9
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
花道が言葉を失った。
それを見て、伊理穂がキッと鋭く三井を睨むと、三井があやしく笑いながら一歩伊理穂に近寄った。
「へえ。なんだ、お前。やっぱり水戸のオンナなんじゃねえか」
「そんなんじゃない。幼馴染みだって言ってるでしょ!?」
「ふうん。幼馴染みねえ……。ハッ、バッカだな、お前。オレたちが怖くないのかよ」
「怖いに決まってるじゃない……!」
今だって体の震えが止まらない。この後自分の身に起こることを考えると、気が狂いそうなほどの恐怖に襲われる。
だけど。
伊理穂は強い意志の光を宿した瞳で、三井を睨みすえた。
「洋平の為だったら、わたしはなんだってする」
「!」
三井が驚いたように目を瞠った。
「――へえ、健気だな。そういう女、嫌いじゃないぜ」
言うと、三井が伊理穂の頬に触れた。
伊理穂は顔を勢いよく横向けて、その手に思いっきり噛み付く。
「痛えな! 何しやがる!」
「っ!」
三井は怒りに任せて伊理穂の顔を殴ると、鉄男を鋭くにらみつけた。
頬がずきずきと痛い。
「鉄男! もっとしっかり押さえてろよ!」
「はは。威勢のいい姫さんだな。了解したぜ」
鉄男は伊理穂を後ろから羽交い絞めにしたままで、その手を伊理穂の顎に添えた。
顔を動かせないように、力を加えて固定する。
(! 顔、動かせない……っ! 洋平……!)
来て欲しくないと心の底から願っているのに、同じくらい強く洋平に助けを求めてしまう自分の矛盾に伊理穂は内心腹を立てた。
三井の顔が迫る。
逃げられない。
伊理穂の腕が折られるのを恐れて、花道も流川も、他の部員も全員動けなかった。
(キス、はじめてなのに……! いや、洋平! 洋平っ!)
「~~~~っ!」
伊理穂の視界がぼんやりと滲んだ。
それに気付いた三井が、くすりと笑って頬を流れる涙をぬぐう。
「泣き顔も綺麗で、そそられるぜ。安心しな、すぐによくしてやっからよ」
誰がお前なんかに! 言ってやりたいのに、もう恐怖で声も出なかった。
「……っ!」
(洋平っ!)
伊理穂が覚悟を決めて、きつく瞳を閉じたそのとき。
突然、伊理穂の前を一陣の風が吹き抜けた。
驚いて目を開けた伊理穂の視界に、どっかからか飛んできた誰かに蹴り飛ばされる三井が映る。
「!? おい、三井……!」
鉄男が驚いて声をあげた。
その拍子に伊理穂を拘束する鉄男の腕が緩まった。
その隙を見逃さず、今度は鉄男に向けて大楠が舞い降りて飛び蹴りをかました。
「ぐおっ」
「きゃあ!」