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カッと大楠の顔が一瞬で赤く染まる。
「洋平、てめえっ!」
弾ける様な衝撃とともに、大楠の拳が洋平の顔に沈んだ。
頬の内側が切れたのか、口の中に鉄のような味が広がる。
洋平はそれをペッと地面に吐き出すと、顔を伏せてその赤い塊を見つめた。
大楠のパンチは、避けようと思えば避けられた。
でもそうしなかったのは、洋平自身、ふがいなくて情けない自分に嫌気が差して、誰かに殴られたかったからかもしれない。
(こんな顔で帰ったら、伊理穂がまた心配するな)
それでも心に浮かぶのは伊理穂のことで……。
「……たまんねえよな……」
苦しみに耐えるように洋平は言葉を吐き出した。
まだ殴りかかろうとする大楠を抑える野間と高宮の声が聞こえる。
胸が苦しくて震えて、気を抜いたら視界が緩んでしまいそうでたまらなかった。
結局そのままパチンコなんてする気にならず、新台の整理券は後ろに並んでいた別の客に渡して、洋平は花道と二人、公園で缶コーヒーを呷っていた。
ちなみに大楠も、野間と高宮に連れられてパチンコ屋を去っている。
(アイツ、どうしたかな)
素直な大楠に、洋平の胸に罪悪感がのぼる。
「洋平……」
心配そうに声をかける花道に、洋平はまるで独白のように口を開く。
「はは。大楠……アイツも、ほんとうは伊理穂のことが好きなんだよな……」
大楠の気持ちには、中学の頃から気付いていた。
ひねているようでいて実直な大楠の気持ちなんて洋平からしてみたらバレバレだったけど、当の本人が隠そうと躍起になっているのがわかったから、洋平もそれには気付かないフリをしていた。
大楠が自分と伊理穂がうまくいけばいいと思ってくれていることはわかっていたけど、それが現実にならないと伝えることは、こんな風になるまでとうとう出来なかった。
そう信じてくれる大楠がいることで、もしかしたら自分もほんとうにそうなれるかもしれないと思っていたからかもしれない。
(結局、オレはアイツの気持ちを自分の願掛けに利用してたんだよな……)
最低だな。
口許に自嘲が浮かぶ。
でもそれももう終わりだ。大楠だって、気付いているはずだ。伊理穂の気持ちが誰に向いているのか。伊理穂が誰を想っているのか。
(だからこそ、アイツだってあんなに焦ってるんだ)
洋平はふうと息を吐き出すと、手にしていた缶を口につけた。
傾けたところで、空だと気付く。
少し離れたところにあるゴミ箱にそれを投げたが、淵に嫌われて缶は地面を転がった。
その乾いた音に、洋平は憎々しげに舌打ちをする。
うまくいかない。なにもかも。
「洋平……」
再び聞こえてきた気遣うような花道の声にハッと我に返ると、洋平は苦笑を浮かべた。
「わりぃ……。オレもここんとこちょっと情緒不安定だよな」
「…………」
「なあ、花道。伊理穂……さ、流川のことが好きなんだ」
「!」
「洋平、てめえっ!」
弾ける様な衝撃とともに、大楠の拳が洋平の顔に沈んだ。
頬の内側が切れたのか、口の中に鉄のような味が広がる。
洋平はそれをペッと地面に吐き出すと、顔を伏せてその赤い塊を見つめた。
大楠のパンチは、避けようと思えば避けられた。
でもそうしなかったのは、洋平自身、ふがいなくて情けない自分に嫌気が差して、誰かに殴られたかったからかもしれない。
(こんな顔で帰ったら、伊理穂がまた心配するな)
それでも心に浮かぶのは伊理穂のことで……。
「……たまんねえよな……」
苦しみに耐えるように洋平は言葉を吐き出した。
まだ殴りかかろうとする大楠を抑える野間と高宮の声が聞こえる。
胸が苦しくて震えて、気を抜いたら視界が緩んでしまいそうでたまらなかった。
結局そのままパチンコなんてする気にならず、新台の整理券は後ろに並んでいた別の客に渡して、洋平は花道と二人、公園で缶コーヒーを呷っていた。
ちなみに大楠も、野間と高宮に連れられてパチンコ屋を去っている。
(アイツ、どうしたかな)
素直な大楠に、洋平の胸に罪悪感がのぼる。
「洋平……」
心配そうに声をかける花道に、洋平はまるで独白のように口を開く。
「はは。大楠……アイツも、ほんとうは伊理穂のことが好きなんだよな……」
大楠の気持ちには、中学の頃から気付いていた。
ひねているようでいて実直な大楠の気持ちなんて洋平からしてみたらバレバレだったけど、当の本人が隠そうと躍起になっているのがわかったから、洋平もそれには気付かないフリをしていた。
大楠が自分と伊理穂がうまくいけばいいと思ってくれていることはわかっていたけど、それが現実にならないと伝えることは、こんな風になるまでとうとう出来なかった。
そう信じてくれる大楠がいることで、もしかしたら自分もほんとうにそうなれるかもしれないと思っていたからかもしれない。
(結局、オレはアイツの気持ちを自分の願掛けに利用してたんだよな……)
最低だな。
口許に自嘲が浮かぶ。
でもそれももう終わりだ。大楠だって、気付いているはずだ。伊理穂の気持ちが誰に向いているのか。伊理穂が誰を想っているのか。
(だからこそ、アイツだってあんなに焦ってるんだ)
洋平はふうと息を吐き出すと、手にしていた缶を口につけた。
傾けたところで、空だと気付く。
少し離れたところにあるゴミ箱にそれを投げたが、淵に嫌われて缶は地面を転がった。
その乾いた音に、洋平は憎々しげに舌打ちをする。
うまくいかない。なにもかも。
「洋平……」
再び聞こえてきた気遣うような花道の声にハッと我に返ると、洋平は苦笑を浮かべた。
「わりぃ……。オレもここんとこちょっと情緒不安定だよな」
「…………」
「なあ、花道。伊理穂……さ、流川のことが好きなんだ」
「!」