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体育館の片隅で今日も花道がボールをドリブルする音が響く。
ほとんど花道専属マネージャーと言っても過言ではない伊理穂は、ストップウォッチを片手にそれを真剣に見つめていた。
花道のドリブルもだんだんと様になってきている。
この前はうっかり順序を間違えてパス練習をさせてしまったけれど、これは次の段階にうつるのも時間の問題なんじゃないだろうか。
ストップウォッチを眺めながらそんなことを考えていると、
「うう……。なんでオレばっかり……!」
花道の恨み言が耳をついた。
伊理穂は引き締めていた表情を緩めて、花道に声をかける。
「まあまあ。しょうがないよ、初心者なんだから」
「いやしかし伊理穂! オレは将来このバスケ部を任される男! こんな隅っこでダムダムとジミ~な練習をさせられるような男では……!」
「はいはいそうだね。全く持ってその通りだから手を止めないで、花道? ボールが転がっていってますよー」
言うと伊理穂は、花道の手から逃げ出してフロアを転がっているボールを指差した。
次いで、花道のお尻を叩いて、とってこーい! と命令する。花道がぐぬぬと低く唸りながらも、言われたとおりボールを取って戻ってきた。
不機嫌そうな花道からボールを受け取って、伊理穂はまるで犬にするように花道の赤髪を撫でてやる。
「いいこいいこ。よく出来ました」
「うぐぐ、屈辱! ハルコさんが見てるのに……!」
「晴子ちゃん? ああ、かわいいよねえ、晴子ちゃん」
伊理穂は体育館の側面にある鉄扉に視線を移した。
そこには、先日友達になった、赤木キャプテンの妹である赤木晴子と、その友達の松井、藤井の三名がいた。
晴子は伊理穂に気付くと笑顔で手を振ってきた。伊理穂も笑って手を振り返す。
「かわいいだろう、ハルコさんは! そうだろうそうだろう!」
「うん。なんか花道の好きそうなタイプだよね、晴子ちゃんて。清楚で可憐で純真無垢! ラビンユー!」
伊理穂は胸の前で祈るように手を組んで、恍惚とした表情で空を見上げた。
それに花道が大喜びで同意してくる。
「おお、わかるか伊理穂!」
「わかる! わたしも男だったら晴子ちゃんみたいな子がタイプ!」
「そうだろうそうだろう!」
二人できゃっきゃと手をとってはしゃいでいると、後ろから頭を勢い良く叩かれた。
「いたっ!」
「イテッ!」
振り返るとハリセンを手にした彩子だった。
彩子はハリセンを数度ぱしぱしと手にうちつけながら、呆れたような表情で伊理穂と花道を見やる。
「なーにやってんのあんたたちは。しっかり練習しなさい!」
「はーい……」
彩子はそれだけ言うと、再び他の選手たちのサポートへと戻っていった。
去っていく彩子の背中を見ながら、伊理穂は悄然と花道にボールを差し出す。
受け取った花道もおとなしくドリブル練習を再開した。
ついうっかり、晴子ちゃんのかわいさに我を失ってしまった。花道と騒ぐなんて、なんて失態だ。
はあと息を吐き出すと、きゃああと体育館に黄色い悲鳴が響き渡った。
なんだろうと疑問に思って顔をあげると、流川がシュートを決めたところだった。
なるほど、と納得する気持ちと同時に、もやもやしたものが伊理穂の胸に湧き起こる。
「…………」
伊理穂は体育館を見渡して、ため息をついた。
体育館中を埋める、きらきらでふわふわの女の子たち。彼女たちの目当ては流川だ。
富ヶ丘中の流川楓。抜群のバスケセンスに、整った顔立ち。
人気があることは知っていたけれど、まさかこれほどまでだったなんて。
