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伊理穂は慌ててドリンクカゴに駆け寄ると、そこから流川の名前と花道の名前の書かれたそれを取り出した。
朝練の時に洗濯しておいた真っ白なタオルをふたつ掴み元いた場所に戻ると、そのひとつを流川にはいと差し出す。
「はい、タオルとドリンク」
「サンキュ」
流川が受け取ったのを見て、伊理穂は花道にも同じものを差し出した。
「花道も。これ飲んでちょっと頭冷やそう。ね?」
「ぐぬぬ……」
「ほら、それ飲んだら新しい基礎教えてあげるから」
「ふんぬー! また基礎かー!」
「もう、花道わがまま言わないで。基礎は大事なんだよ? パンチの仕方わからなくてケンカできる?」
「……できない」
「じゃあパンチは覚えてもキックの仕方わからなかったら?」
「……できなくないが、弱い」
「でしょ? 基礎はそういうことなの。わかった?」
「ぐぬ……! 説明がわかりやすかっただけに何も言えん……!」
「センキュー」
頭を抱える花道に、伊理穂はおどけて返した。
流川はその様子を、ドリンクを飲みながらじっと眺めていた。
花道に絡まれている伊理穂を助けに行こうとした洋平は、流川が助けに入ったのを見て再び腰を落とした。
流川の蹴りが花道のお尻に見事に炸裂して、花道は体育館の壁に顔面から激突している。
あれは花道が荒れるな。
そんなことを思いながら、別のことで重力を増した胸を軽くするようにため息をはく。
こういうとき、いつも助けに行くのは自分の仕事だった。こんな風に、少しずつ少しずつ自分は伊理穂にとって必要なくなるんだろうか。
(……あんまり考えたくねぇな)
と、隣りで同じくその様子を眺めていた大楠が不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「ケッ。なんだよルカワのヤロー。この前から伊理穂ちゃんにちょっかい出しやがって!」
「落ち着けよ、大楠。お前が怒ることじゃないだろ?」
素直におもしろくないと言える大楠に少しの羨ましさを感じながら、洋平は荒れる大楠を宥めた。
自分はこんな風に荒れることさえ許されていない。感情をむき出しに出来る大楠が羨ましかった。
大楠は洋平のそんな気持ちには気付きもせずに、穏やかに笑う洋平にさらに眉を吊り上げる。
「ああ!? つーか洋平! なんでオマエはそんな平然としてるんだよ! オマエこそ怒れよ、大事な伊理穂ちゃん取られちまうぞ!?」
「はは。そうだなあ」
笑って答えると、大楠に胸倉を掴まれた。
「洋平!」
凄む大楠に、洋平は一瞬だけ表情を鋭くして言う。
「離せよ」
「――!」
(オレの気持ちなんてわかりもしねぇくせに。……説明する気もねぇけど)
そんな気持ちで睨めば、それが伝わったのか大楠が押し黙った。
そろそろと洋平の胸倉から手を離す。
「……洋平、オマエ……」
大楠がなにか言いかけたとき、我関せずで体育館の中をずっと見ていた高宮が声をあげた。