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その強い眼差しに、洋平は気持ちたじろぐ。
「平気だもん!」
「あ!?」
「洋平のためだったら、平気。自分がどうかなるくらい、わたし、ガマンできるもん!」
「お……まえ、何言ってんだよ!? 正気かよ!」
「正気!」
「バッカじゃねえの、そんなの! ダメに決まってんだろ! なんでオレなんかのために……!」
「洋平は、だって大切な幼馴染みだもん! 洋平には幸せに笑っていて欲しいし、それをわたしは守りたい!」
「――!」
昔と変わらず、凛とした表情でそんなことを言ってくる伊理穂に、洋平は思わず顔を赤らめた。
嬉しさと同時に、狂おしいくらいの切なさが胸に溢れてきて、洋平は泣きたい気持ちになった。
それと気付かれないように、洋平は顔を思いっきり背けて、不機嫌な声を出す。
「だけど伊理穂。そんなことになったら、オレはお前の親父さんと千鶴さんに、どう顔向けすりゃあいいんだよ……!」
「それは、大丈夫」
「は?」
きっぱりと言ってくる伊理穂に、洋平は顔をしかめた。
「大丈夫って、んなわけねえだろ」
「大丈夫だもん。わたし、お父さんと約束したから」
「約束?」
「そう」
伊理穂が何かを思い出すように瞳を伏せて言う。
「昔、洋平と二人でケガして入院した事があったでしょう?」
ちょうどさっき思い出していたことだ。
洋平は、ああ、と相槌をうつ。
「あのときにお父さんに言われたの。今後、もし洋平と付き合っていくなら、こういうことがもっと増えるかもしれないって。お前はそれを覚悟しないといけないよって。もしかしたら、この次はもっとひどい目にあうかもしれない。……女の子でいることを利用された、悪質なことをされるかもしれないって……」
「…………」
「そうなった時にね、もしもわたしが助けにこれなかった洋平を恨むかもしれないと思うなら、今すぐ洋平から離れなさいって、お父さんそう言ってた。それは洋平には責任のないことだからって。わたしが洋平の傍にいることを選んだ結果そうなって、それを受け入れられないと思うなら、今すぐ洋平の傍から離れなさいって。自分の選択、行動には自分で責任を取りなさいって、お父さんそう言ってた。わたしはその言葉をよく考えて、それでも洋平の傍にいたいと思ったの。その気持ちは今も変わらないもの。だから、わたしはどんなことになっても後悔しないよ。いまだってしてない」
「……伊理穂」
「それに、今回のことは洋平のせいと違うし」
「……それは、そうだけど。ったく、お前の親父さんには、敵わねえよなあ……」
洋平は、まいったように眉尻を下げて、肺の底から深く深く息を吐き出した。
(くそっ……)
狂ったように胸から込み上げてくる感情を抑えようとして、でもできなくて、洋平はその衝動のままに伊理穂を強く抱きしめた。
腕の中で、伊理穂が驚いたように声をあげる。
「よ、洋平……? どうしたの、苦しいよ……っ」
「伊理穂……!」
溢れる想いをせき止めるように名前を呼んで、さらにきつく、伊理穂の体を腕の中に閉じ込める。
「なあ、伊理穂。もしもそんなことになったら、オレが後悔するんだよ」
「!」
腕の中で、伊理穂がハッと息を吸い込んだ。
洋平は少しだけ腕の力を緩めて、だけど伊理穂を腕から開放せずに言う。
「オレも……本当は、こんな不良、お前の傍からとっとと離れた方が良いってわかってる。だけどそれでも、お前のこと守るって誓って、お前の傍にいる事を選んだオレの選択を、後悔させないでくれ……」
「洋平……」
戸惑うような声を出す伊理穂に、胸がつぶれそうになりながら、洋平は声が震えないように必死で言葉を続ける。
「確かに、お前の言うとおり、お前の行動に責任を取れるのはお前だけかもしれない。でも、オレだって、お前がそんなことになったら自分を責めちゃうだろ? なんであの時、伊理穂の傍を離れておかなかったんだとか、どうしてあの日体育館に行かなかったんだとか、さ。すげー後悔するよ。立ち直れねぇよ。――だからさ、お前はそういうことちゃんと知ってろよ。知ってる上で、自分の行動を選択してくれ。……頼むから」
「洋平……! ――ごめん、うん、わかった」
伊理穂が、神妙に頷く。
洋平は、半信半疑でそれに訊き返す。
「……本当にわかった?」
「うん。もう軽はずみな行動はしない。ちゃんと、自分自身のことも大事にする」
「――よし」
洋平は伊理穂を体から離すと、優しく微笑んでその頭を撫でた。
伊理穂が嬉しそうに瞳を閉じる。
洋平はその顔を見て、再び泣きたい気持ちに襲われた。
大切に想う気持ちはお互い同じなのに、それでも決して交わる事のない自分と伊理穂の気持ちが、胸を引き裂かれるくらいに苦しかった。
