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その硬い声音に少しばかり驚きながら、伊理穂は流川を見つめる。
「流川くん? なに?」
「…………」
伊理穂と流川の視線が絡み合う。
数瞬の沈黙の後、流川がゆっくりと唇を持ち上げた。
「月瀬が信じてるのは、桜木と水戸、どっちだ?」
「え?」
流川の質問に伊理穂は目を丸くした。
真剣な表情でじっと見つめてくる流川に心を落ち着かなくさせながらも、それをごまかすように伊理穂は笑う。
「や、やだなあ、流川くん。どっちって、そんなの両方に決まってるよ。それに、こういうときは洋平に任せておけば間違いないんだよ。洋平はみんなの保護者なんだから」
「……ふうん」
含みのある返事を返す流川。
その不機嫌そうな様子に、伊理穂はたまらなく不安になる。
なにか怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか? 考えてもわからなくて、少しだけ泣きたい気持ちになって俯くと、その頭に流川の手が触れた。
驚いて顔をあげる伊理穂を、流川が苦しげな瞳でじっと見つめる。
「なんでもねー。変な態度とって悪かった」
「う、うん……」
流川は伊理穂の頭をそっとひと撫ですると、練習へと戻っていった。
どうして。
流川の背中を見つめて思う。
どうして流川はあんな切ないような顔をしてそんなことを言ったんだろう。
どうして。
なんでもないなんてうそだ。流川の気持ちをわかりたいのに、それができない自分が情けなくて伊理穂は顔を伏せた。
ただ、胸だけがどうしようもなく騒ぎ立てて、苦しかった。
今日も看護士である母親の弥生は夜勤で、洋平は伊理穂の家で夕飯をとった。
泊まれ泊まれとうるさい伊理穂に加えて、伊理穂の両親にもそうするよう勧められ、洋平は現在伊理穂の部屋にいた。
二人ともお風呂も済ませ、あとは眠るだけだ。
伊理穂はドレッサーの前に座ると、髪を梳きながら洋平に話しかけてきた。
「ねえ、洋平。花道、結局戻ってきたねえ」
「そうだな」
伊理穂のさらさらの髪を、櫛がなめらかに通り過ぎていく。
微かに香るシャンプーの匂い。
まるで美しい女神のようだ、なんて思いながら、洋平は伊理穂の言葉に相槌をうつ。
「花道のこと、洋平に頼んで正解だったな」
「はは。でもあいつが戻ったのにオレはカンケーねぇよ。あいつの意志だ」
「うん。でも、洋平と一緒だから、花道は素直にバスケ部に戻ってこれたと思うんだ。だって、一度逃げ出したところに戻るなんて、よっぽど勇気がなきゃできないもん」
「そりゃあ……そうだな」
「でしょ?」
洋平の返事に、伊理穂が満足気な笑顔を浮かべて振り返る。
その顔があまりにも無邪気で、洋平の胸がぎゅっと締め付けられた。
伊理穂の頬に伸びそうになる自分の手をきつく戒めて、洋平はなんとか会話を続ける。
「流川くん? なに?」
「…………」
伊理穂と流川の視線が絡み合う。
数瞬の沈黙の後、流川がゆっくりと唇を持ち上げた。
「月瀬が信じてるのは、桜木と水戸、どっちだ?」
「え?」
流川の質問に伊理穂は目を丸くした。
真剣な表情でじっと見つめてくる流川に心を落ち着かなくさせながらも、それをごまかすように伊理穂は笑う。
「や、やだなあ、流川くん。どっちって、そんなの両方に決まってるよ。それに、こういうときは洋平に任せておけば間違いないんだよ。洋平はみんなの保護者なんだから」
「……ふうん」
含みのある返事を返す流川。
その不機嫌そうな様子に、伊理穂はたまらなく不安になる。
なにか怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか? 考えてもわからなくて、少しだけ泣きたい気持ちになって俯くと、その頭に流川の手が触れた。
驚いて顔をあげる伊理穂を、流川が苦しげな瞳でじっと見つめる。
「なんでもねー。変な態度とって悪かった」
「う、うん……」
流川は伊理穂の頭をそっとひと撫ですると、練習へと戻っていった。
どうして。
流川の背中を見つめて思う。
どうして流川はあんな切ないような顔をしてそんなことを言ったんだろう。
どうして。
なんでもないなんてうそだ。流川の気持ちをわかりたいのに、それができない自分が情けなくて伊理穂は顔を伏せた。
ただ、胸だけがどうしようもなく騒ぎ立てて、苦しかった。
今日も看護士である母親の弥生は夜勤で、洋平は伊理穂の家で夕飯をとった。
泊まれ泊まれとうるさい伊理穂に加えて、伊理穂の両親にもそうするよう勧められ、洋平は現在伊理穂の部屋にいた。
二人ともお風呂も済ませ、あとは眠るだけだ。
伊理穂はドレッサーの前に座ると、髪を梳きながら洋平に話しかけてきた。
「ねえ、洋平。花道、結局戻ってきたねえ」
「そうだな」
伊理穂のさらさらの髪を、櫛がなめらかに通り過ぎていく。
微かに香るシャンプーの匂い。
まるで美しい女神のようだ、なんて思いながら、洋平は伊理穂の言葉に相槌をうつ。
「花道のこと、洋平に頼んで正解だったな」
「はは。でもあいつが戻ったのにオレはカンケーねぇよ。あいつの意志だ」
「うん。でも、洋平と一緒だから、花道は素直にバスケ部に戻ってこれたと思うんだ。だって、一度逃げ出したところに戻るなんて、よっぽど勇気がなきゃできないもん」
「そりゃあ……そうだな」
「でしょ?」
洋平の返事に、伊理穂が満足気な笑顔を浮かべて振り返る。
その顔があまりにも無邪気で、洋平の胸がぎゅっと締め付けられた。
伊理穂の頬に伸びそうになる自分の手をきつく戒めて、洋平はなんとか会話を続ける。