君に触れない理由
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どきんと跳ねる心臓。
牧の指が、ゆっくりと結花の唇に移動する。
その感触を確かめるように数度自分の唇に沈む牧の指に、なんだかもどかしいような気持ちがして、首の後ろのあたりがざわめいた。
ばくばくと鼓動を速める心臓に、思考回路がどんどんと奪われていく。
「いいか、結花。よく覚えておけ。……ここに俺が今まで触れなかったのは、俺自身の問題なんだ」
「牧先輩の……問題?」
「そうだ。あー……その……なんだ」
途端、牧が頬を薄く染めて、バツが悪そうに結花から顔を背けた。
いつも落ち着いている牧の動揺する姿に、結花は貴重なものを見た気がしてじっとそんな牧を見つめる。
と、ふいに牧と目が合った。
瞬間、頬に添えられた牧の手に優しく力が込められて、結花のからだが引き寄せられた。
「――!」
ふわりと触れる、牧の少し乾いたやわらかい唇。
全ての物音が遠のいていく。
牧は一度唇を離すと、じっと結花を見つめた。
普段の優しい眼差しといっぺんして男を感じさせるその瞳に、結花の心臓が激しく高鳴った。
「ま、まきせ……んっ」
落ち着かなくて思わず名前を呼ぶと、黙ってろと低く囁いた牧の唇が、再び結花のそれに覆いかぶさった。
牧は結花の唇を啄ばむように数度キスを繰り返すと、今度は結花の後頭部を掴んで深く口づけてくる。
キスじたいが初めてなのに、いきなりの大人のキスにめまいがした。
思わずふらつく結花の体を、ハッとした様子で唇を離した牧が力強く支える。
「悪い」
「あ、いえ……」
間近で瞳を覗きこまれて、結花は思わず目をそらした。
心臓がうるさい。
からだが熱い。
キスの余韻がまだ結花を支配して、なかなか解放してくれそうになかった。
牧は赤く熟れた果実のような結花を見て苦笑すると、優しくその頭を撫でた。
「……な? これでわかっただろ?」
「え?」
「だから、お前にキスをしなかった理由だ。……こんな風に、歯止めがきかなくなるんだ。だから、お前がせめてもう少し恋愛耐性がついたら……と思ったんだが……」
牧がふうと参ったように嘆息した。
結花を横目で見つめて、バツが悪そうに呟く。
「お前が……誘惑するから悪いんだぞ。神にまで奪われそうになりやがって……ったく」
言うと、結花のからだは再び牧に抱きすくめられた。
耳朶に触れる牧の吐息。
そっと囁かれる言葉。
「変な心配しなくても、俺は結花が好きだ。誰よりも何よりも大事に想ってる。お前が不安になったらすぐに飛んで行くから、だからひとりで我慢したりするな」
「牧先輩……!」
自分を抱きしめる牧のからだに手を回してぎゅっと力を込めると、牧が嬉しそうに小さく笑った。
それに呼応するように、牧もさらに結花を抱く腕の力を強めてくる。
「他のやつに相談するのもダメだ。特に神な」
「神先輩?」
「そうだ。前にも言っただろ? あいつは要注意だって。……俺だって不安なんだ、結花。お前だけじゃない。俺も、こんな危なっかしいお前のそばに二年もいれないなんて、考えただけで気が狂いそうなんだ」
「不安……? 牧先輩も……?」
その言葉があまりに意外で体を離して牧を凝視すると、牧が呆れた様子でため息をついた。
牧の指が、ゆっくりと結花の唇に移動する。
その感触を確かめるように数度自分の唇に沈む牧の指に、なんだかもどかしいような気持ちがして、首の後ろのあたりがざわめいた。
ばくばくと鼓動を速める心臓に、思考回路がどんどんと奪われていく。
「いいか、結花。よく覚えておけ。……ここに俺が今まで触れなかったのは、俺自身の問題なんだ」
「牧先輩の……問題?」
「そうだ。あー……その……なんだ」
途端、牧が頬を薄く染めて、バツが悪そうに結花から顔を背けた。
いつも落ち着いている牧の動揺する姿に、結花は貴重なものを見た気がしてじっとそんな牧を見つめる。
と、ふいに牧と目が合った。
瞬間、頬に添えられた牧の手に優しく力が込められて、結花のからだが引き寄せられた。
「――!」
ふわりと触れる、牧の少し乾いたやわらかい唇。
全ての物音が遠のいていく。
牧は一度唇を離すと、じっと結花を見つめた。
普段の優しい眼差しといっぺんして男を感じさせるその瞳に、結花の心臓が激しく高鳴った。
「ま、まきせ……んっ」
落ち着かなくて思わず名前を呼ぶと、黙ってろと低く囁いた牧の唇が、再び結花のそれに覆いかぶさった。
牧は結花の唇を啄ばむように数度キスを繰り返すと、今度は結花の後頭部を掴んで深く口づけてくる。
キスじたいが初めてなのに、いきなりの大人のキスにめまいがした。
思わずふらつく結花の体を、ハッとした様子で唇を離した牧が力強く支える。
「悪い」
「あ、いえ……」
間近で瞳を覗きこまれて、結花は思わず目をそらした。
心臓がうるさい。
からだが熱い。
キスの余韻がまだ結花を支配して、なかなか解放してくれそうになかった。
牧は赤く熟れた果実のような結花を見て苦笑すると、優しくその頭を撫でた。
「……な? これでわかっただろ?」
「え?」
「だから、お前にキスをしなかった理由だ。……こんな風に、歯止めがきかなくなるんだ。だから、お前がせめてもう少し恋愛耐性がついたら……と思ったんだが……」
牧がふうと参ったように嘆息した。
結花を横目で見つめて、バツが悪そうに呟く。
「お前が……誘惑するから悪いんだぞ。神にまで奪われそうになりやがって……ったく」
言うと、結花のからだは再び牧に抱きすくめられた。
耳朶に触れる牧の吐息。
そっと囁かれる言葉。
「変な心配しなくても、俺は結花が好きだ。誰よりも何よりも大事に想ってる。お前が不安になったらすぐに飛んで行くから、だからひとりで我慢したりするな」
「牧先輩……!」
自分を抱きしめる牧のからだに手を回してぎゅっと力を込めると、牧が嬉しそうに小さく笑った。
それに呼応するように、牧もさらに結花を抱く腕の力を強めてくる。
「他のやつに相談するのもダメだ。特に神な」
「神先輩?」
「そうだ。前にも言っただろ? あいつは要注意だって。……俺だって不安なんだ、結花。お前だけじゃない。俺も、こんな危なっかしいお前のそばに二年もいれないなんて、考えただけで気が狂いそうなんだ」
「不安……? 牧先輩も……?」
その言葉があまりに意外で体を離して牧を凝視すると、牧が呆れた様子でため息をついた。