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だって、付き合ってるとか洋平のことを好きだとか、誤解されたくないのは目の前の彼女たちにではなくて、流川にだ。
その人が自分に興味を持ってくれていないなら、他になんて誤解されたって……。
そこまで考えて、伊理穂は首をふるふると横に振った。
もし流川が自分のことをなんとも思ってないとしても、やっぱり誤解されたままなのはよくない。
そもそも洋平にだって迷惑がかかる。
伊理穂は思い直すと、キッとはしゃぐクラスメートたちを見た。
「あの、ちゃんと聞いて! わたし洋平とはほんとうになんでも……」
「いいって恥ずかしがらなくって! わたしたちだってもう子供じゃないんだし、変にからかったりなんてしないよお!」
「……あんたたち、今のこの状態がまさに変にからかってる状態だって気付かないの?」
呆れたような結子の呟きも全く気にせず、相変わらずクラスメートは聞く耳持たずできゃいきゃい盛り上がっている。
伊理穂の中で、さっき固めた決意がもうしぼみ始めた。
やっぱりもうどうでもいいや、なんて伊理穂が諦めかけたときだった。
「ウルセー」
流川の険のある声が響いた。
きゃいきゃい騒いでいたクラスメートたちが、その言葉に雷に打たれたように動きを止める。
伊理穂も驚いて流川を見た。
視線の先の流川は、クラスメートを鋭く尖った表情で静かに睨んでいた。
伊理穂の胸がとくんと脈打つ。
(どうしてそんな風に怒ってるの? もしかしてわたしと洋平が誤解されてるから?)
伊理穂の胸が、淡い期待に鼓動を早くする。
「る、流川くん……?」
クラスメートが怯えたように流川を見た。
流川は表情の鋭さを崩さずに言う。
「ウルセー。月瀬が違うって言ってんだろ」
「で、でもだって……。伊理穂ちゃんと水戸くん、あんなに仲良いし……」
ねえ、とその子は隣りの子に助けを求めるように顔を向けた。
同意を求められた子も、流川の様子に怯えながらこくこくと力なく頷く。
「うん。それに、お互いにすごく想い合ってるように見えた……し……っ」
そこまで言って、その子は怯えたように言葉を止めた。
流川が、腹の底から震えるような冷たい眼差しでその子を見ていた。
「ご、ごめんなさい……っ!」
ついにその子は流川の視線に耐えられなくなり、他の友人たちを引き連れて逃げるようにその場を去っていった。
流川はそれを見届けると、何事もなかったかのようにノートに視線を戻した。
伊理穂は慌ててそんな流川にお礼を言う。
「あ、ありがとう流川くん」
「別にこれくらいなんでもねー。月瀬もあーいう連中のことは気にすんな」
「うん。……ありがとう」
感謝の気持ちを込めてそう言うと、流川が一瞬だけ薄く微笑んでくれた。
流川はすぐに表情を戻すと、再びノートを写し始める。
結子がそんな流川を、へえいいとこあるじゃない、とからかっている。
そばでふたりがじゃれあっているのをどこか遠くで眺めながら、伊理穂は胸に手をあてた。
さっきまでぎしぎし痛んでいたそこが、今はぽかぽかとあたたかい。
流川が自分を気にしてくれたことが、自分のために怒ってくれたことが、こんなにも嬉しいなんて。
思い出すだけで、胸がきゅうんと痺れたようになって、息が吸えなくなる。
(洋平、どうしよう。嬉しいのに、なんだか胸が苦しいよ……)
この気持ちはなんだろう。
流川の一挙手一投足に胸がどきどきしたりずきずきしたり、どうしてこんな風になるんだろう。
わからない。どうして。
昨日の洋平の言葉が頭に響く。
答えを出そうと焦らないで、ゆっくり考えること。
伊理穂は瞳を閉じて、それを反芻すると、うしと心の中で呟いた。
焦ってもしょうがない。わからないものはわからない。
