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「……かわいいよ」
自分の睫毛が震えているのがわかる。
目の前の伊理穂が、驚いたように表情を止めて、顔を赤く染めた。
ああ、これでは自分の気持ちに気づかれてしまう。そうなったら自分たちの関係も終わりだ。もう伊理穂の傍にいられなくなる。
思って洋平は、わざとおどけてみせる。
「はは。伊理穂、お前なに赤くなってんだよ」
「だ、だって……!」
「なに、お前まさかオレにときめいちゃった?」
「な! ち、違うよっ、だ、だって洋平が急に真剣な顔でそんなこと言うから……っ」
「はあ? お前が真剣に答えろって言ったんだろ?」
胸が痛い。
こんなにも心は悲鳴をあげているのに、笑顔を浮かべることができる自分に心底ホッとした。
この気持ちを隠していれば、幼馴染みとして、これからもずっと傍にいることができる。
伊理穂の幸せを、傍で見届けることが出来る。
一番近くじゃなくなったとしても。
「ったく。真剣に言えって怒ったり、言ったら言ったで怒ったり、わがままなお姫さんだな、伊理穂チャンは」
呆れたように嘆息しながら、洋平は伊理穂の頭を撫でた。
柔らかな手触りの、絹糸のような伊理穂の髪。
あと何回、この髪に触れられるんだろう。
伊理穂が拗ねたように唇を尖らせる。
むーと低く唸る伊理穂にいつもの苦笑を見せて、洋平は唇を持ち上げる。
「あんまり自由にしてっと流川に嫌われるぞ?」
「うそっ」
「うそだよ」
慌てる伊理穂に、洋平は意地悪い笑顔を向ける。
もう一度伊理穂の頬に手を添えて、洋平は本気に聞こえないように気をつけながら、胸にある想いを口にした。
「伊理穂チャンは、オレが今まで出会った女の子の中で、一番綺麗でかわいいよ。だから、大丈夫だ。流川も、そんな等身大のお前を、きっと愛してくれる」
「――そうだといいな。ありがとう、洋平」
「どういたしまして」
洋平は優しく伊理穂の頭を撫でると、立ち上がった。
「さ、もう寝ろ伊理穂。お前今日は自分の部屋に帰れ」
「えー、やだ! ここで寝る!」
「あのなあ。こんなの流川にばれたら嫌われるぞ?」
「ばらさないもんっ!」
「……あ、そう」
伊理穂の瞳に強い光を見て、洋平は諦めたように息を吐いた。
この目をしたときの伊理穂は、もう何を言っても無駄だ。
「オレと一緒に寝るのは、流川と付き合うまでだからな」
「……なんで?」
「なんででも!」
言うと、洋平は乱暴に伊理穂に布団を被せた。
わぷっと小さく悲鳴をあげながら、伊理穂が布団からひょっこり顔を出す。
「洋平は? まだ寝ないの?」
ベッド脇に座る洋平を見て、伊理穂が声をかけてきた。
洋平は小さく頷く。
「オレは少し部屋片付けたら寝るよ。お前はもう寝ろ。明日も早いんだろ?」
「うん、朝練。洋平は……」
「一緒に行くよ。だから安心して寝ろ? な?」
「うん。……おやすみ、洋平」
「おやすみ」
小さい子を寝かしつけるように伊理穂の頭を撫でてやると、伊理穂が安心したように瞳を閉じた。やがてすうすうと規則正しい寝息を立て始める。
その姿に、洋平の心が激しくかき乱された。
それまで堪えていた感情が一気に溢れてきて、洋平の視界を歪ませる。
「伊理穂……」
洋平の瞳から零れた雫が、眠る伊理穂の頬に落ちた。
洋平はその頬にゆっくりと唇をよせて、そっとその雫をぬぐった。
伊理穂のやわらかな弾力のある頬の感触に、もうどうしようもなくなって、洋平は吸い寄せられるように伊理穂の唇に自身のそれを押し当てた。
狂おしいほどの愛情と同時に胸に押し寄せるのは、呼吸が止まるほどの背徳感で。
「……伊理穂っ」
洋平はそのままベッドの下に崩れるようにして座りこんだ。
立てた片膝に肘を乗せて、俯いた頭を抱え込む。
「伊理穂っ、伊理穂……っ!」
好きなのに。愛してるのに。
なのに、信頼して眠る伊理穂を二回も襲って、そんな自分に嫌気が差した。
だけど、苦しくて、もうどうしようもなかった。
口づけても傷口は広がるばかりで、だけどそれでも、愛しくてそうせずにはいられなくて、ぐるぐると相反する感情が洋平を苛んだ。
こんな感情、自分ひとりの体では収まりきらない。
壊れてしまう。
誰かに、伊理穂に助けて欲しいと思うなんて、なんて情けないんだろう。
「伊理穂……っ」
涙でくぐもった声が、伊理穂の呼吸音と混じるように部屋に吸い込まれていく。
「伊理穂……。オレ、お前のそばにいるためならどんなことでも耐えてみせるって、そう思ってるけど、やっぱりつれぇよ……。伊理穂、もうこれ以上、オレから離れていかないでくれ……!」
愛してるんだ。
ぽつりと呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく夜の闇に消えていった。
