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洋平は重い足を引きずりながら家の玄関を開けた。
暗い気持ちに支配されて、からだが押しつぶされそうだ。
洋平は気分を入れ替えようとシャワーを浴びた。
夕飯が用意されていたけれど、胃のあたりに不快感がつのって、とても食べる気になれなかった。
心の中で弥生に謝って、洋平は自室へと足を向ける。
と。
「おかえりっ、洋平! バイトお疲れさま」
ドアを開けると、伊理穂が洋平のベッドの上に座ってにこにこしながら待っていた。
いつもはホッとする伊理穂の笑顔が、今日はやけに洋平の胸を締め付ける。
洋平は胸中に淀んでいた暗く重い気持ちを心の奥底に押し込めると、伊理穂に笑顔を向けた。
「ただいま」
言いながらベッド脇に椅子を引き寄せて、そこに腰掛けた。
それを見届けて、伊理穂がにこにこと唇を持ち上げる。
「今日はどうだった?」
「ん? いつもどおりだよ。たいして忙しくもなく暇でもなくって感じかな」
「そっか。でもそのわりには洋平、なんか疲れた顔してない? 元気ないっていうか……」
伊理穂の言葉に、洋平は一瞬ぎくりと表情を止めた。
この幼馴染みは大事なところは鈍感なくせに、こういうところはやたらと鋭くて冷や汗が出る。
洋平はすぐに笑顔を取り繕って、何言ってんだと伊理穂の頭を少し乱暴に撫でた。
「はは、そんなことねえよ」
「そう? 顔色、あんまりよくない気がする」
言って、伊理穂が洋平の頬を両手で挟んで、じっと顔を寄せてきた。
途端どきどきと忙しなく鳴る心臓。
洋平は慌てて伊理穂の両手を顔からどけると、困ったように眉尻を下げた。
「大丈夫だって。それよりお前はどうしたんだよ? なんか用があって待ってたんじゃないのか?」
「あ、うんそうなの! あのね、洋平、大ニュースなの!」
「大ニュース?」
伊理穂がベッドの上で正座する。
その頬がほんのり赤くなっていて、これから話す内容は流川の話題なんだろうなと簡単に当たりがついた。
押し込めたはずの暗い感情が、少し顔を出す。
「あのね、きょ、今日ね」
「ああ」
「る、流川くんに名前で呼んでもらっちゃった……!」
きゃーっと照れながら、伊理穂が真っ赤になった顔を手で覆い隠した。
洋平はそれを切ない眼差しで見つめながら、薄く微笑んだ。
きりきりと心臓が悲鳴をあげる。
「よかったな。かなりの進展じゃないか」
「そうかな?」
「そうだろ。アイツが女の子を名前で呼んでるのなんか見たことないぜ?」
お前だけなんじゃないか? と言ってやると、伊理穂が嬉しそうに微笑んだ。
そうかな、なんて薄く頬を染める伊理穂。
暗い気持ちに支配されて、からだが押しつぶされそうだ。
洋平は気分を入れ替えようとシャワーを浴びた。
夕飯が用意されていたけれど、胃のあたりに不快感がつのって、とても食べる気になれなかった。
心の中で弥生に謝って、洋平は自室へと足を向ける。
と。
「おかえりっ、洋平! バイトお疲れさま」
ドアを開けると、伊理穂が洋平のベッドの上に座ってにこにこしながら待っていた。
いつもはホッとする伊理穂の笑顔が、今日はやけに洋平の胸を締め付ける。
洋平は胸中に淀んでいた暗く重い気持ちを心の奥底に押し込めると、伊理穂に笑顔を向けた。
「ただいま」
言いながらベッド脇に椅子を引き寄せて、そこに腰掛けた。
それを見届けて、伊理穂がにこにこと唇を持ち上げる。
「今日はどうだった?」
「ん? いつもどおりだよ。たいして忙しくもなく暇でもなくって感じかな」
「そっか。でもそのわりには洋平、なんか疲れた顔してない? 元気ないっていうか……」
伊理穂の言葉に、洋平は一瞬ぎくりと表情を止めた。
この幼馴染みは大事なところは鈍感なくせに、こういうところはやたらと鋭くて冷や汗が出る。
洋平はすぐに笑顔を取り繕って、何言ってんだと伊理穂の頭を少し乱暴に撫でた。
「はは、そんなことねえよ」
「そう? 顔色、あんまりよくない気がする」
言って、伊理穂が洋平の頬を両手で挟んで、じっと顔を寄せてきた。
途端どきどきと忙しなく鳴る心臓。
洋平は慌てて伊理穂の両手を顔からどけると、困ったように眉尻を下げた。
「大丈夫だって。それよりお前はどうしたんだよ? なんか用があって待ってたんじゃないのか?」
「あ、うんそうなの! あのね、洋平、大ニュースなの!」
「大ニュース?」
伊理穂がベッドの上で正座する。
その頬がほんのり赤くなっていて、これから話す内容は流川の話題なんだろうなと簡単に当たりがついた。
押し込めたはずの暗い感情が、少し顔を出す。
「あのね、きょ、今日ね」
「ああ」
「る、流川くんに名前で呼んでもらっちゃった……!」
きゃーっと照れながら、伊理穂が真っ赤になった顔を手で覆い隠した。
洋平はそれを切ない眼差しで見つめながら、薄く微笑んだ。
きりきりと心臓が悲鳴をあげる。
「よかったな。かなりの進展じゃないか」
「そうかな?」
「そうだろ。アイツが女の子を名前で呼んでるのなんか見たことないぜ?」
お前だけなんじゃないか? と言ってやると、伊理穂が嬉しそうに微笑んだ。
そうかな、なんて薄く頬を染める伊理穂。