洋平の言う通り、ゆっくりじっくり考えてみよう。
伊理穂はひとりそう結論付けると、目の前の二人の会話に笑みを零した。
その人が自分に興味を持ってくれていないなら、他になんて誤解されたって……。
そこまで考えて、伊理穂は首をふるふると横に振った。
もし流川が自分のことをなんとも思ってないとしても、やっぱり誤解されたままなのはよくない。
そもそも洋平にだって迷惑がかかる。
伊理穂は思い直すと、キッとはしゃぐクラスメートたちを見た。
「あの、ちゃんと聞いて! わたし洋平とはほんとうになんでも……」
「いいって恥ずかしがらなくって! わたしたちだってもう子供じゃないんだし、変にからかったりなんてしないよお!」
「……あんたたち、今のこの状態がまさに変にからかってる状態だって気付かないの?」
呆れたような結子の呟きも全く気にせず、相変わらずクラスメートは聞く耳持たずできゃいきゃい盛り上がっている。
伊理穂の中で、さっき固めた決意がもうしぼみ始めた。
やっぱりもうどうでもいいや、なんて伊理穂が諦めかけたときだった。
「ウルセー」
流川の険のある声が響いた。
きゃいきゃい騒いでいたクラスメートたちが、その言葉に雷に打たれたように動きを止める。
伊理穂も驚いて流川を見た。
視線の先の流川は、クラスメートを鋭く尖った表情で静かに睨んでいた。
伊理穂の胸がとくんと脈打つ。
(どうしてそんな風に怒ってるの? もしかしてわたしと洋平が誤解されてるから?)
伊理穂の胸が、淡い期待に鼓動を早くする。
「る、流川くん……?」
クラスメートが怯えたように流川を見た。
流川は表情の鋭さを崩さずに言う。
「ウルセー。月瀬が違うって言ってんだろ」
「で、でもだって……。伊理穂ちゃんと水戸くん、あんなに仲良いし……」
ねえ、とその子は隣りの子に助けを求めるように顔を向けた。
同意を求められた子も、流川の様子に怯えながらこくこくと力なく頷く。
「うん。それに、お互いにすごく想い合ってるように見えた……し……っ」
そこまで言って、その子は怯えたように言葉を止めた。
流川が、腹の底から震えるような冷たい眼差しでその子を見ていた。
「ご、ごめんなさい……っ!」
ついにその子は流川の視線に耐えられなくなり、他の友人たちを引き連れて逃げるようにその場を去っていった。
流川はそれを見届けると、何事もなかったかのようにノートに視線を戻した。
伊理穂は慌ててそんな流川にお礼を言う。
「あ、ありがとう流川くん」
「別にこれくらいなんでもねー。月瀬もあーいう連中のことは気にすんな」
「うん。……ありがとう」
感謝の気持ちを込めてそう言うと、流川が一瞬だけ薄く微笑んでくれた。
流川はすぐに表情を戻すと、再びノートを写し始める。
結子がそんな流川を、へえいいとこあるじゃない、とからかっている。
そばでふたりがじゃれあっているのをどこか遠くで眺めながら、伊理穂は胸に手をあてた。
さっきまでぎしぎし痛んでいたそこが、今はぽかぽかとあたたかい。
流川が自分を気にしてくれたことが、自分のために怒ってくれたことが、こんなにも嬉しいなんて。
思い出すだけで、胸がきゅうんと痺れたようになって、息が吸えなくなる。
(洋平、どうしよう。嬉しいのに、なんだか胸が苦しいよ……)
この気持ちはなんだろう。
流川の一挙手一投足に胸がどきどきしたりずきずきしたり、どうしてこんな風になるんだろう。
わからない。どうして。
昨日の洋平の言葉が頭に響く。
答えを出そうと焦らないで、ゆっくり考えること。
伊理穂は瞳を閉じて、それを反芻すると、うしと心の中で呟いた。
焦ってもしょうがない。わからないものはわからない。
洋平の言う通り、ゆっくりじっくり考えてみよう。
伊理穂はひとりそう結論付けると、目の前の二人の会話に笑みを零した。