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空気が揺らいで、花道が動揺したのが伝わってきた。
洋平はそれに苦笑を深くする。
「ほんと……やってらんねえよなあ。……オレだって、伊理穂が好きなのに。ずっとずっと伊理穂のことだけを想ってきたのに、こうやっていきなり現れた男に横からかっさらわれるなんてよ」
「…………」
花道は黙って洋平の話を聞いてくれている。
洋平はそれが心地よくて、胸の底にどす黒くたまった膿を吐き出すように、言葉を続けた。
「覚悟は、してたんだ。アイツの目にオレがどんな風に映ってるのかわかってたから。だからこんな日が来ることも、ちゃんと覚悟してた……つもりだった。だけど、実際その日が近づけば近づくほどこんなに苦しいなんて、覚悟なんか全然出来てなかったってことだよな……」
「洋平……」
「花道。お前はさ、伊理穂がオレと一緒に寝てる事知ってるだろ?」
洋平のその問いに、花道が小さく頷いた。
この事実を知ってるのは花道だけだ。
幼馴染みとはいえ、この歳になってまで男女がひとつのベッドで寝ているなど、異常すぎて他の誰にも言えない。
伊理穂のためにも、軽々しく口にはできない。
「高校生になっても、流川に惹かれはじめてもまだ、アイツ、オレと寝るのをやめようとしねえんだ。苦しくて……この前、初めて寝てるアイツにキスしちまった」
「……!」
今でもまだ鮮明に思い出せる。
やわらかい、伊理穂の唇。
触れた瞬間に頭が真っ白になって、それと同時に苦い思いが胸に込み上げた、あの時。
どうして。
「だから、もうやめてくれって言ったんだ。一緒に寝るのは異常だからって。オレだってオトコなんだからって……」
伊理穂の細い肩。華奢な腰。なのにやわらかなからだ。
全てが洋平を掻き立ててどうしようもないのに、伊理穂はそんなこと露と知らずに無邪気に笑いかけてくる。
その信頼が、今では呼吸を奪うほどにつらいものなのに。
「……伊理穂は、どうしたんだ?」
「はは。まったく相手にされなかったよ。わたしたちの間に今さら男も女もないでしょ、だってさ」
伊理穂の口調を真似て、洋平はわざとおどけて言う。
だけどそれを見つめる花道の瞳があまりにも真剣で、洋平はまいったように眉を下げた。
ダメだ。そんな瞳で見つめられたら、泣きたくなってしまう。
堪えていたものが、あふれてしまいそうになる。
洋平は花道の目をそれ以上見ていられなくて、顔を伏せた。
足元に落ちる自分の影。
その胸の辺りに足を置いて、そこにある想いをすりつぶすように、ぎゅっと地面を踏みしめる。
「洋平」
「ん?」
「ツラくないのか?」
「……ツラいよ。決まってんだろ」
「……すまん」
本当にすまなそうに謝ってくる花道に、洋平は苦笑を零す。
そうして洋平は空を見上げた。
相変わらず空は真っ青で眩しくて、目に、心に突き刺さる。
洋平はそんな空から逃げるように瞳を閉じた。
ポツリと、呟く。
「ほんとうはわかってんだ。こんなオレが一番、伊理穂の傍にいる資格なんてないこと」
「…………」
「でも、だけど」
この想いが、一生君に届かなくてもいいから。
この手が二度と、君に触れられなくなってもいいから。
それでも。
「……それでもオレは、伊理穂の傍にいたいんだ……」
「洋平……」
吐き出した洋平の言葉も、気遣うような花道の声も、この場には不似合いなほど爽やかな空にすうっと静かに吸い込まれていった。
To be continued…
洋平はそれに苦笑を深くする。
「ほんと……やってらんねえよなあ。……オレだって、伊理穂が好きなのに。ずっとずっと伊理穂のことだけを想ってきたのに、こうやっていきなり現れた男に横からかっさらわれるなんてよ」
「…………」
花道は黙って洋平の話を聞いてくれている。
洋平はそれが心地よくて、胸の底にどす黒くたまった膿を吐き出すように、言葉を続けた。
「覚悟は、してたんだ。アイツの目にオレがどんな風に映ってるのかわかってたから。だからこんな日が来ることも、ちゃんと覚悟してた……つもりだった。だけど、実際その日が近づけば近づくほどこんなに苦しいなんて、覚悟なんか全然出来てなかったってことだよな……」
「洋平……」
「花道。お前はさ、伊理穂がオレと一緒に寝てる事知ってるだろ?」
洋平のその問いに、花道が小さく頷いた。
この事実を知ってるのは花道だけだ。
幼馴染みとはいえ、この歳になってまで男女がひとつのベッドで寝ているなど、異常すぎて他の誰にも言えない。
伊理穂のためにも、軽々しく口にはできない。
「高校生になっても、流川に惹かれはじめてもまだ、アイツ、オレと寝るのをやめようとしねえんだ。苦しくて……この前、初めて寝てるアイツにキスしちまった」
「……!」
今でもまだ鮮明に思い出せる。
やわらかい、伊理穂の唇。
触れた瞬間に頭が真っ白になって、それと同時に苦い思いが胸に込み上げた、あの時。
どうして。
「だから、もうやめてくれって言ったんだ。一緒に寝るのは異常だからって。オレだってオトコなんだからって……」
伊理穂の細い肩。華奢な腰。なのにやわらかなからだ。
全てが洋平を掻き立ててどうしようもないのに、伊理穂はそんなこと露と知らずに無邪気に笑いかけてくる。
その信頼が、今では呼吸を奪うほどにつらいものなのに。
「……伊理穂は、どうしたんだ?」
「はは。まったく相手にされなかったよ。わたしたちの間に今さら男も女もないでしょ、だってさ」
伊理穂の口調を真似て、洋平はわざとおどけて言う。
だけどそれを見つめる花道の瞳があまりにも真剣で、洋平はまいったように眉を下げた。
ダメだ。そんな瞳で見つめられたら、泣きたくなってしまう。
堪えていたものが、あふれてしまいそうになる。
洋平は花道の目をそれ以上見ていられなくて、顔を伏せた。
足元に落ちる自分の影。
その胸の辺りに足を置いて、そこにある想いをすりつぶすように、ぎゅっと地面を踏みしめる。
「洋平」
「ん?」
「ツラくないのか?」
「……ツラいよ。決まってんだろ」
「……すまん」
本当にすまなそうに謝ってくる花道に、洋平は苦笑を零す。
そうして洋平は空を見上げた。
相変わらず空は真っ青で眩しくて、目に、心に突き刺さる。
洋平はそんな空から逃げるように瞳を閉じた。
ポツリと、呟く。
「ほんとうはわかってんだ。こんなオレが一番、伊理穂の傍にいる資格なんてないこと」
「…………」
「でも、だけど」
この想いが、一生君に届かなくてもいいから。
この手が二度と、君に触れられなくなってもいいから。
それでも。
「……それでもオレは、伊理穂の傍にいたいんだ……」
「洋平……」
吐き出した洋平の言葉も、気遣うような花道の声も、この場には不似合いなほど爽やかな空にすうっと静かに吸い込まれていった。
To be continued…