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「洋平、クラス楽しい? 花道とおんなじクラスだよね? いいなぁ」
「伊理穂だけクラス離れちまったもんなぁ。大楠と高宮とチュウなんか、三人おんなじクラスなのに」
言いながら、洋平は伊理穂の手から鞄を奪い取った。
こういう、洋平のさりげないやさしさは昔から変わらない。
「ね。ひどいよね。洋平と同じクラスがよかったなぁ。心細いし……」
「ははっ。お前のその甘え癖は、いくつになっても変わんねえな」
「む。なによう、迷惑?」
「いや、そんなことねえよ」
言って洋平は優しく伊理穂の頭をなでる。
「さびしくなったらいつでも会いに来いよ。教室、同じ階だろ?」
「うん!」
嬉しそうに笑う伊理穂の笑顔に、洋平がまぶしそうに目を細めた。顔に集まってきた熱を伊理穂に悟られないように、洋平は近づいてきた学校に目を向ける。
伊理穂と洋平。
家が隣同士で、幼いころから兄妹同然に育った二人は、高校生になった今でも仲がよかった。
互いの家を行き来することはしょっちゅうだし、どちらかの家に泊まりにいくことだって珍しくない。
伊理穂は、とにかくなにかあれば洋平に話を聞いてもらいたがったし、洋平もまた、そんな伊理穂の話をいつも嫌がりもせず聞いていた。
傍から見れば、伊理穂の方が一方的に洋平になついているように見えるが、実際は洋平もまた伊理穂を必要としていた。
お互いに、お互いの存在がかけがえのないものだった。
だけど、恋人同士というわけではない。仲の良い幼なじみ。それ以上でも、それ以下でもなかった。
洋平は、「はじめのいーっぽ」とかなんとか言いながら、湘北高校の校門外から中へ、ぴょんと両足を揃えて跳んで入った伊理穂を見て、小さく笑った。
この、軽く天然な幼なじみは、きっと自分を恋愛感情で見たことなんかないんだろう。
ひょっとすると、初恋だってまだかもしれない。
(俺は、伊理穂以外考えられないんだけどな)
そっと心で呟きながら、伊理穂に続いて洋平も湘北高校の門をくぐった。