番外編 friction
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戸惑いが滲む三井の声。
洋平が自嘲するように表情をゆがめる。
「ジョーダン……だったらいいんですけどね」
「……水戸?」
眉間の皺を深くする三井から伊理穂に視線を戻して、洋平が低く問う。
「こういう……ことだったのか、伊理穂?」
「え……?」
「お前の様子が最近おかしかったのは、こういうことだったのか?」
洋平が、低く繰り返した。
その内容に、伊理穂は戦慄する。
完璧に、誤解されている。
「ち、違う! 違うよ、洋平! これは……」
「言い訳なんて聞きたくねぇ!」
「――!」
叩きつけるような洋平の怒号に、伊理穂は言葉を失った。
「お、おい……水戸……?」
ただひとり、三井だけが何が起こっているのかわからずにうろたえる。
「三井サンは黙っててください」
「黙ってろって……。お前な……」
「伊理穂」
洋平が静かに三井の言葉を遮って伊理穂を呼ぶ。
洋平の落ち着いた、けれど深く傷ついた瞳が伊理穂を見つめた。
その悲しみの色に、伊理穂の胸がひどく締め付けられる。
「よ、ようへ……」
「三井先輩が……好きなのか?」
違うと言いたいのに、伊理穂の喉元で言葉がつかえて、なにも出てこなかった。
だってどうすればいいんだろう。
違うと否定したところで、どうして最近様子がおかしかったのか、洋平に事情を説明することはできない。
洋平だけでなく、ここには当事者である三井もいる。
結子に頼まれて三井の好きなものを調査していたのだなんて、どうして言えるだろうか。
「――っ」
音にならない言葉のかわりに、伊理穂の瞳から涙が零れた。
どうしようどうしようどうしよう。
頭の中を占めるのはそればかりで、何もいい解決法が浮かばない。
ぎゅっと強く瞳を閉じると、さらに大粒の涙がぼろぼろと流れた。
ふと頬に感じる温かいぬくもり。
驚いて目を開けると、洋平がすぐ目の前にいた。
傷ついた表情で笑いながら、伊理穂の目から落ちる雫を、そっと親指の腹でぬぐってくれている。
「よう……へ……」
「泣くなよ、伊理穂……」
優しい声音に、伊理穂の心臓が小さく跳ねる。
もしかして、誤解だと気づいてくれたんだろうか。許してくれたんだろうか。
淡い期待は、だけど洋平の次の言葉で無惨に打ち砕かれる。
「――お前の気持ちの変化に、もっとはやく気づいてやれなくてごめんな」
「え……?」
「三井サン、オレ、どうやら伊理穂に愛想尽かされちまったみたいなんで……。……伊理穂のこと、どうかよろしく頼みます」
「は!? ちょ、おい水戸! なんでそうなんだよ!」
うろたえる三井に軽く頭を下げて、洋平が踵を返す。
「――やっ、洋平!」