To be continued…
「平気だもん!」
「あ!?」
「洋平のためだったら、平気。自分がどうかなるくらい、わたし、ガマンできるもん!」
「お……まえ、何言ってんだよ!? 正気かよ!」
「正気!」
「バッカじゃねえの、そんなの! ダメに決まってんだろ! なんでオレなんかのために……!」
「洋平は、だって大切な幼馴染みだもん! 洋平には幸せに笑っていて欲しいし、それをわたしは守りたい!」
「――!」
昔と変わらず、凛とした表情でそんなことを言ってくる伊理穂に、洋平は思わず顔を赤らめた。
嬉しさと同時に、狂おしいくらいの切なさが胸に溢れてきて、洋平は泣きたい気持ちになった。
それと気付かれないように、洋平は顔を思いっきり背けて、不機嫌な声を出す。
「だけど伊理穂。そんなことになったら、オレはお前の親父さんと千鶴さんに、どう顔向けすりゃあいいんだよ……!」
「それは、大丈夫」
「は?」
きっぱりと言ってくる伊理穂に、洋平は顔をしかめた。
「大丈夫って、んなわけねえだろ」
「大丈夫だもん。わたし、お父さんと約束したから」
「約束?」
「そう」
伊理穂が何かを思い出すように瞳を伏せて言う。
「昔、洋平と二人でケガして入院した事があったでしょう?」
ちょうどさっき思い出していたことだ。
洋平は、ああ、と相槌をうつ。
「あのときにお父さんに言われたの。今後、もし洋平と付き合っていくなら、こういうことがもっと増えるかもしれないって。お前はそれを覚悟しないといけないよって。もしかしたら、この次はもっとひどい目にあうかもしれない。……女の子でいることを利用された、悪質なことをされるかもしれないって……」
「…………」
「そうなった時にね、もしもわたしが助けにこれなかった洋平を恨むかもしれないと思うなら、今すぐ洋平から離れなさいって、お父さんそう言ってた。それは洋平には責任のないことだからって。わたしが洋平の傍にいることを選んだ結果そうなって、それを受け入れられないと思うなら、今すぐ洋平の傍から離れなさいって。自分の選択、行動には自分で責任を取りなさいって、お父さんそう言ってた。わたしはその言葉をよく考えて、それでも洋平の傍にいたいと思ったの。その気持ちは今も変わらないもの。だから、わたしはどんなことになっても後悔しないよ。いまだってしてない」
「……伊理穂」
「それに、今回のことは洋平のせいと違うし」
「……それは、そうだけど。ったく、お前の親父さんには、敵わねえよなあ……」
洋平は、まいったように眉尻を下げて、肺の底から深く深く息を吐き出した。
(くそっ……)
狂ったように胸から込み上げてくる感情を抑えようとして、でもできなくて、洋平はその衝動のままに伊理穂を強く抱きしめた。
腕の中で、伊理穂が驚いたように声をあげる。
「よ、洋平……? どうしたの、苦しいよ……っ」
「伊理穂……!」
溢れる想いをせき止めるように名前を呼んで、さらにきつく、伊理穂の体を腕の中に閉じ込める。
「なあ、伊理穂。もしもそんなことになったら、オレが後悔するんだよ」
「!」
腕の中で、伊理穂がハッと息を吸い込んだ。
洋平は少しだけ腕の力を緩めて、だけど伊理穂を腕から開放せずに言う。
「オレも……本当は、こんな不良、お前の傍からとっとと離れた方が良いってわかってる。だけどそれでも、お前のこと守るって誓って、お前の傍にいる事を選んだオレの選択を、後悔させないでくれ……」
「洋平……」
戸惑うような声を出す伊理穂に、胸がつぶれそうになりながら、洋平は声が震えないように必死で言葉を続ける。
「確かに、お前の言うとおり、お前の行動に責任を取れるのはお前だけかもしれない。でも、オレだって、お前がそんなことになったら自分を責めちゃうだろ? なんであの時、伊理穂の傍を離れておかなかったんだとか、どうしてあの日体育館に行かなかったんだとか、さ。すげー後悔するよ。立ち直れねぇよ。――だからさ、お前はそういうことちゃんと知ってろよ。知ってる上で、自分の行動を選択してくれ。……頼むから」
「洋平……! ――ごめん、うん、わかった」
伊理穂が、神妙に頷く。
洋平は、半信半疑でそれに訊き返す。
「……本当にわかった?」
「うん。もう軽はずみな行動はしない。ちゃんと、自分自身のことも大事にする」
「――よし」
洋平は伊理穂を体から離すと、優しく微笑んでその頭を撫でた。
伊理穂が嬉しそうに瞳を閉じる。
洋平はその顔を見て、再び泣きたい気持ちに襲われた。
大切に想う気持ちはお互い同じなのに、それでも決して交わる事のない自分と伊理穂の気持ちが、胸を引き裂かれるくらいに苦しかった。
To be continued…