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少し悩んだ末に、伊理穂が答える。
洋平はそれに微笑した。
「だろ? じゃあ、流川にどっちの態度を取れば嫌われないですむのかわかるよな?」
「……うん。でも心臓の音が聞こえちゃうかもしれないのはどうすればいいの?」
「逆に聞きたいんだが、お前は今まで生きてきて、他人の心臓の音が空気を伝わって聞こえてきたことがあるのか?」
「……ない」
「だろ? 流川がエスパーでもない限り、お前の心音が聞こえることはねぇよ」
「そうかなあ」
「そうだって。密着すれば聞こえるかもしれないけど、そこは自分で気をつけられるだろ?」
「なっ。バッ、バカッ! 流川くんと密着なんてしないもん洋平のエッチ!」
「はは。じゃあ平気だろ? ほら、解決だ」
真っ赤な顔で小さく頬を膨らませている伊理穂の頭を、洋平は優しく撫でた。
(流川と密着するのはエッチで、オレに抱きついてくるのはなんでもないのかねえ)
心の中でそんなことを呟いて、洋平はそっと苦しい息を吐き出す。
これからこういうことがどんどん増えていくんだろう。
どれくらいの間耐えられるだろうか?
そしていつまで、この幼馴染みは自分の隣りにいてくれるだろうか……。
洋平はその暗い考えに小さく自嘲した。
目の前の幼馴染みは、そんな洋平の胸中には微塵も気付きもせずに、頭を撫でられて嬉しそうに瞳を細めている。
(伊理穂……)
思わず抱き寄せそうになる腕をぐっと堪えながら、洋平は瞳を細めて伊理穂を見た。
(好きだよ)
心の中だけでそっと呟く。
覚悟していたよりは冷静に伊理穂の恋愛相談を受けることができているのが、今の洋平には唯一の救いだった。
次の日。今日は学校が休みの土曜日で、洋平は大楠に呼ばれ、駅前のパチンコ屋へと足を向けていた。
今日はバスケ部も休みらしくて、結子と出かけると言う伊理穂に一緒に買い物に誘われたけれど、そちらは丁寧にお断りした。
行ってもどうせ荷物持ちだ。それ自体は一向に構わないが、できれば伊理穂と一緒に過ごす時間は徐々に減らしていきたかった。
そうでないと、流川と付き合い始めた伊理穂がいきなり自分のそばからいなくなったとき、洋平には耐えられる自信がなかった。
(……女々しいよな、オレも)
自嘲を浮かべて空を見上げる。
抜けるような青に、ところどころ霞むような白い雲が混じって、今日も世界は爽やかだ。
(オレの心も、こんな風に晴れ渡ればいいのにな)
荒んだ心を慰めるかのように、優しい風が洋平の頬を撫ぜる。
瞳を閉じてそれを感じていると、おーいと遠くで呼びかける声が聞こえた。
上げていた顔をそちらに向けると、目的地のパチンコ屋で、見慣れた顔が三つにやにやと薄ら笑いを浮かべながらこちらに手を振っていた。
「なーに哀愁漂わせてんだよ、洋平!」
「道路の真ん中でボーっと突っ立ってたら邪魔だぞい!」
ぎゃははと笑いながら言ってくるおなじみのメンツ、大楠・野間・高宮に、洋平は同じような笑みを返す。
「うるせえよ」