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それだけ言うと、流川はチームメイトに呼ばれて去って行った。
その背中をじっと見つめ、洋平は顔を苦しげにゆがめる。
「……最初から、オレは伊理穂の恋愛対象に入ってねえよ」
そう。
伊理穂にとって自分はただの幼馴染みだ。
幼馴染みであり保護者。
それ以上でもそれ以下でもない。
もともと流川とは立ち位置が違うのだ。
だから、あんな風にライバル心をむき出しにされても、困る。
つらく、なる。
「…………」
洋平は、ぎりぎりと軋む胸を押さえて、息を吐き出した。
視線を試合に戻すと、バッターボックスに伊理穂が立ったところだった。
気合を入れてバットを構えて、きりっと真剣な表情でピッチャーを見ている。
ボールが放られた。
伊理穂のバットは空を切って、審判がストラーイクと声をあげる。
悔しそうに顔をゆがめる伊理穂を見て、洋平は小さく微笑んだ。
胸が、痛い。
張り裂けそうだ。
「せめて、お前がオレのことを少しでも男として見てくれたら……」
少しは違ったのかもしれない。
見守るだけじゃなくて、こっちを振り向かせようとすることもできたのかもしれない。
だけど、今みたいに無邪気に信頼されていては、好きだと告白することさえできない。
ただ、伊理穂が他の男を好きになって、他の男のものになっていくのを、黙って見守っているしかできない。
「…………」
洋平は目を伏せて、唇に手を当てた。
伊理穂のやわらかな唇の感触が、今もまだそこに残っている。
「……いまさら、好きだなんて言えるわけねえよな……」
掠れた声でそう呟くと、洋平は踵を返した。
(屋上で昼寝でもしよう)
歩き出した洋平の耳に、ヒットを打った伊理穂の、無邪気に喜ぶ声が聞こえた。
帰り道。
伊理穂と流川は並んで家路へとついていた。
道を覚えたいからと流川が言って、二人は歩いて帰っていた。
静かな夜道に、タイヤが回転する乾いた音だけがこだまする。
「今日の部活もハードだったねえ」
目印になる建物を教えながら、伊理穂は言った。
流川が小さく頷く。
「全国目指すならまだまだ足りねー」
「おお、さすがの発言。――やっぱり、流川くんの目標は全国制覇?」
「たりめーだ」
「うん。でも、流川くんならほんとうに達成できそうだよね。楽しみ!」
「…………」
ふいに流川が黙り込んだ。
気付けば足も止まっている。
伊理穂は慌てて流川の立ち止まった場所まで引き返すと、戸惑ったように眉根を寄せた。
どうしたんだろう。
その背中をじっと見つめ、洋平は顔を苦しげにゆがめる。
「……最初から、オレは伊理穂の恋愛対象に入ってねえよ」
そう。
伊理穂にとって自分はただの幼馴染みだ。
幼馴染みであり保護者。
それ以上でもそれ以下でもない。
もともと流川とは立ち位置が違うのだ。
だから、あんな風にライバル心をむき出しにされても、困る。
つらく、なる。
「…………」
洋平は、ぎりぎりと軋む胸を押さえて、息を吐き出した。
視線を試合に戻すと、バッターボックスに伊理穂が立ったところだった。
気合を入れてバットを構えて、きりっと真剣な表情でピッチャーを見ている。
ボールが放られた。
伊理穂のバットは空を切って、審判がストラーイクと声をあげる。
悔しそうに顔をゆがめる伊理穂を見て、洋平は小さく微笑んだ。
胸が、痛い。
張り裂けそうだ。
「せめて、お前がオレのことを少しでも男として見てくれたら……」
少しは違ったのかもしれない。
見守るだけじゃなくて、こっちを振り向かせようとすることもできたのかもしれない。
だけど、今みたいに無邪気に信頼されていては、好きだと告白することさえできない。
ただ、伊理穂が他の男を好きになって、他の男のものになっていくのを、黙って見守っているしかできない。
「…………」
洋平は目を伏せて、唇に手を当てた。
伊理穂のやわらかな唇の感触が、今もまだそこに残っている。
「……いまさら、好きだなんて言えるわけねえよな……」
掠れた声でそう呟くと、洋平は踵を返した。
(屋上で昼寝でもしよう)
歩き出した洋平の耳に、ヒットを打った伊理穂の、無邪気に喜ぶ声が聞こえた。
帰り道。
伊理穂と流川は並んで家路へとついていた。
道を覚えたいからと流川が言って、二人は歩いて帰っていた。
静かな夜道に、タイヤが回転する乾いた音だけがこだまする。
「今日の部活もハードだったねえ」
目印になる建物を教えながら、伊理穂は言った。
流川が小さく頷く。
「全国目指すならまだまだ足りねー」
「おお、さすがの発言。――やっぱり、流川くんの目標は全国制覇?」
「たりめーだ」
「うん。でも、流川くんならほんとうに達成できそうだよね。楽しみ!」
「…………」
ふいに流川が黙り込んだ。
気付けば足も止まっている。
伊理穂は慌てて流川の立ち止まった場所まで引き返すと、戸惑ったように眉根を寄せた。
どうしたんだろう。