番外編 friction
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三井はがしがしと乱暴に頭を掻くと、肺の中の酸素を全部出すような重い息を吐いた。
洋平にしがみついたままの伊理穂の頭を、優しく撫でる。
「伊理穂も、何悩んでんのかしんねーけど、水戸にはちゃんと話してやれよ? だからこんなわけわかんねーことになってんだからな。ったく、しょーもないことにオレを巻き込むんじゃねーっつの。じゃーな」
それだけ言うと、三井はひらひらと手を振ってその場を去っていった。
洋平はわけがわからない気持ちで、その背中を見送った。
「はぁあ? ――なんだ、そんなことだったのかよ」
夕刻の水戸家に、洋平の呆れたような声がこだまする。
伊理穂はそれに身を小さくした。
「つまり、お前が久遠さんに三井サンの欲しいものを探るように頼まれごとをしてて、その件は誰にも内緒だって釘を刺されてたからオレに事情を話せなかったって、そういうことか?」
簡潔にまとめた洋平に、伊理穂はただただ無言で首を縦に振る。
しばしの沈黙の後、洋平が脱力したように大きく息を吐き出した。
「なんだそりゃ。そんなことでオレとお前はすれ違ってたわけ?」
「う、そうです……」
「そうです、じゃねぇだろ」
洋平は俯く伊理穂のおでこに軽くでこぴんした。
赤くなったそこを押さえて、伊理穂がじんわりと涙の滲む瞳で洋平を見上げる。
「いたぁい……」
「あーのーね、伊理穂チャン。お前が器用に立ち回るなんて出来っこねぇんだから、大人しくオレにはしゃべっときゃよかっただろ」
「だ、だって結ちゃんに誰にも内緒って言われてたんだもん!」
「バーカ。オレがなんにも聞いてない風に装えばいいんだろ。そんなの朝飯前だっつーの」
言われて伊理穂は目からうろこが落ちたような表情をした。
まさか、今のいままでこの方法に気づかなかったのだろうか。
呆れる洋平をよそに、伊理穂が嬉しそうにぱちぱちと洋平に拍手を送る。
「さっすが洋平! あったまいい!」
「伊理穂チャンがおバカさんなだけだろ。……ったく」
呆れたように呟くと、洋平は目の前で嬉しそうににこにこ笑う伊理穂をじっと見つめた。
すごいねー、なんて言いながら無邪気な笑顔で笑っている伊理穂を見ていると、だんだん怒っていることさえもバカらしく思えてきた。
洋平は引き締めていた表情をほころばせると、伊理穂を腕の中に閉じ込める。
伊理穂が驚いてからだを硬くした。
その初々しい反応に愛しさを募らせながら、洋平は小さく呟く。
「変なやきもち妬いてごめんな、伊理穂」
「ううん。わたしも、ちゃんと話せなくてごめんね」
「ん」
短く返事を返すと、洋平は伊理穂の唇にそっと自分のそれを重ね合わせた。
こつんと伊理穂の額に自分の額をあわせて、間近で伊理穂の綺麗な二つの瞳を覗きこむ。
「にしても、久遠さんってやっぱり三井サンのこと好きだったんだな」
「え、結ちゃん三井先輩のこと好きなの!?」
「……お前は、そこからわかってなかったのか」
「え、だって結ちゃんお世話になったからお礼したいって言ってただけだもん! えー、そうなんだ、結ちゃんが三井先輩を! へー、さっすが洋平! 鋭いねぇ。わたし、全然気づかなかった!」
「……だろうな」
感心したように言う伊理穂に、洋平は瞳を細めて返す。
「な、なにその反応! なんかおもしろくない!」
「しょうがねぇよ。伊理穂ちゃんはニブ子ちゃんだもんな」
「ちょっと! 洋平、わたしのことバカにしてるでしょ!」
ぷぅっと伊理穂は頬を膨らませた。
洋平は笑いながらそのふくらんだ頬をつつく。
「してねぇよ」
「してる!」
「してねぇって」
「してるってば……、んっ」
洋平は不機嫌に言い返す伊理穂の唇を塞いだ。
今度は触れるだけじゃなく、深く深く伊理穂に口づける。
時折ぴくりと反応を返す伊理穂がかわいくて、洋平の口の端が小さく持ち上がった。
最後に唇をはむようにして、洋平は行為をやめる。
「してねぇよ……」
甘い色を帯びた声に、伊理穂がとろんとした表情で頷いた。
「うん……」
「な、伊理穂。もうオレに秘密つくんのやめろよ? お前隠すの下手なんだから」
「うー、なんか言い方は引っかかるけど……。でも、ん、わかった」
「よし、いい子」
洋平は伊理穂の頭をそっとひと撫ですると、立ち上がった。
