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午後九時。
バイトが終わって洋平はのんびりお店を出ると、思わぬ人物に呼び止められた。
「よお」
「ミッチー……」
驚く洋平に三井は薄く笑って、そのまま洋平を近くの公園に誘ってきた。
洋平はそれに首を縦に振ると、導かれるままに公園まで歩く。
「話ってなんすか?」
二人で缶コーヒーを傾けながら公園にあるブランコの柵に座って、洋平は訊いた。
三井は言いにくそうに数回口をもごもごさせた後、決意したように口を開く。
「オレは、まわりくどいのが嫌いだ」
「はあ」
「だから、単刀直入に聞く。――水戸、お前、伊理穂のことが好きなのか?」
「……あんたもッスか」
半ばうんざりした気持ちで、洋平は息を吐き出した。
流川といい三井といい、こちらのことは気にせずに伊理穂にアタックしてくれればいいのに、どうしてわざわざ自分の気持ちを聞きに来るんだろう。
「……好きですよ」
それでも洋平が律儀に答えてやると、三井が神妙な表情で洋平を見つめてきた。
「それは、幼馴染みとしてじゃなくだよな?」
「子供じゃないんだから当たり前じゃないっすか。――ひとりの女として、オレは伊理穂が好きですよ」
「…………」
三井が黙り込む。
三井はブランコの柵から腰をあげてこちらをくるりと振り向いたかと思うと、真剣な眼差しで洋平を見た。
「負けねぇ」
その一言で、洋平の中で堪えていた何かが小さく爆発する。
もういい加減にしてほしかった。
こっちは一生懸命気持ちを殺して。抑えて。必死に耐えてるというのに。
「……んなんだよ」
「あ?」
「なんなんだよ、あんたといい流川といい……! もう、いい加減にしてくれよ……!」
「水戸……?」
三井が驚いたように眉根を寄せる。
だけど、一旦走り出した感情はもう止められなかった。
洋平は苦しげに顔をゆがめて、声を荒げる。
「アンタだってわかってんだろ!? 伊理穂がオレの事どういう風に見てるか! 伊理穂の目には誰がうつってんのか! わかってんだろ!? なあ!!」
「…………」
身の内を激しく駆け巡る感情に任せて洋平は三井の襟首を掴んだ。
どうして。一生懸命、傍観者でいようとしてるのに。
第三者でいようとしているのに。
(どうしてそれすらも邪魔しようとするんだ……!)
ガンという重い音を立てて、まだ中身の入っていた缶コーヒーが二人の足元に転がった。
中から真っ黒な液体があふれ出して、地面に黒い染みを作っていく。
「もう……ウンザリなんスよ! そうやってライバル視されんのは……!」
洋平は乱暴に三井の襟首から手を放した。
足元に広がるコーヒーの染みを見ながら、洋平は独白のように言葉を続ける。
「オレは、あんたたちとは土俵が違うんだ。あんたたちのいる場所にさえ、オレは立てない。オレが、オレがどんなに……どんなにアイツのこと愛してたって、オレは一生伊理穂の目には映らねえ! アイツがオレに求めるのは、ただの頼れる幼馴染みってだけで、それ以上でもそれ以下でもねえんだよ!」
「お前……それ、本気で言ってんのかよ」
三井がどこか呆れたように呟いた。
洋平はその言葉に、皮肉な笑みを浮かべる。
「冗談だったらいいんスけどね」
「おい、水戸……」
「もう、カンベンして下さいよ」
「おい! ちょ、待てよ! 水戸!」
洋平はそれだけ言うと、呼び止める三井の声もそのままに、振り返ることなくその場を後にした。
バイトが終わって洋平はのんびりお店を出ると、思わぬ人物に呼び止められた。
「よお」
「ミッチー……」
驚く洋平に三井は薄く笑って、そのまま洋平を近くの公園に誘ってきた。
洋平はそれに首を縦に振ると、導かれるままに公園まで歩く。
「話ってなんすか?」
二人で缶コーヒーを傾けながら公園にあるブランコの柵に座って、洋平は訊いた。
三井は言いにくそうに数回口をもごもごさせた後、決意したように口を開く。
「オレは、まわりくどいのが嫌いだ」
「はあ」
「だから、単刀直入に聞く。――水戸、お前、伊理穂のことが好きなのか?」
「……あんたもッスか」
半ばうんざりした気持ちで、洋平は息を吐き出した。
流川といい三井といい、こちらのことは気にせずに伊理穂にアタックしてくれればいいのに、どうしてわざわざ自分の気持ちを聞きに来るんだろう。
「……好きですよ」
それでも洋平が律儀に答えてやると、三井が神妙な表情で洋平を見つめてきた。
「それは、幼馴染みとしてじゃなくだよな?」
「子供じゃないんだから当たり前じゃないっすか。――ひとりの女として、オレは伊理穂が好きですよ」
「…………」
三井が黙り込む。
三井はブランコの柵から腰をあげてこちらをくるりと振り向いたかと思うと、真剣な眼差しで洋平を見た。
「負けねぇ」
その一言で、洋平の中で堪えていた何かが小さく爆発する。
もういい加減にしてほしかった。
こっちは一生懸命気持ちを殺して。抑えて。必死に耐えてるというのに。
「……んなんだよ」
「あ?」
「なんなんだよ、あんたといい流川といい……! もう、いい加減にしてくれよ……!」
「水戸……?」
三井が驚いたように眉根を寄せる。
だけど、一旦走り出した感情はもう止められなかった。
洋平は苦しげに顔をゆがめて、声を荒げる。
「アンタだってわかってんだろ!? 伊理穂がオレの事どういう風に見てるか! 伊理穂の目には誰がうつってんのか! わかってんだろ!? なあ!!」
「…………」
身の内を激しく駆け巡る感情に任せて洋平は三井の襟首を掴んだ。
どうして。一生懸命、傍観者でいようとしてるのに。
第三者でいようとしているのに。
(どうしてそれすらも邪魔しようとするんだ……!)
ガンという重い音を立てて、まだ中身の入っていた缶コーヒーが二人の足元に転がった。
中から真っ黒な液体があふれ出して、地面に黒い染みを作っていく。
「もう……ウンザリなんスよ! そうやってライバル視されんのは……!」
洋平は乱暴に三井の襟首から手を放した。
足元に広がるコーヒーの染みを見ながら、洋平は独白のように言葉を続ける。
「オレは、あんたたちとは土俵が違うんだ。あんたたちのいる場所にさえ、オレは立てない。オレが、オレがどんなに……どんなにアイツのこと愛してたって、オレは一生伊理穂の目には映らねえ! アイツがオレに求めるのは、ただの頼れる幼馴染みってだけで、それ以上でもそれ以下でもねえんだよ!」
「お前……それ、本気で言ってんのかよ」
三井がどこか呆れたように呟いた。
洋平はその言葉に、皮肉な笑みを浮かべる。
「冗談だったらいいんスけどね」
「おい、水戸……」
「もう、カンベンして下さいよ」
「おい! ちょ、待てよ! 水戸!」
洋平はそれだけ言うと、呼び止める三井の声もそのままに、振り返ることなくその場を後にした。