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洋平は三人のもとに歩くと、列に混じって、誰にともなく問いかけた。
「花道は?」
「オープン直前に来るってよ。今ハルコチャンとシュートの早朝練習中らしいぜ!」
「なんだって、ハルコチャンと!?」
「おいおい、なんだよ、花道のヤロー。まさかハルコチャンとうまくいっちまうんじゃねえだろうな」
「ぎゃはは、それはねえって!」
呑気に笑い合う大楠たちに、洋平はハハハと口の端を持ち上げる。
花道もこんな風に、ゆっくりと自分たちから離れていくんだろう。
伊理穂は大丈夫と言っていたが、洋平にはとてもそうは思えなかった。
身を置く場所が変われば、必然的に生活リズムも変わる。
これまで交わってた線がなくなってしまうのは、しようがないことだ。
慣れなくては。
騒ぎ合う大楠たちに適当に話を合わせながら、洋平は心の中だけで呟く。
花道が去っていくのも。伊理穂が傍からいなくなるのも。
慣れなくては。
ぴゅうと、洋平の心が北風に吹かれたように寒くなった。
「今日は絶対出る気がするぜ!」
「おお、この台今日から解禁だもんなー。くぅう、楽しみだぜっ!」
オープン直前。晴子との練習を終えて合流した花道を入れて五人、今日解禁の新台の整理券を手にしながらそんなことを話していると、ふいに隣りに誰かが立った気配がした。
何の気なしに視線を持ち上げて、洋平は目を瞠る。
「……ウス」
「流川……!」
目の前にいたのは流川だった。
走りこみでもしていたのか、白いTシャツにシンプルなグレーのパーカーを羽織って、首にはタオルをかけている。
普段は血の気のない白い頬も、今は上気して少し赤みを帯びていた。
「このやろルカワァっ! 休みの日までなんの用だ!」
条件反射で流川に掴みかかろうとする花道を大楠たちが慌てて抑える。
洋平はそんな花道にやれやれと片眉を上げると、薄い笑みを流川に向けた。
「よお、流川。どうしたんだ、こんなところで立ち止まって?」
「オメーに話がある」
「オレに?」
なんとなく内容に想像がついて、洋平は大きく嘆息した。
花道は暴れるのをやめて、心配そうに洋平を窺いみる。
それまで花道を抑えるのに必死になっていた大楠たちも、流川のその言葉になんだなんだとやいやい騒ぎ立てた。
流川はそんな彼らに一瞬だけ感情のない一瞥を向けると、すぐに洋平に視線を戻した。
その態度に、花道じゃねえが本当に気にくわねーヤローだぜ! と毒づく大楠を宥めながら、洋平は重い口を開く。
「場所変えるか?」
「いや、すぐ終わるからここでいい」
「そうか? なんだよ、話って」
「月瀬のことだ」
「ああ!?」
伊理穂の名前に、大楠が身を乗り出した。
「なんでテメーが伊理穂ちゃんのこと気にすんだよ」
「おい、大楠」
止める洋平を無視して、大楠が流川の顔ぎりぎりまで顔を寄せて、鋭くガンつける。
流川は怯むことなく間近で大楠の瞳を見返した。
「オメーに言ってねー」
「ああ!?」