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「やっぱり少し熱いな……。風邪か?」
「……多分違うと思う」
「ならいいけど、大丈夫か? 用心して今日はもう帰ったほうがいいんじゃ」
「だ、大丈夫!」
花道の言葉に伊理穂は慌てて切り返した。
せっかく流川のプレーが見れるのに、帰るなんて絶対にごめんだ。
それに、花道にはいえないけれど、この熱は風邪なんかじゃない。
風邪なんかじゃなくて、もっと別の……。
(もっと別の、なに……?)
ふとそこで思考が途絶えた。
伊理穂は眉を寄せる。
もう少し。もう少しでこの気持ちがなんだかわかりそうだったのに、あと少しで掴めるっていうところで、それは煙になって手の平をすり抜けてしまった。
ひとり落胆していると、その表情を花道が覗き込んできた。
「伊理穂? やっぱり具合悪いのか?」
「わあ違う違う。大丈夫」
「伊理穂? なに、体調悪いの?」
気付いた彩子までが声をかけてきた。
晴子も心配そうにこちらを見ている。
このままでは本当に家に帰されてしまいそうだ。伊理穂はわざとらしいくらい声を明るくして否定する。
「ほんとうに大丈夫ですから! 具合悪くなんて全然ないし。元気元気!」
アピールついでに屈伸をしてみせる。
ね? と同意を求めると、花道がしぶしぶという様子で頷いた。
「まあ、元気ならいいが……。伊理穂にムリをさせると、オレが洋平に怒られるからな。頼むからダメになる前にちゃんと言え」
「うん、わかった。ありがとう花道」
「おう」
「へ~え」
にっこり花道に微笑んでいると、彩子が興味深げに呟いた。
「桜木花道も伊理穂だと普通に話せるのねえ。あんたいっつも女の子相手だとがちがちなのに」
「な、何言ってるんですかアヤコサン! この天才が女の子の前でがちがちになるなど……」
「ほら、これよこれ。この反応よ。なんていうの、ちょっと力が入るっていうの? 伊理穂相手だとその力みがすっと抜けて自然なのよねえ」
感心していう彩子に、伊理穂が笑いながら口を挟んだ。
「だって彩子さん、わたしと花道ってばもうかれこれ三年以上の付き合いなんですよ? いまだにがちがちだったらそれこそ問題ですよ」
「まあ、それもそうか」
「ふふ、でもがちがちの桜木くんもかわいいよね」
「!」
晴子の言葉に、花道がぱあっと表情を明るくした。
「ほほほほんとですか、ハルコサン!」
「うん。いいよね、桜木くんらしくて」
「……ハルコサン!」
花道が感動に震えていると、体育館に赤木の声が響いた。
試合を始めるのだろう。
伊理穂たちはコートに意識を戻した。