最初はほんの二、三人しかいなかったのに、今ではこの広い体育館を埋め尽くすほどの女の子たちが、流川に一生懸命に声援を送っていた。
ほとんど花道専属マネージャーと言っても過言ではない伊理穂は、ストップウォッチを片手にそれを真剣に見つめていた。
花道のドリブルもだんだんと様になってきている。
この前はうっかり順序を間違えてパス練習をさせてしまったけれど、これは次の段階にうつるのも時間の問題なんじゃないだろうか。
ストップウォッチを眺めながらそんなことを考えていると、
「うう……。なんでオレばっかり……!」
花道の恨み言が耳をついた。
伊理穂は引き締めていた表情を緩めて、花道に声をかける。
「まあまあ。しょうがないよ、初心者なんだから」
「いやしかし伊理穂! オレは将来このバスケ部を任される男! こんな隅っこでダムダムとジミ~な練習をさせられるような男では……!」
「はいはいそうだね。全く持ってその通りだから手を止めないで、花道? ボールが転がっていってますよー」
言うと伊理穂は、花道の手から逃げ出してフロアを転がっているボールを指差した。
次いで、花道のお尻を叩いて、とってこーい! と命令する。花道がぐぬぬと低く唸りながらも、言われたとおりボールを取って戻ってきた。
不機嫌そうな花道からボールを受け取って、伊理穂はまるで犬にするように花道の赤髪を撫でてやる。
「いいこいいこ。よく出来ました」
「うぐぐ、屈辱! ハルコさんが見てるのに……!」
「晴子ちゃん? ああ、かわいいよねえ、晴子ちゃん」
伊理穂は体育館の側面にある鉄扉に視線を移した。
そこには、先日友達になった、赤木キャプテンの妹である赤木晴子と、その友達の松井、藤井の三名がいた。
晴子は伊理穂に気付くと笑顔で手を振ってきた。伊理穂も笑って手を振り返す。
「かわいいだろう、ハルコさんは! そうだろうそうだろう!」
「うん。なんか花道の好きそうなタイプだよね、晴子ちゃんて。清楚で可憐で純真無垢! ラビンユー!」
伊理穂は胸の前で祈るように手を組んで、恍惚とした表情で空を見上げた。
それに花道が大喜びで同意してくる。
「おお、わかるか伊理穂!」
「わかる! わたしも男だったら晴子ちゃんみたいな子がタイプ!」
「そうだろうそうだろう!」
二人できゃっきゃと手をとってはしゃいでいると、後ろから頭を勢い良く叩かれた。
「いたっ!」
「イテッ!」
振り返るとハリセンを手にした彩子だった。
彩子はハリセンを数度ぱしぱしと手にうちつけながら、呆れたような表情で伊理穂と花道を見やる。
「なーにやってんのあんたたちは。しっかり練習しなさい!」
「はーい……」
彩子はそれだけ言うと、再び他の選手たちのサポートへと戻っていった。
去っていく彩子の背中を見ながら、伊理穂は悄然と花道にボールを差し出す。
受け取った花道もおとなしくドリブル練習を再開した。
ついうっかり、晴子ちゃんのかわいさに我を失ってしまった。花道と騒ぐなんて、なんて失態だ。
はあと息を吐き出すと、きゃああと体育館に黄色い悲鳴が響き渡った。
なんだろうと疑問に思って顔をあげると、流川がシュートを決めたところだった。
なるほど、と納得する気持ちと同時に、もやもやしたものが伊理穂の胸に湧き起こる。
「…………」
伊理穂は体育館を見渡して、ため息をついた。
体育館中を埋める、きらきらでふわふわの女の子たち。彼女たちの目当ては流川だ。
富ヶ丘中の流川楓。抜群のバスケセンスに、整った顔立ち。
人気があることは知っていたけれど、まさかこれほどまでだったなんて。
最初はほんの二、三人しかいなかったのに、今ではこの広い体育館を埋め尽くすほどの女の子たちが、流川に一生懸命に声援を送っていた。