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今日も湘北バスケ部の放課後練習は活気がいい。
伊理穂はシャトルランをする部員たちを見ながら、にこにこと顔をほころばせた。
隣りではタイムキーパーの彩子が、ときどき声を張り上げて部員たちにテンポチェンジの合図を出している。
と、そのとき。体育館横にある鉄扉のうちのひとつ、そこで部活見学をしていた三人組から伊理穂は手招きをされた。
「?」
(あれは、流川くんの親衛隊……?)
たしか、いつも欠かさず流川の練習を見に来る人たちだった。
伊理穂は首を傾げると、彩子に一言言って彼女たちの元へ向かった。
伊理穂が来ると、彼女たちはそのまま体育館裏まで伊理穂を連れ出した。
伊理穂はのんびりその後を着いて行きながら、思考をめぐらせる。
(話ってなんだろう? そういえばわたし、この人たちの誰も名前知らないな)
なんて呼んだらいいんだろう……? なんてことを考えていると、急に前を行く三人が足を止めて伊理穂を振り返った。
「わっ」
伊理穂も思わず反射的に足を止める。
「話ってなに?」
首を傾げながら伊理穂が聞くと、彼女たちがお互いのからだを腕で小突き始めた。
ひそひそと低く抑えた声で囁きあう。
「ちょっと、あんたがいいなさいよ!」
「どうしてわたしなのよ! あんたが言いなさいよ!」
「ぎゃー、ムリムリ、ムリに決まってる! だってあの子のバックにはあのガラの悪い不良たちがついてんのよ!」
「じゃあ、なんで呼び出したりなんかすんのよっ!」
「だって、あの子流川くんとあんなに仲良くして調子に乗って許せないんだもの!」
「そーよ、その通りよ!」
「がぜん、その通りよ!」
「じゃああんたたち言いなさいよ!」
「「ムリー!」」
なにやらこそこそやっているが、その内容までは聞き取れずに、伊理穂が眉を寄せる。
「あの……? お話がないようならわたし、戻るけど……? シャトルランもそろそろ終わるし」
言いながら伊理穂は腕時計を見た。
シャトルランが終われば、次はフットワーク。
それが終われば今度は部員たちはトライアングルパス、花道は隅っこで基礎練習だ。
そのときまでには体育館に戻っていなくては。
他にも準備することもあるし。
思って伊理穂は顔をあげる。
と、三人の中のひとり、髪を耳の両脇で二つに結わえている女の子が、焦ったように口を開いた。
「あ、あのねっ」
「うん?」
「つまり……! わたしたちが言いたいのはっ!」
「言いたいのは……?」
二つのわけの子が、覚悟を決めたように大きく息を吸い込んで、言う。
「あっ、あなたの胃は健康かってことなの!」
「……は?」
伊理穂はぽかーんと大口をあけた。
他の二人も、驚いたように二つわけの女の子を凝視している。
わけがわからなくて、伊理穂は頭を混乱させた。
わざわざこんなところに呼び出しておいて言うことだろうか?
だけど、向こうはこちらの健康を気遣ってくれている。
むげにするわけにもいかず、伊理穂は要領を得ない表情のまま頷いた。
「う、うん……。健康、だよ。ありがとう」
「な、ならいいのよっ! 行きましょう、ふたりとも」
二つわけの子はそれだけ言うと、他の二人を伴って足早にその場を去っていた。
伊理穂はしばらくその場で呆然と立ち尽くしていたけれど、ハッと我に返ると、急いで体育館へ足を向けた。
伊理穂はシャトルランをする部員たちを見ながら、にこにこと顔をほころばせた。
隣りではタイムキーパーの彩子が、ときどき声を張り上げて部員たちにテンポチェンジの合図を出している。
と、そのとき。体育館横にある鉄扉のうちのひとつ、そこで部活見学をしていた三人組から伊理穂は手招きをされた。
「?」
(あれは、流川くんの親衛隊……?)
たしか、いつも欠かさず流川の練習を見に来る人たちだった。
伊理穂は首を傾げると、彩子に一言言って彼女たちの元へ向かった。
伊理穂が来ると、彼女たちはそのまま体育館裏まで伊理穂を連れ出した。
伊理穂はのんびりその後を着いて行きながら、思考をめぐらせる。
(話ってなんだろう? そういえばわたし、この人たちの誰も名前知らないな)
なんて呼んだらいいんだろう……? なんてことを考えていると、急に前を行く三人が足を止めて伊理穂を振り返った。
「わっ」
伊理穂も思わず反射的に足を止める。
「話ってなに?」
首を傾げながら伊理穂が聞くと、彼女たちがお互いのからだを腕で小突き始めた。
ひそひそと低く抑えた声で囁きあう。
「ちょっと、あんたがいいなさいよ!」
「どうしてわたしなのよ! あんたが言いなさいよ!」
「ぎゃー、ムリムリ、ムリに決まってる! だってあの子のバックにはあのガラの悪い不良たちがついてんのよ!」
「じゃあ、なんで呼び出したりなんかすんのよっ!」
「だって、あの子流川くんとあんなに仲良くして調子に乗って許せないんだもの!」
「そーよ、その通りよ!」
「がぜん、その通りよ!」
「じゃああんたたち言いなさいよ!」
「「ムリー!」」
なにやらこそこそやっているが、その内容までは聞き取れずに、伊理穂が眉を寄せる。
「あの……? お話がないようならわたし、戻るけど……? シャトルランもそろそろ終わるし」
言いながら伊理穂は腕時計を見た。
シャトルランが終われば、次はフットワーク。
それが終われば今度は部員たちはトライアングルパス、花道は隅っこで基礎練習だ。
そのときまでには体育館に戻っていなくては。
他にも準備することもあるし。
思って伊理穂は顔をあげる。
と、三人の中のひとり、髪を耳の両脇で二つに結わえている女の子が、焦ったように口を開いた。
「あ、あのねっ」
「うん?」
「つまり……! わたしたちが言いたいのはっ!」
「言いたいのは……?」
二つのわけの子が、覚悟を決めたように大きく息を吸い込んで、言う。
「あっ、あなたの胃は健康かってことなの!」
「……は?」
伊理穂はぽかーんと大口をあけた。
他の二人も、驚いたように二つわけの女の子を凝視している。
わけがわからなくて、伊理穂は頭を混乱させた。
わざわざこんなところに呼び出しておいて言うことだろうか?
だけど、向こうはこちらの健康を気遣ってくれている。
むげにするわけにもいかず、伊理穂は要領を得ない表情のまま頷いた。
「う、うん……。健康、だよ。ありがとう」
「な、ならいいのよっ! 行きましょう、ふたりとも」
二つわけの子はそれだけ言うと、他の二人を伴って足早にその場を去っていた。
伊理穂はしばらくその場で呆然と立ち尽くしていたけれど、ハッと我に返ると、急いで体育館へ足を向けた。