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「流川くん、はい現文のノート」
「サンキュ」
現文の授業後、昼休みに突入してすぐ、伊理穂は書き終わったノートを閉じた。それをそのまま隣りの席の流川に差し出す。
流川はまだ開ききらない目をごしごしとこすりながら、差し出されたそのノートを受け取ると、小さくお礼を言った。
その様子に、伊理穂は微笑する。
伊理穂が流川と普通に話せるようになったのはつい昨日のことだった。
あれは、洋平に相談した金曜日から二日後の日曜日。
伊理穂はその日のことに思いを馳せる。
* * *
伊理穂は、ひどく落ち込んだ様子でドリンクボトルを洗っていた。
一昨日洋平にもらったアドバイスを思い出して、なんとか流川と普通に話そうとするのだけど、どうにもうまくいかない。
重いため息を吐いて、伊理穂が次のドリンクボトルを取ろうとしたときだった。
伊理穂の視界に、突然白い腕が二本、にゅっと伸びてきた。
それはおもむろに別のドリンクボトルを掴むと、伊理穂と同じようにざばざばと洗い出す。
(え、誰……)
振り向くと、腕の正体は流川だった。
『る、流川くん!? どうしたの、こんなところに来て……! 今自主練中じゃあ……?』
『……昨日』
『え?』
流川がドリンクボトルを洗う手を止めずに言う。
『昨日、水戸から聞いた』
『え、洋平?』
流川はドリンクボトルをひとつ洗い終えると、伊理穂を見た。
じっと見つめてくる流川の瞳に射竦められて、伊理穂の胸がぎくりとざわめく。
洋平に一体何を聞いたんだろう。
(洋平のことだから、まさか流川くんにわたしの気持ちをバラしたりとかそういうことはないと思うけど……。でもそうなるとほんとうに何を聞いたの流川くんッ!!)
皆目検討もつかなくて伊理穂の胸がざわざわと波打つ。
そもそもなんで学校が休みの日曜日に洋平と流川が会話をするんだ。
(まさか、二人はッ仲良し~、とか)
小さい頃に見た教育番組の懐かしのメロディにのせて考える。が、伊理穂は一瞬後すぐにその考えを打ち消した。
もしも本当に仲良しだったら、洋平が教えてくれるはずだ。
それに土曜日の夜だって洋平と会ったけれど、流川のことなんて一言も言ってなかった。
ただほっぺに殴られた後が残ってたくらいで……。
(洋平、あの時誰に殴られたか教えてくれなかったけど、まさか流川くんに……じゃないよね?)
それこそ結びつかない。
伊理穂はざわつく胸を落ち着けるように一度深呼吸すると、ゆっくり口を開いた。
『えと、洋平に聞いたって……何を?』
『腹のこと』
『?』
伊理穂は流川にもわかるくらい顔をおもいっきりゆがめた。
ますます意味がわからない。
腹のこと? 腹ってなんだ?
と。
『プッ』
それまで真剣な表情で伊理穂を見つめていた流川が吹き出した。
そのまま俯いて、肩を揺らしてくつくつと笑い続ける。
『あ、えーと……流川くん?』
「サンキュ」
現文の授業後、昼休みに突入してすぐ、伊理穂は書き終わったノートを閉じた。それをそのまま隣りの席の流川に差し出す。
流川はまだ開ききらない目をごしごしとこすりながら、差し出されたそのノートを受け取ると、小さくお礼を言った。
その様子に、伊理穂は微笑する。
伊理穂が流川と普通に話せるようになったのはつい昨日のことだった。
あれは、洋平に相談した金曜日から二日後の日曜日。
伊理穂はその日のことに思いを馳せる。
* * *
伊理穂は、ひどく落ち込んだ様子でドリンクボトルを洗っていた。
一昨日洋平にもらったアドバイスを思い出して、なんとか流川と普通に話そうとするのだけど、どうにもうまくいかない。
重いため息を吐いて、伊理穂が次のドリンクボトルを取ろうとしたときだった。
伊理穂の視界に、突然白い腕が二本、にゅっと伸びてきた。
それはおもむろに別のドリンクボトルを掴むと、伊理穂と同じようにざばざばと洗い出す。
(え、誰……)
振り向くと、腕の正体は流川だった。
『る、流川くん!? どうしたの、こんなところに来て……! 今自主練中じゃあ……?』
『……昨日』
『え?』
流川がドリンクボトルを洗う手を止めずに言う。
『昨日、水戸から聞いた』
『え、洋平?』
流川はドリンクボトルをひとつ洗い終えると、伊理穂を見た。
じっと見つめてくる流川の瞳に射竦められて、伊理穂の胸がぎくりとざわめく。
洋平に一体何を聞いたんだろう。
(洋平のことだから、まさか流川くんにわたしの気持ちをバラしたりとかそういうことはないと思うけど……。でもそうなるとほんとうに何を聞いたの流川くんッ!!)
皆目検討もつかなくて伊理穂の胸がざわざわと波打つ。
そもそもなんで学校が休みの日曜日に洋平と流川が会話をするんだ。
(まさか、二人はッ仲良し~、とか)
小さい頃に見た教育番組の懐かしのメロディにのせて考える。が、伊理穂は一瞬後すぐにその考えを打ち消した。
もしも本当に仲良しだったら、洋平が教えてくれるはずだ。
それに土曜日の夜だって洋平と会ったけれど、流川のことなんて一言も言ってなかった。
ただほっぺに殴られた後が残ってたくらいで……。
(洋平、あの時誰に殴られたか教えてくれなかったけど、まさか流川くんに……じゃないよね?)
それこそ結びつかない。
伊理穂はざわつく胸を落ち着けるように一度深呼吸すると、ゆっくり口を開いた。
『えと、洋平に聞いたって……何を?』
『腹のこと』
『?』
伊理穂は流川にもわかるくらい顔をおもいっきりゆがめた。
ますます意味がわからない。
腹のこと? 腹ってなんだ?
と。
『プッ』
それまで真剣な表情で伊理穂を見つめていた流川が吹き出した。
そのまま俯いて、肩を揺らしてくつくつと笑い続ける。
『あ、えーと……流川くん?』