君に触れない理由
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ふいに牧が足を止めた。
その動きについていけず、結花は頭から牧の背中に突っ込んだ。
「あ、ご、ごめんなさい!」
謝ろうとしていたのに、攻撃してしまうなんて最悪だ。
慌てて離れようとした結花の体は、けれどこちらを振り向いた牧に力強く抱きすくめられた。
常の牧と違うその強い力に、結花の心が途端に早鐘を打ち始める。
「ま、牧先輩……!?」
「結花、大丈夫だったか? 神に何もされなかったか?」
「あ、は、はい! 大丈夫です」
「そうか……。よかった……」
結花の頭上で牧がホッと息を吐き出す。
牧はゆるゆると腕の力を弱めると、結花の目尻に滲む涙に気づいて、そっとそれを人差し指でぬぐった。
牧の触れたそこが熱い。
「泣くなよ、結花。そんなにこわかったか? ……そばにいて、守ってやれなくてごめんな」
牧の言葉に、ふるふると結花は首を振る。
「ち、違うんです」
「……違う? 違うってなにがだ?」
まさか神に心変わりしたのか……? と、牧が訝しげに声を落とす。
「わ、わたし……っ」
「ああ」
「わたし、不安で……っ」
「……不安? なにがだ」
「ま、牧先輩……もう付き合って半年にもなるのに……も、もうすぐ卒業だってしちゃうのに……、キ、キスも……してくれない、から……! だから、もしかしたらわたし、魅力ないのかもって……! だから、神先輩に相談して……それで……っ」
話しているうちに、ぽろぽろと涙が零れた。
きっとこれだから牧に子供だと思われてしまうのに、なのにどうしても涙を止めることが出来ない。
涙を止めようとすればするほど、さまざまな想いが絡み合って余計に溢れてしまう。
なんで自分はこうなんだろう。
これだから、いつまでたっても牧に女として見てもらえないのに。
「ご、ごめんなさい……っ!」
なんとか必死にそう声を絞り出すと、しばらくの沈黙の後、牧が小さく嘆息した。
その疲れたような響きに、びくりと結花の心が強張る。
きっと呆れられてしまったに違いない。
じゃあ終わりにするかと、言われてしまうに違いない。
いい機会だから。そろそろ学校も離れ離れになるから。だから。
(そんなの……いや……っ!)
だけど自分には否定する権利もなくて。
ぎゅっと目を閉じて次の牧の言葉を覚悟していると、
「バカだな」
やわらかい牧の声とともに、その大きな手が頭に触れた。
結花の中の不安や悲しみを溶かすように、ゆっくり撫でられるそこから結花の心へと、次第に温かみが広がっていく。
「牧先輩……?」
おそるおそる顔をあげると、牧が照れたように微笑んだ。
それを隠すようにぐしゃぐしゃと結花の頭を乱暴に撫でて、優しい瞳で結花を見つめてくる。
「……キスをしなかったのは、お前に魅力がなかったからじゃない。お前が……結花が、大事だからだ」
ぐいと、牧が親指の腹で力強く結花の涙を拭った。
その動きについていけず、結花は頭から牧の背中に突っ込んだ。
「あ、ご、ごめんなさい!」
謝ろうとしていたのに、攻撃してしまうなんて最悪だ。
慌てて離れようとした結花の体は、けれどこちらを振り向いた牧に力強く抱きすくめられた。
常の牧と違うその強い力に、結花の心が途端に早鐘を打ち始める。
「ま、牧先輩……!?」
「結花、大丈夫だったか? 神に何もされなかったか?」
「あ、は、はい! 大丈夫です」
「そうか……。よかった……」
結花の頭上で牧がホッと息を吐き出す。
牧はゆるゆると腕の力を弱めると、結花の目尻に滲む涙に気づいて、そっとそれを人差し指でぬぐった。
牧の触れたそこが熱い。
「泣くなよ、結花。そんなにこわかったか? ……そばにいて、守ってやれなくてごめんな」
牧の言葉に、ふるふると結花は首を振る。
「ち、違うんです」
「……違う? 違うってなにがだ?」
まさか神に心変わりしたのか……? と、牧が訝しげに声を落とす。
「わ、わたし……っ」
「ああ」
「わたし、不安で……っ」
「……不安? なにがだ」
「ま、牧先輩……もう付き合って半年にもなるのに……も、もうすぐ卒業だってしちゃうのに……、キ、キスも……してくれない、から……! だから、もしかしたらわたし、魅力ないのかもって……! だから、神先輩に相談して……それで……っ」
話しているうちに、ぽろぽろと涙が零れた。
きっとこれだから牧に子供だと思われてしまうのに、なのにどうしても涙を止めることが出来ない。
涙を止めようとすればするほど、さまざまな想いが絡み合って余計に溢れてしまう。
なんで自分はこうなんだろう。
これだから、いつまでたっても牧に女として見てもらえないのに。
「ご、ごめんなさい……っ!」
なんとか必死にそう声を絞り出すと、しばらくの沈黙の後、牧が小さく嘆息した。
その疲れたような響きに、びくりと結花の心が強張る。
きっと呆れられてしまったに違いない。
じゃあ終わりにするかと、言われてしまうに違いない。
いい機会だから。そろそろ学校も離れ離れになるから。だから。
(そんなの……いや……っ!)
だけど自分には否定する権利もなくて。
ぎゅっと目を閉じて次の牧の言葉を覚悟していると、
「バカだな」
やわらかい牧の声とともに、その大きな手が頭に触れた。
結花の中の不安や悲しみを溶かすように、ゆっくり撫でられるそこから結花の心へと、次第に温かみが広がっていく。
「牧先輩……?」
おそるおそる顔をあげると、牧が照れたように微笑んだ。
それを隠すようにぐしゃぐしゃと結花の頭を乱暴に撫でて、優しい瞳で結花を見つめてくる。
「……キスをしなかったのは、お前に魅力がなかったからじゃない。お前が……結花が、大事だからだ」
ぐいと、牧が親指の腹で力強く結花の涙を拭った。