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「まあ、それだけ花道もバスケをおもしろいって感じはじめてるってことだろ」
「うん! 練習見てても花道ってばすっごい上達早いし、あれはこの先が楽しみだよ」
「へえ? そうなのか?」
「うん。調子に乗るから花道には言ってやらないけど、でもかなり才能あると思う」
「へえ」
あの花道がねえ、と洋平は口許に笑みをのぼらせた。
淋しいような嬉しいような、複雑な気持ちだ。
だけど、賭けるもののない今の生活よりも、夢中になれるものがあるほうが絶対いい。
花道がそれを見つけられたのなら、いいことだ。
そう思って洋平は複雑な気持ちを胸の奥にしまいこむ。
と、突然伊理穂の顔が目の前に現れた。
「うおっ」
こちらの瞳を覗き込むようにじっと見つめてくる伊理穂に、洋平は思わず体を離した。
不意打ちに、胸がばくばくと暴れ出している。
それを伊理穂に悟られるわけにはいかなくて、顔に集まりそうになる熱を隠すために、洋平は頭の中で必死で九九を数えた。
(くそっ。なんでオレはこの歳になって九九なんて数えてんだ……)
湧き起こる情けない感情が、なんとか洋平の顔を朱に染めずに防ぐ。
洋平はホッと息を吐き出すと、まだ顔を覗き込んできている伊理穂を見た。
「なんだ、伊理穂。どうした?」
「んー。洋平、淋しいの?」
「――!」
伊理穂の問いに洋平は目を見開いた。
まさかそれを見透かされるとは思わなかった。
口許に苦笑が浮かぶ。
「はは。まあ、多少……な。遊び仲間が減るのは淋しいもんだろ。でもオレは花道を応援するよ」
「……洋平」
「ん?」
「花道は他に夢中になれるものができたとしても、洋平から離れたりなんてしないよ。大丈夫。だからそんな淋しそうな顔しないで? ね?」
「……サンキュ、伊理穂」
真剣に訴えてくる伊理穂が愛しくて、洋平は伊理穂の頭を撫でた。
伊理穂が心地良さそうに瞳を閉じる。
どくんと跳ねる心臓。
邪な考えを追いやるために、洋平は小さくため息をつく。
「ね、洋平」
「ん?」
「今日、またケンカしたんだって? 花道から聞いた」
「あー……。まあ、あれは不可抗力だよ」
「えー、ほんとうに?」
伊理穂が不機嫌そうに眉根を寄せた。
洋平はごまかすように笑顔を浮かべて、再び伊理穂の頭を撫でる。
「ほんとうほんとう。――あの時、伊理穂に約束しただろ? もう二度とオレからケンカをふっかけるようなことはしないって」
洋平の脳裏に、ちらと思い出したくない映像が掠めた。
ぼろぼろの自分。傷だらけの伊理穂。守ると決めていたのに出来なかった、あの日。
あの日、洋平は伊理穂に誓った。もう二度と自分からケンカはしない、と。
洋平はその記憶を追い払うように首を横に振ると、伊理穂に微笑んだ。
伊理穂は不服そうに唇をとがらせて、拗ねたように呟く。
「あの時、なにがあってもケンカしないって誓わせればよかったな」
「はは。それは勘弁してくれ。普通に街を歩いてたって今だにケンカふっかけられるんだ。そんなんじゃ命がいくつあってもたんねぇよ」
「わかってるけど。でも今日も顔や体に擦り傷作って、心配だよ」
伊理穂が顔を悲しげにゆがめて下を向く。
伊理穂のその儚い姿に、洋平は抱きしめたい衝動を必死で堪えながら、そっと伊理穂の頬を撫でた。
「うん! 練習見てても花道ってばすっごい上達早いし、あれはこの先が楽しみだよ」
「へえ? そうなのか?」
「うん。調子に乗るから花道には言ってやらないけど、でもかなり才能あると思う」
「へえ」
あの花道がねえ、と洋平は口許に笑みをのぼらせた。
淋しいような嬉しいような、複雑な気持ちだ。
だけど、賭けるもののない今の生活よりも、夢中になれるものがあるほうが絶対いい。
花道がそれを見つけられたのなら、いいことだ。
そう思って洋平は複雑な気持ちを胸の奥にしまいこむ。
と、突然伊理穂の顔が目の前に現れた。
「うおっ」
こちらの瞳を覗き込むようにじっと見つめてくる伊理穂に、洋平は思わず体を離した。
不意打ちに、胸がばくばくと暴れ出している。
それを伊理穂に悟られるわけにはいかなくて、顔に集まりそうになる熱を隠すために、洋平は頭の中で必死で九九を数えた。
(くそっ。なんでオレはこの歳になって九九なんて数えてんだ……)
湧き起こる情けない感情が、なんとか洋平の顔を朱に染めずに防ぐ。
洋平はホッと息を吐き出すと、まだ顔を覗き込んできている伊理穂を見た。
「なんだ、伊理穂。どうした?」
「んー。洋平、淋しいの?」
「――!」
伊理穂の問いに洋平は目を見開いた。
まさかそれを見透かされるとは思わなかった。
口許に苦笑が浮かぶ。
「はは。まあ、多少……な。遊び仲間が減るのは淋しいもんだろ。でもオレは花道を応援するよ」
「……洋平」
「ん?」
「花道は他に夢中になれるものができたとしても、洋平から離れたりなんてしないよ。大丈夫。だからそんな淋しそうな顔しないで? ね?」
「……サンキュ、伊理穂」
真剣に訴えてくる伊理穂が愛しくて、洋平は伊理穂の頭を撫でた。
伊理穂が心地良さそうに瞳を閉じる。
どくんと跳ねる心臓。
邪な考えを追いやるために、洋平は小さくため息をつく。
「ね、洋平」
「ん?」
「今日、またケンカしたんだって? 花道から聞いた」
「あー……。まあ、あれは不可抗力だよ」
「えー、ほんとうに?」
伊理穂が不機嫌そうに眉根を寄せた。
洋平はごまかすように笑顔を浮かべて、再び伊理穂の頭を撫でる。
「ほんとうほんとう。――あの時、伊理穂に約束しただろ? もう二度とオレからケンカをふっかけるようなことはしないって」
洋平の脳裏に、ちらと思い出したくない映像が掠めた。
ぼろぼろの自分。傷だらけの伊理穂。守ると決めていたのに出来なかった、あの日。
あの日、洋平は伊理穂に誓った。もう二度と自分からケンカはしない、と。
洋平はその記憶を追い払うように首を横に振ると、伊理穂に微笑んだ。
伊理穂は不服そうに唇をとがらせて、拗ねたように呟く。
「あの時、なにがあってもケンカしないって誓わせればよかったな」
「はは。それは勘弁してくれ。普通に街を歩いてたって今だにケンカふっかけられるんだ。そんなんじゃ命がいくつあってもたんねぇよ」
「わかってるけど。でも今日も顔や体に擦り傷作って、心配だよ」
伊理穂が顔を悲しげにゆがめて下を向く。
伊理穂のその儚い姿に、洋平は抱きしめたい衝動を必死で堪えながら、そっと伊理穂の頬を撫でた。