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朝。SHR終了後、伊理穂はなぜか担任に廊下に呼び出された。
あんたなにやったの? と言う結子に首をかしげて、伊理穂は担任について廊下へと出る。
体中にクラスメートの好奇のまなざしが突き刺さって痛い。
ほんとうにいったいなにをしてしまったんだろう?
呼び出される理由が皆目検討もつかなくて、伊理穂は目の前で渋面を作って立っている担任を、不思議そうに見つめた。
伊理穂のクラスの担任・加藤一は、四十代半ばの体格の良い体育教師だ。
短く刈られた白髪混じりの髪に、厳格そうな角ばった顔。陰でつけられたあだ名はピン。生活指導担当でもあるためか、生徒からの人気は薄い。
加藤はしばらく言いにくそうに、あーとかうーとか言うと、ひとつ大きな咳払いをして伊理穂を見た。
決意を固めたように口を開く。
「あー、月瀬。お前、先生になにか相談したいことないか?」
「? 相談? 特にないですけど……」
一体なにを言われるのかと身構えていた伊理穂は、加藤のその言葉に若干拍子抜けした様子で返した。
否定する伊理穂に、加藤はわかっているぞというように優しく微笑んでくる。
「そうか? よく考えてみろ。困ったことがあるだろう、学校生活において」
「困ったこと……?」
なにやら確信がある様子の加藤に内心で首を傾げながら、伊理穂は自分の学校生活を思い返した。
困ったこと、困ったこと……。
「あ!」
声をあげた伊理穂に、加藤が表情を明るくする。
「おお、なんだ月瀬! 先生が相談に乗ってやるから言ってみろ!」
「はい! あの、ここだけの話なんですけど、いまだに学食を利用できずに困ってます。一年生の分際で今から学食利用なんてしたら、上級生に目ぇつけられちゃいますかね?」
言うと、がくぅっと加藤が肩を落とした。呆れたようにため息を吐き出すと、突然力強く伊理穂の肩を掴む。
「月瀬!」
「ぅわはい!」
「大丈夫だ、口止めされてるのかもしれないが先生が守ってやるから安心しろ。いいか、月瀬。正直に答えるんだぞ?」
「は、はい!」
加藤のただならぬ様子に、伊理穂は気圧されて頷いた。
加藤はずいと伊理穂に顔を近づけると、辺りをはばかるように声を落として言った。
「お前、7組の水戸にいじめられてるだろう」
「……は?」
伊理穂はぽかんと口を開けた。
深刻な表情の加藤を、まじまじと見つめる。
なんだって? 誰が、誰にいじめられてるって?
言われた内容を伊理穂が理解するより早く、加藤が言葉を続ける。
「何人かの生徒から目撃談があってな。お前が水戸につけねらわれてるようだって」
「ちょ、ちょっと待ってください先生」
「いや、何をされたかまでは言わなくていいぞ。かわいそうに、お前は美人だから目ぇつけられたんだろう。だがもう安心していい。先生たちが守ってやるからな」
「いやいやいや」
「とりあえず水戸が近くに来たらすぐに職員室に逃げろ。他の先生たちにもすぐに協力要請をする」
「いや、ですから、ちょっと待ってくださいってば先生!」
「大丈夫、怯えることはない。先生に言ったらただじゃおかないとか言われてるのかもしれないがな、先生はこうみえて空手三段だ。そんじょそこらの不良になど負けん!」
「いや、ですからそういうことじゃなくて……!」
まるで聞く耳をもたない加藤に、伊理穂の胸に苛立ちが募っていく。
(どうすれば聞き入れてもらえるの)
伊理穂が湧き上がる怒りに肩を震わせたとき、加藤の信じられない言葉が鼓膜を打った。
あんたなにやったの? と言う結子に首をかしげて、伊理穂は担任について廊下へと出る。
体中にクラスメートの好奇のまなざしが突き刺さって痛い。
ほんとうにいったいなにをしてしまったんだろう?
呼び出される理由が皆目検討もつかなくて、伊理穂は目の前で渋面を作って立っている担任を、不思議そうに見つめた。
伊理穂のクラスの担任・加藤一は、四十代半ばの体格の良い体育教師だ。
短く刈られた白髪混じりの髪に、厳格そうな角ばった顔。陰でつけられたあだ名はピン。生活指導担当でもあるためか、生徒からの人気は薄い。
加藤はしばらく言いにくそうに、あーとかうーとか言うと、ひとつ大きな咳払いをして伊理穂を見た。
決意を固めたように口を開く。
「あー、月瀬。お前、先生になにか相談したいことないか?」
「? 相談? 特にないですけど……」
一体なにを言われるのかと身構えていた伊理穂は、加藤のその言葉に若干拍子抜けした様子で返した。
否定する伊理穂に、加藤はわかっているぞというように優しく微笑んでくる。
「そうか? よく考えてみろ。困ったことがあるだろう、学校生活において」
「困ったこと……?」
なにやら確信がある様子の加藤に内心で首を傾げながら、伊理穂は自分の学校生活を思い返した。
困ったこと、困ったこと……。
「あ!」
声をあげた伊理穂に、加藤が表情を明るくする。
「おお、なんだ月瀬! 先生が相談に乗ってやるから言ってみろ!」
「はい! あの、ここだけの話なんですけど、いまだに学食を利用できずに困ってます。一年生の分際で今から学食利用なんてしたら、上級生に目ぇつけられちゃいますかね?」
言うと、がくぅっと加藤が肩を落とした。呆れたようにため息を吐き出すと、突然力強く伊理穂の肩を掴む。
「月瀬!」
「ぅわはい!」
「大丈夫だ、口止めされてるのかもしれないが先生が守ってやるから安心しろ。いいか、月瀬。正直に答えるんだぞ?」
「は、はい!」
加藤のただならぬ様子に、伊理穂は気圧されて頷いた。
加藤はずいと伊理穂に顔を近づけると、辺りをはばかるように声を落として言った。
「お前、7組の水戸にいじめられてるだろう」
「……は?」
伊理穂はぽかんと口を開けた。
深刻な表情の加藤を、まじまじと見つめる。
なんだって? 誰が、誰にいじめられてるって?
言われた内容を伊理穂が理解するより早く、加藤が言葉を続ける。
「何人かの生徒から目撃談があってな。お前が水戸につけねらわれてるようだって」
「ちょ、ちょっと待ってください先生」
「いや、何をされたかまでは言わなくていいぞ。かわいそうに、お前は美人だから目ぇつけられたんだろう。だがもう安心していい。先生たちが守ってやるからな」
「いやいやいや」
「とりあえず水戸が近くに来たらすぐに職員室に逃げろ。他の先生たちにもすぐに協力要請をする」
「いや、ですから、ちょっと待ってくださいってば先生!」
「大丈夫、怯えることはない。先生に言ったらただじゃおかないとか言われてるのかもしれないがな、先生はこうみえて空手三段だ。そんじょそこらの不良になど負けん!」
「いや、ですからそういうことじゃなくて……!」
まるで聞く耳をもたない加藤に、伊理穂の胸に苛立ちが募っていく。
(どうすれば聞き入れてもらえるの)
伊理穂が湧き上がる怒りに肩を震わせたとき、加藤の信じられない言葉が鼓膜を打った。