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教室にあるスピーカーから今流行のJ-POPが流れている。
今はお昼休み。
お弁当も食べ終え、結子とのんびり自分の席で談笑していた伊理穂は、隣りの席に座る流川に目を向けた。
流川は眠そうに目をしょぼしょぼさせながら、一生懸命伊理穂の英語のノートを写している。
次の4時間目は英語Gの授業。今日はその最初で小テストがある。
ノートを写す流川の横顔。
白くきめ細やかな頬に落ちる長い睫毛の影。ゆるく結ばれた薄い唇。男の人とは思えないくらい綺麗なそれに、伊理穂の胸がどきどきと落ち着かなくなる。
しばらくじっとその横顔を見つめていると、ふいに流川がこちらを見た。
伊理穂は慌てて笑顔を浮かべて表情を取り繕う。
「あ、る、流川くん! どこかわからないとこある?」
「……全部」
「ぜ、全部かあ……」
流川の答えに伊理穂は苦笑した。
さすがに次の授業が始まるまでの20分間に、今まで習ったところを全部教えられる自信はない。
思わず伊理穂が黙り込むと、流川が眉間にしわを刻みながら言った。
「SとかVとかOとかCとか、なにがなんだかさっぱり」
「おおっと、そこから……」
予想外に初期段階で躓いているようだ。
どうしたものかと眉を下げる伊理穂の横で、結子が呆れたように息を吐く。
「……それって中学の範囲よね? あんたよくここの高校受かったわね」
「ヤマカン?」
「わたしに訊かないでよ! あんたの脳みそほんっとどうなってるの!? マジで一回開いて見てみたいわ」
「まあまあ結ちゃん。――SとかVとかはそんなに気にしなくても良いと思うよ。要は答えがあってればいいんだもん。ね、流川くん」
言うと、流川がこくこくと頷いた。
流川はノートの一点を指して、この単語なに? と訊いてくる。
伊理穂は身を乗り出してそれを覗き込んだ。
「ああ、それはbehavior。意味は行動だよ。その文は……」
伊理穂は机からルーズリーフを取り出すと、流川の机にそれを置いた。
椅子を引き寄せ傍に行くと、要点を書き出しながら説明する。
「で、これがこの文に掛かって、こういう意味になるの。わかった?」
「ん」
頷く流川に微笑んでいると、それを横で聞いていた結子が感心したように口を開いた。
「へえ、わかりやすい。伊理穂って頭良かったのね」
てっきり残念なほうだとばかり……と失礼なことを言う結子に伊理穂は顔をしかめる。
「失礼だなあ、もう。これは、わたしが唯一洋平に勝てるものなんだから!」
「へえ、そうなの」
「うん! 頭のデキ自体は洋平のほうがいいんだけど、マジメ度はわたしのほうがいいからね。洋平に勉強教えるのはわたしの役目なんだよ。この高校にだってわたしが入れたようなもんなんだから」
ふふんと胸を張って言う伊理穂に、結子が呆れたように半眼になる。
今はお昼休み。
お弁当も食べ終え、結子とのんびり自分の席で談笑していた伊理穂は、隣りの席に座る流川に目を向けた。
流川は眠そうに目をしょぼしょぼさせながら、一生懸命伊理穂の英語のノートを写している。
次の4時間目は英語Gの授業。今日はその最初で小テストがある。
ノートを写す流川の横顔。
白くきめ細やかな頬に落ちる長い睫毛の影。ゆるく結ばれた薄い唇。男の人とは思えないくらい綺麗なそれに、伊理穂の胸がどきどきと落ち着かなくなる。
しばらくじっとその横顔を見つめていると、ふいに流川がこちらを見た。
伊理穂は慌てて笑顔を浮かべて表情を取り繕う。
「あ、る、流川くん! どこかわからないとこある?」
「……全部」
「ぜ、全部かあ……」
流川の答えに伊理穂は苦笑した。
さすがに次の授業が始まるまでの20分間に、今まで習ったところを全部教えられる自信はない。
思わず伊理穂が黙り込むと、流川が眉間にしわを刻みながら言った。
「SとかVとかOとかCとか、なにがなんだかさっぱり」
「おおっと、そこから……」
予想外に初期段階で躓いているようだ。
どうしたものかと眉を下げる伊理穂の横で、結子が呆れたように息を吐く。
「……それって中学の範囲よね? あんたよくここの高校受かったわね」
「ヤマカン?」
「わたしに訊かないでよ! あんたの脳みそほんっとどうなってるの!? マジで一回開いて見てみたいわ」
「まあまあ結ちゃん。――SとかVとかはそんなに気にしなくても良いと思うよ。要は答えがあってればいいんだもん。ね、流川くん」
言うと、流川がこくこくと頷いた。
流川はノートの一点を指して、この単語なに? と訊いてくる。
伊理穂は身を乗り出してそれを覗き込んだ。
「ああ、それはbehavior。意味は行動だよ。その文は……」
伊理穂は机からルーズリーフを取り出すと、流川の机にそれを置いた。
椅子を引き寄せ傍に行くと、要点を書き出しながら説明する。
「で、これがこの文に掛かって、こういう意味になるの。わかった?」
「ん」
頷く流川に微笑んでいると、それを横で聞いていた結子が感心したように口を開いた。
「へえ、わかりやすい。伊理穂って頭良かったのね」
てっきり残念なほうだとばかり……と失礼なことを言う結子に伊理穂は顔をしかめる。
「失礼だなあ、もう。これは、わたしが唯一洋平に勝てるものなんだから!」
「へえ、そうなの」
「うん! 頭のデキ自体は洋平のほうがいいんだけど、マジメ度はわたしのほうがいいからね。洋平に勉強教えるのはわたしの役目なんだよ。この高校にだってわたしが入れたようなもんなんだから」
ふふんと胸を張って言う伊理穂に、結子が呆れたように半眼になる。