が優しい光を放っている。
やっと、スタートラインに立つことができた。
勝負はこれからだ。
To be continued…