君に触れない理由
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あやしく、その綺麗な瞳が光った。
「ね、結花ちゃん。俺と試してみる? ……キス」
「え? あ……」
宗一郎の瞳に絡め取られたように動けなくなった結花を間近で覗きこんで、宗一郎がゆっくりと顔を寄せてきた。
(え、あ、ど、どうしよう……!)
逃げなきゃまずいとわかっているのに、からだがまるで金縛りにでもあったようにいう事をきかない。
(や……牧先輩……!)
ぎゅっと目をつぶって、愛しい人を想ったその時、バコンと重力のある音が耳に届いた。
驚いて結花が目を開けると、唇が触れるまであと数センチに迫っていた宗一郎の顔が沈んでいた。
「え……え!?」
状況をつかめないでいる結花の視界に、見慣れた広い背中が飛び込んでくる。
「……なにやってるんだ、神」
「ま、牧先輩!」
結花の彼氏の牧だった。
牧は結花を庇うようにその前に立つと、めずらしく不機嫌そうな声音で宗一郎に言う。
「まさか、説明できないわけじゃあねぇよな?」
「あれ、牧さん……。……意外と早かったですね」
宗一郎は自分を殴ったのが誰なのかわかると、しばらくどういう表情をするか逡巡したすえに、にこりと爽やかな笑顔を浮かべた。
宗一郎のその表情を見て、牧が疲れたように顔を手の平で覆う。
「でたな、その顔……。もう……お前には何をどう言うべきか……」
心底呆れたというように嘆息して、牧がごほんと気を取り直すように咳払いをする。
「とにかく、神。お前にはあとでたっぷり話があるからな」
「はは、こわいなあ」
「よく言うぜ。俺はお前の存在のほうがよっぽど怖い」
「ふふ。天下の牧さんを怖がらせるなんて、俺もなかなか成長したってことかな」
「…………」
穏やかに笑う宗一郎を牧はなんともいえない表情で見つめて、再びひとつ咳払いをした。
表情をあらためて結花に向き直る。
「――とりあえず、結花。来い」
「え? わあ!」
牧に強く腕を引かれ、結花は転げるようにして先を行く牧を追いかけた。
怒っている……のだろうか。
牧は黙って結花を引っ張っていくだけで、こちらを振り返りもしない。
無言の背中が、ひどく結花の不安を掻き立てた。
さっきは結花も動転していてすっかり頭から抜け落ちていたが、思い返せば牧に宗一郎とキスをしそうになっているところを見られたのだ。
怒って当たり前、それどころか浮気と捉えられて振られてしまっても文句をいえない状況だ。
(ど、どうしよう……! 違うのに……っ)
結花の瞳に再び涙が盛り上がった。
伏せた視界。その先の地面が霞んでいく。
牧は相変わらずこちらを振り返らずに歩いていくだけで、いまどんな表情をしているのかさえ結花にはわからなかった。
牧に掴まれた腕から、次第にジンジンと痺れるような痛みが広がっていく。
こんなに強く力を込められたのは初めてだ。
(やっぱり……牧先輩、怒ってる……!)
とにかく謝ろう。そう決意して結花が息を大きく吸い込んだ時。
「ね、結花ちゃん。俺と試してみる? ……キス」
「え? あ……」
宗一郎の瞳に絡め取られたように動けなくなった結花を間近で覗きこんで、宗一郎がゆっくりと顔を寄せてきた。
(え、あ、ど、どうしよう……!)
逃げなきゃまずいとわかっているのに、からだがまるで金縛りにでもあったようにいう事をきかない。
(や……牧先輩……!)
ぎゅっと目をつぶって、愛しい人を想ったその時、バコンと重力のある音が耳に届いた。
驚いて結花が目を開けると、唇が触れるまであと数センチに迫っていた宗一郎の顔が沈んでいた。
「え……え!?」
状況をつかめないでいる結花の視界に、見慣れた広い背中が飛び込んでくる。
「……なにやってるんだ、神」
「ま、牧先輩!」
結花の彼氏の牧だった。
牧は結花を庇うようにその前に立つと、めずらしく不機嫌そうな声音で宗一郎に言う。
「まさか、説明できないわけじゃあねぇよな?」
「あれ、牧さん……。……意外と早かったですね」
宗一郎は自分を殴ったのが誰なのかわかると、しばらくどういう表情をするか逡巡したすえに、にこりと爽やかな笑顔を浮かべた。
宗一郎のその表情を見て、牧が疲れたように顔を手の平で覆う。
「でたな、その顔……。もう……お前には何をどう言うべきか……」
心底呆れたというように嘆息して、牧がごほんと気を取り直すように咳払いをする。
「とにかく、神。お前にはあとでたっぷり話があるからな」
「はは、こわいなあ」
「よく言うぜ。俺はお前の存在のほうがよっぽど怖い」
「ふふ。天下の牧さんを怖がらせるなんて、俺もなかなか成長したってことかな」
「…………」
穏やかに笑う宗一郎を牧はなんともいえない表情で見つめて、再びひとつ咳払いをした。
表情をあらためて結花に向き直る。
「――とりあえず、結花。来い」
「え? わあ!」
牧に強く腕を引かれ、結花は転げるようにして先を行く牧を追いかけた。
怒っている……のだろうか。
牧は黙って結花を引っ張っていくだけで、こちらを振り返りもしない。
無言の背中が、ひどく結花の不安を掻き立てた。
さっきは結花も動転していてすっかり頭から抜け落ちていたが、思い返せば牧に宗一郎とキスをしそうになっているところを見られたのだ。
怒って当たり前、それどころか浮気と捉えられて振られてしまっても文句をいえない状況だ。
(ど、どうしよう……! 違うのに……っ)
結花の瞳に再び涙が盛り上がった。
伏せた視界。その先の地面が霞んでいく。
牧は相変わらずこちらを振り返らずに歩いていくだけで、いまどんな表情をしているのかさえ結花にはわからなかった。
牧に掴まれた腕から、次第にジンジンと痺れるような痛みが広がっていく。
こんなに強く力を込められたのは初めてだ。
(やっぱり……牧先輩、怒ってる……!)
とにかく謝ろう。そう決意して結花が息を大きく吸い込んだ時。