番外編 friction
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腕の中のぬいぐるみは、いまハマッているアニメに出てくるペンギンだ。
全部で三匹出てくるのだけれど、それぞれの背中に番号が振ってあるのがまたかわいらしい。
伊理穂は3.と書いてあるペンギンを取ってもらった。
三匹のペンギンの中でひとりだけ女の子なのか、長い睫毛とピンクのリボンがとても似合っている。
にこにことペンギンを嬉しそうに眺めている伊理穂を見て、三井も口もとを優しくほころばせた。
「なんだよ、伊理穂。水戸はとってくんねぇのか?」
「とってくれないっていうより、洋平とゲームセンターなんて行かないですよ。絡まれちゃうって」
「……言われてみりゃ、そうだな」
ふるふると首を横に振って答えれば、三井が納得したように頷いた。
洋平の名前に、胸が小さく軋む。
彼はまだ怒っているだろうか。
「にしても、三井先輩ってばボウリングへったくそでしたね」
「あぁ!? るっせえ! どうも転がすってのが性にあわねぇんだよな。あんなもん、投げりゃ一発だぜ!」
「投げるって……。ボウリングの球なんて投げたら手首壊しちゃいますよ」
「ばーか。オレの鍛え方なめんなよ。んなやわじゃねぇって」
「へえ……」
得意げに口角を片方だけ持ち上げる三井を、伊理穂は疑り深い眼差しで見つめる。
その視線に、三井が不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「んだよ、伊理穂。てめえ、信じてねぇな?」
「むしろ、信じてもらえると思ってるんですか」
「んだと! よっしゃ、じゃ今からボウリング場戻って証明してやろうじゃねぇか!」
「ギャー! いいですうそです冗談なんで! 証明しなくていいです! そうですよねー、三井先輩なら持ち上げられますよねー!」
「てっめえ伊理穂! バカにしてんじゃねぇよ!」
「きゃああ!」
おざなりに返すと、怒った三井に髪の毛を乱暴にぐしゃぐしゃされた。
悲鳴をあげて伊理穂がそれに抵抗していると、三井が突然手を止めた。
「三井先輩?」
怪訝に思って三井を見上げると、
「よお、水戸。いまバイト帰りか?」
三井が、伊理穂の背後に向けて、爽やかに挨拶をした。
(え……? み……と……って、洋平!?)
聞きなれた名前に、伊理穂の体が半ば条件反射で後ろを振り返る。
伊理穂の視線の先。そこには、愕然とした表情でこちらを見ている洋平がいた。
「よ、洋平……!」
まずい、タイミングが悪すぎる。
伊理穂の全身からサッと音を立てて血の気が引いた。
洋平が感情をうつさない暗い瞳で一度伊理穂を見た。
その視線のうつろさに、伊理穂の体が一瞬にして凍りつく。
「よ……へ……」
「二人はデートの帰りッスか」
伊理穂には取り合わずに、洋平は三井だけを見てにこりと微笑んだ。
そのどこかうわっつらだけの笑顔に、伊理穂の心が警鐘を鳴らす。
まずい。これはほんとうにまずい。
(どうしよう……!)
三井もその笑顔になにかいつもと違うものを感じ取ったのか、訝しげに眉をひそめる。
「おいおい、ジョーダンにしては笑えねぇぜ、水戸」
全部で三匹出てくるのだけれど、それぞれの背中に番号が振ってあるのがまたかわいらしい。
伊理穂は3.と書いてあるペンギンを取ってもらった。
三匹のペンギンの中でひとりだけ女の子なのか、長い睫毛とピンクのリボンがとても似合っている。
にこにことペンギンを嬉しそうに眺めている伊理穂を見て、三井も口もとを優しくほころばせた。
「なんだよ、伊理穂。水戸はとってくんねぇのか?」
「とってくれないっていうより、洋平とゲームセンターなんて行かないですよ。絡まれちゃうって」
「……言われてみりゃ、そうだな」
ふるふると首を横に振って答えれば、三井が納得したように頷いた。
洋平の名前に、胸が小さく軋む。
彼はまだ怒っているだろうか。
「にしても、三井先輩ってばボウリングへったくそでしたね」
「あぁ!? るっせえ! どうも転がすってのが性にあわねぇんだよな。あんなもん、投げりゃ一発だぜ!」
「投げるって……。ボウリングの球なんて投げたら手首壊しちゃいますよ」
「ばーか。オレの鍛え方なめんなよ。んなやわじゃねぇって」
「へえ……」
得意げに口角を片方だけ持ち上げる三井を、伊理穂は疑り深い眼差しで見つめる。
その視線に、三井が不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「んだよ、伊理穂。てめえ、信じてねぇな?」
「むしろ、信じてもらえると思ってるんですか」
「んだと! よっしゃ、じゃ今からボウリング場戻って証明してやろうじゃねぇか!」
「ギャー! いいですうそです冗談なんで! 証明しなくていいです! そうですよねー、三井先輩なら持ち上げられますよねー!」
「てっめえ伊理穂! バカにしてんじゃねぇよ!」
「きゃああ!」
おざなりに返すと、怒った三井に髪の毛を乱暴にぐしゃぐしゃされた。
悲鳴をあげて伊理穂がそれに抵抗していると、三井が突然手を止めた。
「三井先輩?」
怪訝に思って三井を見上げると、
「よお、水戸。いまバイト帰りか?」
三井が、伊理穂の背後に向けて、爽やかに挨拶をした。
(え……? み……と……って、洋平!?)
聞きなれた名前に、伊理穂の体が半ば条件反射で後ろを振り返る。
伊理穂の視線の先。そこには、愕然とした表情でこちらを見ている洋平がいた。
「よ、洋平……!」
まずい、タイミングが悪すぎる。
伊理穂の全身からサッと音を立てて血の気が引いた。
洋平が感情をうつさない暗い瞳で一度伊理穂を見た。
その視線のうつろさに、伊理穂の体が一瞬にして凍りつく。
「よ……へ……」
「二人はデートの帰りッスか」
伊理穂には取り合わずに、洋平は三井だけを見てにこりと微笑んだ。
そのどこかうわっつらだけの笑顔に、伊理穂の心が警鐘を鳴らす。
まずい。これはほんとうにまずい。
(どうしよう……!)
三井もその笑顔になにかいつもと違うものを感じ取ったのか、訝しげに眉をひそめる。
「おいおい、ジョーダンにしては笑えねぇぜ、水戸」