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「頑張ってー!」
洋平は一生懸命声を出して部員のサポートをする伊理穂を見ながら、くあと大きなあくびをした。
今日もいつもどおりの時間帯に登校だと思っていたのに、朝練に行くという伊理穂に無理矢理連れてこられて、眠くてしょうがない。
「なあに、洋平。大きなあくび!」
何度かあくびを繰り返していると、それを見咎めた伊理穂が注意してきた。
洋平はそれに苦笑を返す。
「しょうがないだろ。オレまで朝練に連れてこられると思わなくて、昨日夜更かししちまったんだから。ふああ」
言いながらもうひとつあくびをすると、伊理穂がしゅんとしぼんだ。
上目遣いにこちらを見ながら、申し訳なさそうに謝ってくる。
「そっか……。洋平、ごめんね」
「はは。怒ってるわけじゃねえよ。まあ、伊理穂を一人で行かすのも心配だったし、それに……」
ふいに言葉をとめて、洋平は流川を見た。
「別の心配の種もいるしな……」
「え?」
首を傾げて聞き返してくる伊理穂に、洋平は返事のかわりに微笑むと、不思議そうに自分を見つめる伊理穂の頭をくしゃくしゃ撫でた。
今は伊理穂はわからなくていい。
瞳を細めて、洋平は伊理穂に優しく微笑む。
「なんでもないよ」
「ふうん? 変な洋平」
「そんなことより伊理穂。新人マネージャーがこんなところで油うってていいのか?」
「おおっと、そうだった! これから花道のパス練習に付き合うんだ。じゃあちょっと行ってくるね!」
「おう。しっかりやれよ」
「はーい!」
元気良く手を振り去っていく伊理穂の背中を、洋平は眩しそうに見つめた。
伊理穂はとても楽しそうで、見ているこっちまで楽しい気持ちになってくる。
伊理穂は宣言どおり花道とパス練習を始めると、数分も経たないうちに頬をふくらませて花道に抗議を始めた。
どうやら花道のパスが強すぎたらしい。
真っ赤になった手の平を花道につきつけて怒る伊理穂に、花道が必死で謝っている。
「はは! なにやってんだ、アイツらは」
くつくつ笑っていると、その拍子に流川の姿が目に入った。その表情に、洋平は思わず息を止める。
あのクールな流川が、春の日差しのように柔らかくて優しい眼差しで伊理穂を見つめていた。
洋平の胸のあたりに、なにかもやもやした嫌なものがじんわり広がっていく。
(あのルカワがあんな表情するなんてな……)
洋平は胸から喉元にせり上がって来る苦いものを吐き出すようにため息をついた。
視線の先で、伊理穂は機嫌が直ったのか再び花道とパス練習を再開していた。
その横顔を洋平は胸がつまる思いで見つめる。
小さな頃からずっと大切にしてきた伊理穂。いつか自分が幸せにできたらとずっと願ってきた伊理穂。
だけど伊理穂が見つめるその先には……。
「…………」
洋平は小さく首を振ると、もう一度重い息を吐き出した。
昔からずっと覚悟してきたことだ。伊理穂にとって、自分は保護者にしか映っていない。
きっとそれは、今までもこれからも変わらない事実だ。
そんなことはとっくにわかっていたはずなのに。
(……目の当たりにして、こんなに気持ちが揺らぐなんて情けねえよな、オレも)
洋平は深く深く嘆息した。
洋平は一生懸命声を出して部員のサポートをする伊理穂を見ながら、くあと大きなあくびをした。
今日もいつもどおりの時間帯に登校だと思っていたのに、朝練に行くという伊理穂に無理矢理連れてこられて、眠くてしょうがない。
「なあに、洋平。大きなあくび!」
何度かあくびを繰り返していると、それを見咎めた伊理穂が注意してきた。
洋平はそれに苦笑を返す。
「しょうがないだろ。オレまで朝練に連れてこられると思わなくて、昨日夜更かししちまったんだから。ふああ」
言いながらもうひとつあくびをすると、伊理穂がしゅんとしぼんだ。
上目遣いにこちらを見ながら、申し訳なさそうに謝ってくる。
「そっか……。洋平、ごめんね」
「はは。怒ってるわけじゃねえよ。まあ、伊理穂を一人で行かすのも心配だったし、それに……」
ふいに言葉をとめて、洋平は流川を見た。
「別の心配の種もいるしな……」
「え?」
首を傾げて聞き返してくる伊理穂に、洋平は返事のかわりに微笑むと、不思議そうに自分を見つめる伊理穂の頭をくしゃくしゃ撫でた。
今は伊理穂はわからなくていい。
瞳を細めて、洋平は伊理穂に優しく微笑む。
「なんでもないよ」
「ふうん? 変な洋平」
「そんなことより伊理穂。新人マネージャーがこんなところで油うってていいのか?」
「おおっと、そうだった! これから花道のパス練習に付き合うんだ。じゃあちょっと行ってくるね!」
「おう。しっかりやれよ」
「はーい!」
元気良く手を振り去っていく伊理穂の背中を、洋平は眩しそうに見つめた。
伊理穂はとても楽しそうで、見ているこっちまで楽しい気持ちになってくる。
伊理穂は宣言どおり花道とパス練習を始めると、数分も経たないうちに頬をふくらませて花道に抗議を始めた。
どうやら花道のパスが強すぎたらしい。
真っ赤になった手の平を花道につきつけて怒る伊理穂に、花道が必死で謝っている。
「はは! なにやってんだ、アイツらは」
くつくつ笑っていると、その拍子に流川の姿が目に入った。その表情に、洋平は思わず息を止める。
あのクールな流川が、春の日差しのように柔らかくて優しい眼差しで伊理穂を見つめていた。
洋平の胸のあたりに、なにかもやもやした嫌なものがじんわり広がっていく。
(あのルカワがあんな表情するなんてな……)
洋平は胸から喉元にせり上がって来る苦いものを吐き出すようにため息をついた。
視線の先で、伊理穂は機嫌が直ったのか再び花道とパス練習を再開していた。
その横顔を洋平は胸がつまる思いで見つめる。
小さな頃からずっと大切にしてきた伊理穂。いつか自分が幸せにできたらとずっと願ってきた伊理穂。
だけど伊理穂が見つめるその先には……。
「…………」
洋平は小さく首を振ると、もう一度重い息を吐き出した。
昔からずっと覚悟してきたことだ。伊理穂にとって、自分は保護者にしか映っていない。
きっとそれは、今までもこれからも変わらない事実だ。
そんなことはとっくにわかっていたはずなのに。
(……目の当たりにして、こんなに気持ちが揺らぐなんて情けねえよな、オレも)
洋平は深く深く嘆息した。