To be continued…
自分の睫毛が震えているのがわかる。
目の前の伊理穂が、驚いたように表情を止めて、顔を赤く染めた。
ああ、これでは自分の気持ちに気づかれてしまう。そうなったら自分たちの関係も終わりだ。もう伊理穂の傍にいられなくなる。
思って洋平は、わざとおどけてみせる。
「はは。伊理穂、お前なに赤くなってんだよ」
「だ、だって……!」
「なに、お前まさかオレにときめいちゃった?」
「な! ち、違うよっ、だ、だって洋平が急に真剣な顔でそんなこと言うから……っ」
「はあ? お前が真剣に答えろって言ったんだろ?」
胸が痛い。
こんなにも心は悲鳴をあげているのに、笑顔を浮かべることができる自分に心底ホッとした。
この気持ちを隠していれば、幼馴染みとして、これからもずっと傍にいることができる。
伊理穂の幸せを、傍で見届けることが出来る。
一番近くじゃなくなったとしても。
「ったく。真剣に言えって怒ったり、言ったら言ったで怒ったり、わがままなお姫さんだな、伊理穂チャンは」
呆れたように嘆息しながら、洋平は伊理穂の頭を撫でた。
柔らかな手触りの、絹糸のような伊理穂の髪。
あと何回、この髪に触れられるんだろう。
伊理穂が拗ねたように唇を尖らせる。
むーと低く唸る伊理穂にいつもの苦笑を見せて、洋平は唇を持ち上げる。
「あんまり自由にしてっと流川に嫌われるぞ?」
「うそっ」
「うそだよ」
慌てる伊理穂に、洋平は意地悪い笑顔を向ける。
もう一度伊理穂の頬に手を添えて、洋平は本気に聞こえないように気をつけながら、胸にある想いを口にした。
「伊理穂チャンは、オレが今まで出会った女の子の中で、一番綺麗でかわいいよ。だから、大丈夫だ。流川も、そんな等身大のお前を、きっと愛してくれる」
「――そうだといいな。ありがとう、洋平」
「どういたしまして」
洋平は優しく伊理穂の頭を撫でると、立ち上がった。
「さ、もう寝ろ伊理穂。お前今日は自分の部屋に帰れ」
「えー、やだ! ここで寝る!」
「あのなあ。こんなの流川にばれたら嫌われるぞ?」
「ばらさないもんっ!」
「……あ、そう」
伊理穂の瞳に強い光を見て、洋平は諦めたように息を吐いた。
この目をしたときの伊理穂は、もう何を言っても無駄だ。
「オレと一緒に寝るのは、流川と付き合うまでだからな」
「……なんで?」
「なんででも!」
言うと、洋平は乱暴に伊理穂に布団を被せた。
わぷっと小さく悲鳴をあげながら、伊理穂が布団からひょっこり顔を出す。
「洋平は? まだ寝ないの?」
ベッド脇に座る洋平を見て、伊理穂が声をかけてきた。
洋平は小さく頷く。
「オレは少し部屋片付けたら寝るよ。お前はもう寝ろ。明日も早いんだろ?」
「うん、朝練。洋平は……」
「一緒に行くよ。だから安心して寝ろ? な?」
「うん。……おやすみ、洋平」
「おやすみ」
小さい子を寝かしつけるように伊理穂の頭を撫でてやると、伊理穂が安心したように瞳を閉じた。やがてすうすうと規則正しい寝息を立て始める。
その姿に、洋平の心が激しくかき乱された。
それまで堪えていた感情が一気に溢れてきて、洋平の視界を歪ませる。
「伊理穂……」
洋平の瞳から零れた雫が、眠る伊理穂の頬に落ちた。
洋平はその頬にゆっくりと唇をよせて、そっとその雫をぬぐった。
伊理穂のやわらかな弾力のある頬の感触に、もうどうしようもなくなって、洋平は吸い寄せられるように伊理穂の唇に自身のそれを押し当てた。
狂おしいほどの愛情と同時に胸に押し寄せるのは、呼吸が止まるほどの背徳感で。
「……伊理穂っ」
洋平はそのままベッドの下に崩れるようにして座りこんだ。
立てた片膝に肘を乗せて、俯いた頭を抱え込む。
「伊理穂っ、伊理穂……っ!」
好きなのに。愛してるのに。
なのに、信頼して眠る伊理穂を二回も襲って、そんな自分に嫌気が差した。
だけど、苦しくて、もうどうしようもなかった。
口づけても傷口は広がるばかりで、だけどそれでも、愛しくてそうせずにはいられなくて、ぐるぐると相反する感情が洋平を苛んだ。
こんな感情、自分ひとりの体では収まりきらない。
壊れてしまう。
誰かに、伊理穂に助けて欲しいと思うなんて、なんて情けないんだろう。
「伊理穂……っ」
涙でくぐもった声が、伊理穂の呼吸音と混じるように部屋に吸い込まれていく。
「伊理穂……。オレ、お前のそばにいるためならどんなことでも耐えてみせるって、そう思ってるけど、やっぱりつれぇよ……。伊理穂、もうこれ以上、オレから離れていかないでくれ……!」
愛してるんだ。
ぽつりと呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく夜の闇に消えていった。
To be continued…