ぐっと伸びをする。
「さ、そろそろメシの準備でもすっか」
「うん!」
またこれから、いつもの幸せな日常が始まる。
洋平にしがみついたままの伊理穂の頭を、優しく撫でる。
「伊理穂も、何悩んでんのかしんねーけど、水戸にはちゃんと話してやれよ? だからこんなわけわかんねーことになってんだからな。ったく、しょーもないことにオレを巻き込むんじゃねーっつの。じゃーな」
それだけ言うと、三井はひらひらと手を振ってその場を去っていった。
洋平はわけがわからない気持ちで、その背中を見送った。
「はぁあ? ――なんだ、そんなことだったのかよ」
夕刻の水戸家に、洋平の呆れたような声がこだまする。
伊理穂はそれに身を小さくした。
「つまり、お前が久遠さんに三井サンの欲しいものを探るように頼まれごとをしてて、その件は誰にも内緒だって釘を刺されてたからオレに事情を話せなかったって、そういうことか?」
簡潔にまとめた洋平に、伊理穂はただただ無言で首を縦に振る。
しばしの沈黙の後、洋平が脱力したように大きく息を吐き出した。
「なんだそりゃ。そんなことでオレとお前はすれ違ってたわけ?」
「う、そうです……」
「そうです、じゃねぇだろ」
洋平は俯く伊理穂のおでこに軽くでこぴんした。
赤くなったそこを押さえて、伊理穂がじんわりと涙の滲む瞳で洋平を見上げる。
「いたぁい……」
「あーのーね、伊理穂チャン。お前が器用に立ち回るなんて出来っこねぇんだから、大人しくオレにはしゃべっときゃよかっただろ」
「だ、だって結ちゃんに誰にも内緒って言われてたんだもん!」
「バーカ。オレがなんにも聞いてない風に装えばいいんだろ。そんなの朝飯前だっつーの」
言われて伊理穂は目からうろこが落ちたような表情をした。
まさか、今のいままでこの方法に気づかなかったのだろうか。
呆れる洋平をよそに、伊理穂が嬉しそうにぱちぱちと洋平に拍手を送る。
「さっすが洋平! あったまいい!」
「伊理穂チャンがおバカさんなだけだろ。……ったく」
呆れたように呟くと、洋平は目の前で嬉しそうににこにこ笑う伊理穂をじっと見つめた。
すごいねー、なんて言いながら無邪気な笑顔で笑っている伊理穂を見ていると、だんだん怒っていることさえもバカらしく思えてきた。
洋平は引き締めていた表情をほころばせると、伊理穂を腕の中に閉じ込める。
伊理穂が驚いてからだを硬くした。
その初々しい反応に愛しさを募らせながら、洋平は小さく呟く。
「変なやきもち妬いてごめんな、伊理穂」
「ううん。わたしも、ちゃんと話せなくてごめんね」
「ん」
短く返事を返すと、洋平は伊理穂の唇にそっと自分のそれを重ね合わせた。
こつんと伊理穂の額に自分の額をあわせて、間近で伊理穂の綺麗な二つの瞳を覗きこむ。
「にしても、久遠さんってやっぱり三井サンのこと好きだったんだな」
「え、結ちゃん三井先輩のこと好きなの!?」
「……お前は、そこからわかってなかったのか」
「え、だって結ちゃんお世話になったからお礼したいって言ってただけだもん! えー、そうなんだ、結ちゃんが三井先輩を! へー、さっすが洋平! 鋭いねぇ。わたし、全然気づかなかった!」
「……だろうな」
感心したように言う伊理穂に、洋平は瞳を細めて返す。
「な、なにその反応! なんかおもしろくない!」
「しょうがねぇよ。伊理穂ちゃんはニブ子ちゃんだもんな」
「ちょっと! 洋平、わたしのことバカにしてるでしょ!」
ぷぅっと伊理穂は頬を膨らませた。
洋平は笑いながらそのふくらんだ頬をつつく。
「してねぇよ」
「してる!」
「してねぇって」
「してるってば……、んっ」
洋平は不機嫌に言い返す伊理穂の唇を塞いだ。
今度は触れるだけじゃなく、深く深く伊理穂に口づける。
時折ぴくりと反応を返す伊理穂がかわいくて、洋平の口の端が小さく持ち上がった。
最後に唇をはむようにして、洋平は行為をやめる。
「してねぇよ……」
甘い色を帯びた声に、伊理穂がとろんとした表情で頷いた。
「うん……」
「な、伊理穂。もうオレに秘密つくんのやめろよ? お前隠すの下手なんだから」
「うー、なんか言い方は引っかかるけど……。でも、ん、わかった」
「よし、いい子」
洋平は伊理穂の頭をそっとひと撫ですると、立ち上がった。
ぐっと伸びをする。
「さ、そろそろメシの準備でもすっか」
「うん!」
またこれから、いつもの幸せな日常が始まる。