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『つ、月瀬……。すげー顔……っ』
『え……え!? いや、ちがう、これはだって流川くんが変なこと言うからっ!』
伊理穂の顔に一気に熱が集まった。
恥ずかしい。
そんなにおかしな表情だったろうか。
まだ笑いやまない流川を見て、伊理穂の目に羞恥からじんわり涙が浮かぶ。
流川はしばらくの間肩を震わせていると、ようやく笑いの波がおさまったのか、その顔をあげた。
伊理穂の目尻に浮かんだ涙に気付いて、流川はそっとそれを人差し指で拭う。
伊理穂の胸が今度はどきんと脈打った。
『る、流川くん……』
『これはオレがやる』
『え?』
『月瀬、変なもの食って当たったんだろ。水仕事なんてすんじゃねー』
『?』
(変なもの? 当たった?)
そこまで考えて、伊理穂はハッと気付いた。
(つまり洋平が、最近のわたしは変なもの食べて当たったから様子がおかしいんだよ……とでも説明してくれたってこと?)
数日間も影響を及ぼすなんていったいどんな破壊力の食べ物だよ、と心の中で洋平に突っ込むが、流川がなにも疑問に思ってないようなので、それはそれでいいことにしよう。
伊理穂はそのまま心の中で洋平に感謝すると、流川の手からドリンクボトルを奪い取った。
流川がムッと唇を尖らせて伊理穂を見る。
『心配してくれてありがとう、流川くん。でももう、調子よくなったから』
『? そーか? 今日も変だった』
『あー……あ、そうそう、お昼休憩に薬飲んだの。そしたらもうすっかり!』
ごまかすように言う伊理穂を、流川は感情の読めない顔でじっと見つめた。
流川の大きな手が伊理穂の顔に伸びてきて、そっと頬に添えられる。
『!』
どきんと心臓が大きく拍動して、伊理穂のからだはまるで石になったみたいに固まった。
流川はゆっくり親指の腹で伊理穂の頬を撫でると、安心したようにホッと息をついた。
『たしかに、顔色は悪くねー。……でもムリすんな。これはオレがやるから、月瀬はそこで座って待ってろ』
『で、でも……』
『言い訳すんじゃねー。わかったら座れ』
伊理穂の手にあったドリンクボトルは、再び流川に奪われた。
この話はもう終わりとばかりに流川は無言で水道に向き直ると、じゃばじゃばと水音を立ててドリンクボトルを洗い出した。
『……ありがとう、流川くん』
『…………』
* * *
ふとそのときの光景が頭によみがえってきて、伊理穂の口許が緩んだ。
あの後、流川にありがとうと伝えたときの、流川の無言の背中がとても優しくて温かかった。
好きだなあと思った。
その背中をいつまでも見ていたいと思った。
その日の夜に洋平にそのことを報告すると、洋平は眉尻を下げて微笑んで『よかったな』と言ってくれたのだ。
「伊理穂……?」
そんなことを考えながらにやにやしていると、訝しそうな結子の声が間近で聞こえた。
驚いてそちらへ振り向くと、お弁当を持った結子が怪訝そうに眉を寄せて伊理穂のことをじっと見ていた。
伊理穂は慌てて表情を取り繕うと、ごまかすように結子に笑顔を向ける。
「あ、ゆ、結ちゃん! お昼だよね、お弁当食べようお弁当!」
「うん……」
『え……え!? いや、ちがう、これはだって流川くんが変なこと言うからっ!』
伊理穂の顔に一気に熱が集まった。
恥ずかしい。
そんなにおかしな表情だったろうか。
まだ笑いやまない流川を見て、伊理穂の目に羞恥からじんわり涙が浮かぶ。
流川はしばらくの間肩を震わせていると、ようやく笑いの波がおさまったのか、その顔をあげた。
伊理穂の目尻に浮かんだ涙に気付いて、流川はそっとそれを人差し指で拭う。
伊理穂の胸が今度はどきんと脈打った。
『る、流川くん……』
『これはオレがやる』
『え?』
『月瀬、変なもの食って当たったんだろ。水仕事なんてすんじゃねー』
『?』
(変なもの? 当たった?)
そこまで考えて、伊理穂はハッと気付いた。
(つまり洋平が、最近のわたしは変なもの食べて当たったから様子がおかしいんだよ……とでも説明してくれたってこと?)
数日間も影響を及ぼすなんていったいどんな破壊力の食べ物だよ、と心の中で洋平に突っ込むが、流川がなにも疑問に思ってないようなので、それはそれでいいことにしよう。
伊理穂はそのまま心の中で洋平に感謝すると、流川の手からドリンクボトルを奪い取った。
流川がムッと唇を尖らせて伊理穂を見る。
『心配してくれてありがとう、流川くん。でももう、調子よくなったから』
『? そーか? 今日も変だった』
『あー……あ、そうそう、お昼休憩に薬飲んだの。そしたらもうすっかり!』
ごまかすように言う伊理穂を、流川は感情の読めない顔でじっと見つめた。
流川の大きな手が伊理穂の顔に伸びてきて、そっと頬に添えられる。
『!』
どきんと心臓が大きく拍動して、伊理穂のからだはまるで石になったみたいに固まった。
流川はゆっくり親指の腹で伊理穂の頬を撫でると、安心したようにホッと息をついた。
『たしかに、顔色は悪くねー。……でもムリすんな。これはオレがやるから、月瀬はそこで座って待ってろ』
『で、でも……』
『言い訳すんじゃねー。わかったら座れ』
伊理穂の手にあったドリンクボトルは、再び流川に奪われた。
この話はもう終わりとばかりに流川は無言で水道に向き直ると、じゃばじゃばと水音を立ててドリンクボトルを洗い出した。
『……ありがとう、流川くん』
『…………』
* * *
ふとそのときの光景が頭によみがえってきて、伊理穂の口許が緩んだ。
あの後、流川にありがとうと伝えたときの、流川の無言の背中がとても優しくて温かかった。
好きだなあと思った。
その背中をいつまでも見ていたいと思った。
その日の夜に洋平にそのことを報告すると、洋平は眉尻を下げて微笑んで『よかったな』と言ってくれたのだ。
「伊理穂……?」
そんなことを考えながらにやにやしていると、訝しそうな結子の声が間近で聞こえた。
驚いてそちらへ振り向くと、お弁当を持った結子が怪訝そうに眉を寄せて伊理穂のことをじっと見ていた。
伊理穂は慌てて表情を取り繕うと、ごまかすように結子に笑顔を向ける。
「あ、ゆ、結ちゃん! お昼だよね、お弁当食べようお弁当!」
「うん……」